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006 混合

 間もなく、お母さんが出掛けたようなので、試しにちょっと魔法を使ってみる。

 いつもの氷系魔法だ。

 魔力を練る訓練をしていた御陰で、氷の大きさも10cmぐらいになっていた。

 一応家の中の気配を探ってみたけど、私の寝ている部屋に駆け付けてくる人はいなかった。

 やはり、我が家で私の魔力を感知出来るのはお母さんだけのようだ。

 魔法って誰でも使えるって訳じゃ無いのかな?

 そうすると、魔法を使ってるところを誰かに見られるのは益々よろしくないね。

 今のうちに色々実験しとこう。


 今度は、魔力じゃなくて気で氷を作ってみる。

「う~」

 やっぱりダメだった。

 気と魔力は別物みたいで、気で何かを生成したりは出来ないみたいだね。

 身体強化とか戦闘用の使い方が主なのかな?

 概念はラノベなんかに載ってた情報に近いのかも知れない。


 次の実験は、気と魔力が反発しているせいで魔法が弱まってる可能性を探ってみる。

 気を圧縮して抑えつつ、魔力を解放。

 ふぬぬぬ……出来た!

 魔法で作った氷の大きさが、30cmぐらいまで大きくなった。

 やっぱり、私は気と魔力の両方の属性を持ってるせいで魔法が弱くなってたみたい。

 逆に魔力を圧縮して抑えると、気を強く使えるのかも。

 魔力をぎゅぎゅっと抑えて気を発してみたら、体の周りが淡く光りだした。

 さすがに赤ちゃんの体で、お父さんがやってた程の気は出せなかったけど、でも色々解ってきたよ。

 身動き出来ない赤ちゃんの遊びとしてはちょっと危険な気もするけど、ファンタジーの世界って楽しい!


 よし、この調子で更に次の段階に進んでみよう。

 前世では「小町はすぐ調子に乗るのが悪いとこだよ」なんて言われてたけど、自重なんてしないんだからねっ。

 さて、せっかく気と魔力の両方の属性を持ってるんだから、反発させずに何とか同時に使ってみたいなぁ。

 ひょっとしたら逆の属性を同時に使えたら、漫画で見た極大な魔法みたいな事が出来るかも知れないし。

 では右手に魔力、左手に気をそれぞれ集中。

 その両手を顔の前で合わせる。

 いっけぇ!

 バシュン!

 ……掻き消えた。

 ダメかぁ。

 敵を消滅させる魔法にならずに、気と魔力が相殺そうさいしちゃったよ。

 水と油みたいなものだから、混ざらないのかな?

 空気中ではお互いに打ち消し合って消滅しちゃうし、気は体内の血管、魔力は別次元の器官を通ってるから放出前は混ぜる事すら出来ない。

 あっ、そういえば前世のテレビでノーベル賞を取った化学者が、本来混ざらない物を、触媒を使って混ぜたとか言ってたっけ。

 気と魔力の触媒になりそうな物って何?

 どちらの属性にも染まる物……って、私の体?

 そっか。

 それぞれ別々の管を通ってるせいで混ざらないんだから、私の体に魔力と気を浸せば混ざるかも。

 撫子ちゃん、天才!


 よし、じゃあ先ずは気を全身の筋肉や内蔵にまで張り巡らせて。

 次に魔力を……あ、これはダメだ。

 先に満たした気が大きすぎて魔力を消していっちゃう。

 同時に同じ量で混ぜ合わせないとダメかな。

 今度は気と魔力を両方同時に、私の体を染め上げるように浸していく。

 布に水が染みこむように浸透していき……やった、成功。

 そのまま混ざり合うように気と魔力を練ると、突然ドンっという衝撃のようなものが、体を駆け巡る。

 凄い、何か魔力が溢れ出てくる感じ。

 これは放出しちゃダメなレベルかも知れない。

 でも、この魔力を体内に留めておくにはこの赤ちゃんの体は脆弱すぎるし、もう耐えられそうに無いからやるしかない!

 私は両手を前に突き出して、混ざり合った力を解放した。

 その魔力で氷を作ると、直径3m程もある氷の塊が出来てしまい、一瞬で目の前が氷一面になった。

 何時もなら出来た氷はそのまま魔力で空中に固定できるけど、今回の氷は大きすぎて維持できない。

 やばい!と思った直後、それは落下し始める——。

 作った氷を解放するための力を再度練ってる時間は無い!

 このままじゃ、氷に潰されて2度目の人生早くも終了だ!

 でも、寝返りすら出来ない私に逃げる術は無い!

 終わった……。


 恐怖でぎゅっと眼を閉じる。

 でも、数秒待っても氷は私の上に落ちては来なかった。

 あれ?

 なんで?

 私がそっと眼を開けてみると、氷の塊は空中で静止している。

 というか、よく見ると黒くて筋肉質な腕が氷を支えてくれていて、その腕の主が氷を抱えたまま私をぴょんと飛び越え、氷を庭の方へと運んでいった。


「あぅ?」


 その命の恩人を眼で追うと、後ろ姿は黒い装束を着込んだ忍者のようだった。

 黒装束の人はよろよろしながらも氷を庭に捨てると、少しだけこちらへ振り返る。

 頭も頭巾で覆われていて表情は全く見えなかったが、どこからどう見ても完全に忍者だった。

 そして、その姿は一瞬で煙のように音も無く消えた。

 我が家には忍者がいる……マジで!?

 気配感知には引っかからなかったけど、それは私が平面的に家の中の気配を探っていたからかも知れない。

 忍者って屋根裏とかにいるんだっけ?

 気配感知で探ってみると、確かに天井裏に微かな気配を感じられた。

 一応、命を助けて貰った事だし、お礼は言っておかないとね。

 私は天井に向かって、あまりうまく喋れない口を一生懸命動かしてお礼を言う。


「あいあと」


 そしたら、天井のあたりでゴトっと何かがコケたような音がした。

 あ、そうか。

 ひょっとして今のがお母さんが言ってた如月さんかな?

 魔法使ってるところを如月さんに見られちゃったけど、大丈夫かな?

 もぅ、バレたらバレたでいいや。

 忍者さんが運んでくれた氷は、庭で日光を浴びて直ぐに溶けてしまった。

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