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コレクション21

遅筆がよぉ。(自分に対する罵倒)

 皆見学園 会議室


 その日は、いつも以上に会議が長引いていた。


「だから言っているでしょう!!我がクラスは奇想天外支離滅裂ブレーキを振り切る馬鹿共ばかりを集めたクラスだと!!去年の会議で決めたことを忘れたのですか!?」


 それもそのはず。筋骨隆々、筋肉ダルマな教室が全力で訴えていることを、半分以上の教師が理解していなかったからだ。


「西村さん。貴方の言いたいことは解っています。ですが、我々の教育方針は、なるべく生徒達の自由にやらせる、なのですよ?」


 だからその、『自由にやらせたら問題を起こしかねない生徒』を集めたクラスだろう、と、担任として言っているのだ。「君にしか任せられない」等と言われても、わざわざ崖に向かって走るような行動に巻き込まれるのを黙って見ている訳にはいかない。


「ですから──」


 堂々巡り。もう何回も同じ内容の会話のしている。また、同じ内容の会話が始まろうとしたその時。


「──先生」


 誰かが、西村の肩を叩いた。


「──なんです?」


 西村は、隣にいた教師の方へ振り向き、苛立ちを抑えた声でそれに応える。すると、彼は西村へちょいちょいとジェスチャーし、耳打ちした


「先生のクラスがヤバイ以外で言い表せないぐらいにはヤバイのは、私も重々承知です。ですが、これ以上会議時間を取れません。折れて下さい」


 西村が錆びついたような動きで左へと顔を向けるが、彼は無理矢理に西村の顔を捻り、言った。


「見張るんです。頑張って、軌道を修正させるんです。先生なら、きっとできます」


 むぅ………と、唸るような声を出しながら渋る西村に、彼は頼む。


「いくら放課後とは言え、時間をドブに捨てているようなものじゃないですか。本当に、お願いします」


 しばらく時間を置いて、西村は言った。


「わかった。………わかりました。胃薬代ぐらいは出して下さいよ──」


 そう言った彼は、遠い目をしていた。



 皆見学園 とある教室


 その日、その教室は、いつものような賑やかさが皆無だった。その空気を作った張本人が口を開く。


「さて、もう耳に入っていることだろうが、学園祭がある」


 普段だったら、この言葉でヒャッハーするバカが集まったクラスなのだが、今日は違った。西村が、鬼の形相、いや、鉄人の覇気で全員を威圧しているからだ。


「さて、このクラスが何をするか、決めなければいけないな」


 ゆっくりとクラス全体を見回し、彼は続けた。


「さぁ、案を出して貰おうか。安心しろ。私が準備から本番まで、しっかりと監督してやろう」


 まるで魔王の御前とでも言うような雰囲気の中、一人がゆっくりと手を挙げる。西村に指された彼は、最初の案を──


「メイドきっ「却下」」


『『………………』』


「め「却下」」


 出せなかった。全てを言い終わる前に却下をされたのだ。もう、全員がどうするんだよこれ状態である。おおよそ変な方向に振り切れた馬鹿共を集めたクラスであるが故に、マトモな考えが出せないのだ。


「他」


 威圧するような担任の声に、さらに発言の意思が削がれる。そもそも彼らの頭には、最初からおかしい案か、最終的に誰かが暴走しそうな案しか無い。本人達もそれをわかっているから、不用意な発言はできないのだ。そんな、声を出したら殺される、というような雰囲気の中、翼が手を挙げた。西村が彼を指す。


「演劇」


 一言だった。ふむ、と、考えるような仕草をして、西村は訊ねる。


「何故、それを挙げた?」


「見張りやすいからだ」


 素晴らしい、と西村は笑った。そして続ける。


「他に案は?」


 30秒程待っても、誰も手を挙げなかった。


「そうか。これで良いな?」


 そう言いながら、西村は黒板に書いた『演劇』の文字をガっとチョークの白線で囲んだ。


 キーンコーンカーンコーン。


「終わりか。さて、どんな台本にするかを決めておくように。私は少し席を外す」


 西村が席を外し、ガラリと扉が閉まった。直後、全員が脱力する。気の抜けた声を出したのは誰だったのか。それを合図に、ざわざわとクラス内が騒がしくなる。


「鉄人怖すぎだろ」「殺意を感じた──」「私達何もしてないじゃん」「メイド喫茶……………メイド喫茶が───」「お化け屋敷は!?カップルを壊滅するお化け屋敷は!?」「影納だな!?アイツが何かしたんだろ!」


 まさに阿鼻叫喚。みんながみんな、もっと派手で馬鹿な出し物を考えていただけに、派手でもなければ馬鹿騒ぎもできない、演劇(西村の見張り付き)などというとてもとても楽しくない(・・・・・)イベントになったことを嘆いていた。そのなかで、誰かが翼に質問した。


「なぁ、赤井。なんで演劇なんて挙げたんだ?」


 その言葉に、教室内が静まり返る。全員が翼の言葉を待ち、そして、翼が口を開いた。


「自由時間が多くなるからだ。講演は1回で済むだろう?」


 クラスが湧いた。1回の講演以外は全て自由時間だ。西村の威圧もなんのその、議論は白熱し、最終的に西村がキレて終わった。

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