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【完結済/手直しするの止めました】神殺しの皇女  作者: 埼山一
第十章 クニを盗ル(三)
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第99節 決戦 三合目 ~乱入者~

「ふんっ!」


 気合一閃、トラひげが剣を振り下ろすと、乾いた軽い音と共に何かが奴の足元に落ちてきた。

 勿論、それはわしの首……などではない。

 それは細く長い。

 二つに割られたそれはそれぞれの先端にふくらみが見られる。

 矢だ。

 何者かが放った矢がトラひげを襲い、奴はそれを払うために剣を振るったのだ。


「ちっ。」


 奴は舌打ちしながらも立て続けに襲い来る第二第三の矢を避けつ払いつしながら、油断なく矢の飛来した彼方を睨みつけていた。

 奴の視線の向いた先にはあるのはこの祭会場の入り口、このクマの柵の居住区と宮殿区を隔てる門だ。

 その門からは、厳つい鎧に身を固めて厳重に武装した者らが次々とこの祭り会場へと侵入してきていた。


「来たか!」


 絶体絶命のところに訪れた我が兵の到着にわしはこの会場にあってただ一人、歓声を上げていた。

 あれに見えるは紛う方なき我が精兵たちだ。

 宮殿の包囲を完成しつつあったクマ兵たちは、背後を突かれる形で突如現れた謎の武装集団に狼狽し、どちらに対処すべきかと落ち着きなく首ばかりを動かしている有様だ。


(愚かな奴め。貴様の他に有力な指揮者を作っておらぬからそうなるのだ。)


 いつだったか、トラひげの奴が己が武勇を誇らしげに語っていた時に、もしやこのクニには兵の指揮が取れる将と呼べる者が少ないのではと思っていたが、どうやらその予想は的を外してはいなかったようで、わしはそのことを以ってトラひげを心密かに罵倒していた。

 そうしていると、我が兵らはたちまちのうちに宮殿を取り巻いていたクマ兵を取り囲み、更なる包囲を完成させてしまっていた。

 そして、各々が各々の得物をクマ兵に向けて構えると、クマ兵の後衛はその切っ先から逃れようと退がり、前衛は宮殿に踏み込むまいと退がる。お互いがお互いを押し合い圧し合いして身動きが取れぬようになっていた。


(よし!)


 これにて形勢は逆転した。

 我が兵は堅牢重厚なる鎧にその身を包み、強力な(くろがね)の武器で武装していた。

 これに対し、クマ兵らは年に一度の祭事の最中とあって衣服一つにただ剣を佩いているだけで、しかも酒も十分に入っているだけでなく、中には丸腰のままで一体何しに来たのかも分からぬような者まで見受けられた。

 彼我の戦力は、数の上でこそ我らが劣っているものの、兵の精強さ及び装備の質では圧倒していることは明らかだった。

 今ならば、このような連中ではとても我が精兵の相手は務まらぬ。


「第二射、用意――放て!」


 我が兵らは指揮者の号令の下、トラひげに向かってさらに二本三本と矢を射かけていた。


「ちぃっ!」


 舌打ちしつつも、己が剣を振るって迫りくる矢を難なく切り払うトラひげ。


(む。モリヤの奴、上手いな。)


 しかし、わしはそんなトラひげの剣捌きではなく、我が兵を指揮している者のその判断、手際の良さに感心していた。

 先ほどからトラひげに何の手傷も負わせることができていない矢は、奴に必殺の一撃を食らわせようというのではなく、奴の動きを封じているために射ているのだ。

 それが分かればこそ、わしは兵らの陣頭に立ち指揮を執っているモリヤを見ては、我が君から特にと付けられただけあってさすがの手腕だと舌を巻いた。

 しかし感心してばかりはいられない。

 いくらかの手違いありとは言え、せっかくの我が策が成って兵らと共に作り出したこの機を逃す手はないのだ。

 わしはやっと訪れた大いなる好機を逃すまいと、トラひげの背後を取るべく動きだした。


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