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【完結済/手直しするの止めました】神殺しの皇女  作者: 埼山一
第十章 クニを盗ル(三)
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第95節 橘花動揺

 覚悟を決めて見つめた先にあったものは、わたくしの想定をはるかに超えるものだった。

 わたくしは自らのすぐ近くの台上で行われていた予想外の出来事に驚きのあまり後退ると、今まで座っていた自分の床几に足を掬われて、その上にストンと座ってしまった。


「あ……え……?」


 何が起きているの?

 驚きのあまり、感情が言葉という形を取らないままにパクパクとする口から吐いて出てきていた。

 理解が追い付かない。というよりも理解したくなかった。

 宮殿の露台で盛んに行われていると思っていた大王(おおきみ)白面(しろおもて)舞娘(まいこ)の淫行は、しかしそうではなかった。


(あれは……。)


 にわかには受け入れられない目の前の出来事をどのように形容すればよいのか。

 わたくしはそれでも懸命に事態の把握に努めようとしていた。

 ともすれあば、無理に抱擁に及んでいるようにも見える大王のあの姿。


(ああ……。あれは、大王がじゃれていたのではなかったのですね……。)


 ともすれば、大王の抱擁を嫌がっているようにも見える白面の舞娘の姿。


(ああ……。あれは、舞娘は大王の悪戯から逃れようとしていたのではなかったのですね……。)


 触れ合い、じゃれ合い、睦み合い。悪戯、淫行、媾合……どれも違う。まったく当てはまりそうにない。それらの言葉を次々と否定して残った結論は――

 ――死闘。


(そう、殺し合っている。)


 認めたくなくても、そうとしか見えなかった。

 導き出された結論に恥じないお互いに遠慮も配慮もないような鬼気迫る圧を放って取っ組み合っている二人の姿に、わたくしは逃げ去ろうにも腰が抜けて床几から尻が離れなくなっていた。

 ほんの少し前までの幸歓の光景からは考えられないような殺伐とした光景に、居合わせた民も一様に口を閉じるのも忘れて、この事態の行方を見守っている。


「な、なんてこと……。」


 わたくしは否応なしに突き付けられた現実の出来事に慄いた。

 わたくしが自分のことで精いっぱいになっている内に、まさかこんな事態になっていたなんて……。

 一体どうしてこんなことになっているのか、自分の殻に閉じこもって周囲の出来事から目を背けていたわたくしには分かる由もない。

 そうしていると、二人の間から放たれる不穏な気配に変化があるのを感じて、大王に捕らわれている白面の舞娘が起死回生の何かを仕掛けようとしているのが見えた。


(こんなの、一体どうすればいいと言うの?)


 いくらなんでも、こんな事態は想定していない。

 わたくしは為す術も思いつけないまま、このきな臭い状況にグイグイと興味を惹きこまれるばかりになっていた。


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