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第23話 決着

間が開いてしまいましたが、穴の縁線決着です。

 目の前に飛び出てきた孝太郎にヒルオーガは一瞥しただけにとどまる。


 今のままでは、ヒルオーガの視界に入るハンター全員を自由に追える状態である。


 釣り出しの囮役である孝太郎は、ヒルオーガが自分だけを狙う状態にすることが望ましい、所謂ヘイトを稼がなければならない。


 他のハンターに注意が向く前に先制を仕掛ける。


 顔面を狙い4本の飛苦無を十字射ちで放つ。


 対するヒルオーガは、膝を使いながら沈み込みながら頭を下げて、4本全てを躱すと同時に拳を繰り出す。


 孝太郎は、その拳を後方に跳んで躱し、地面を打つその拳に蹴りを放つ。


 ビキリという音をたてて親指の付け根にローキックが命中した。


 骨を折るまでには至らないが、大きな痛みを与えることはできたはずだ。


 痛みと怒りで、ヒルオーガのターゲットは完全に孝太郎に固定された。


 孝太郎は、そこからヒルオーガの攻撃をひらひらと躱しながら、徐々にフェルの選定した討伐地点へとゆう誘導していく。


 走って逃げて、後を追わせる戦法もなくはないが、距離が離れて追ってこなくなった場合に、もう一度注意を引くところから、やり直さなければならなくなる。


 そこから出てくるゴブリンを止めるために、一刻も早く通路を埋めたい状態にあっては、やり直しは最悪である。


 躱し、挑発し、隙を見ては長苦無で腕や脚の甲羅のない部分を斬りつける。


 深手には程遠い傷ではあるが、目的はヘイトを稼ぐためなので問題ない。


 こうして孝太郎は、ヒルオーガの釣り出しに見事成功した。


 それを受けて「自由の風」が動き始める。


 「自由の風」の魔術師が、火系攻撃呪文「フレイムランページ」を放ち、ヒルオーガの開通させた通路からスロープまでのゴブリンを焼き払う。


 そこへオステアが土系防御呪文「ストーンウォール」を唱え、石の壁で通路とスロープの間を遮断した。


 そこへ、2人の魔術師による「ロックストライク」を放つ。


 地面を抉るように射出された岩塊は、抉り取った土砂と共に石の壁で堰き止められる。


 「ストーンウォール」で構築された石の壁は一時的な効果しかなく、一定の時間経過で消失する。


 「ロックストライク」により堆積した土砂と岩の手前に「ストーンウォール」により、新たな石の壁が構築される。


 そこへ再び「ロックストライク」が詠唱され、地面を抉りながら堆積する土砂と岩塊、都合3回の「ストーンウォール」と「ロックストライク」によって、ヒルオーガによって開けられた通路は通行不能となった。


 「自由の風」が通路を塞ぐことに成功したのを確認した「ウィンディア」は「創造の槌」へとその事を伝える。


 それまでは、注意を引きつけ、行動を阻害し、その場から動かさない事を主眼に戦闘をしていた「創造の槌」は、知らせを受けて攻勢に転ずる。


 スリオラの「ブレスドウェポン」によって攻撃力を増したボクソンのバトルハンマーがが振るわれ、フェルのクロスボウも目や口などの射撃効果の高い部位を狙い始める。


 もう一人の戦士メルドも盾で拳をいなしながら、甲羅のない太腿や腹に浅くない傷を付ける。


 合図や掛け声もなく、攻撃が次の攻撃のための隙を作り、その隙へ攻撃を加えるべく一呼吸早く動き始める、お手本の様な連携である。


 釣り出し役であった孝太郎は、盾役のメルドがヘイトを取るのを待って戦列から離れ、「ウィンディア」と共に、討伐地点に近づくゴブリンを狩りながらその戦闘を注意深く観察していた。


 一方、「自由の風」は戦士と神官が現地に残り、ゴブリンを狩り始めたようだ。


 魔術師の二人とセンパイは、ヒルオーガの討伐に合流した。


 センパイは、ヒルオーガの正面を挟んでフェルの反対側に陣取り、フェルと同様に顔の急所を狙って短弓で射撃する。


 魔術師の二人は、その更に後方から盾役のヘイトを上回らないように注意深く攻撃呪文で体力を奪っていく。


 絶え間ない、斬撃、打撃、射撃、魔法攻撃に晒されたヒルオーガは敢無く地面へと突っ伏した。


「うーし、あとは止めだな。コタロー!」


 ボクソンが、得意気に孝太郎を呼ぶ。


「なんですーっ?」


「こっち来て止めさせやっ」


「え?私が?」


「まあ、妥当なとこだな」


「早くおいでー」


「は、はあ……」


 事情が解らないまま、ボクソンの指示でヒルオーガの後頭部の甲羅の隙間に鴉を差し込み、その柄頭をボクソンがバトルハンマーで撃ち込んでいく。


 数回の打ち込みの末、頚椎を完全に切断されたヒルオーガが一度大きく痙攣して絶命することでヒルオーガの討伐は終了した。


 他のメンバーがゴブリンを狩りに向かったところで、センパイ、フェル、ボクソン、メルドと孝太郎の5人は残りヒルオーガを解体する。


「いいんですか?ゴブリン狩らなくて」


「おう、儂らがいかないと危ないこともないし、そうそう終わるもんでもなかろう」


「そりゃ、そうですけど」


 ボクソンとメルドがうつ伏せに倒れているヒルオーガの死体を仰向けにする。


 その胸部をナイフで開いて行くのはフェルだ。


 あばらの固定をセンパイが手伝う。


「どうだ?」


「うん〜?ハズレかなぁ?」


 センパイの問いに、歯切れの悪い言葉で答えるフェル。


 その手には、拳大の赤黒いいびつな球状の塊があった。


「ボスっぽいから、大きめの魔石が採れると思ったんだけど……」


「どう見ても魔石じゃねぇな……」


「何なんだろうな。初めて見るが……」


「おう、とりあえずコタローが貰っとけ。ひょっとすると凄え値打ちがあるかもしれねぇからな」


「ほらよ、コタロー」


 フェルが放る塊を孝太郎が受け取る。


「今回のお宝らしいお宝ってのは、ボスの魔石ぐらいと踏んでたんだが、その権利はコタローにってのは、儂らの総意だと思ってくれていい」


 未だ事情の飲み込めない孝太郎にボクソンが説明する。


「だが、出てきたのはその塊だ。何だか解らないが魔石以上の価値がある可能性もある。と、いうことで、そいつはお前さんのもんだ」


 センパイが補足する様に言う。


「え?私が貰っていいんですか?」


「お前さん以上に権利のある奴なんざいないさ」


「あ、ありがとうございます……」


 高額で売れる魔石であれば、売り払っての分配を主張するところだが、どうやら周囲の生温かい視線から価値も微妙らしい。


 激闘と呼ぶに相応しい戦いの記念品トロフィーだと思うことにして、孝太郎はそれを貰うことにした。


 孝太郎達が合流して、穴の縁のゴブリンを狩り始めた頃に、ギルドの応援の本隊が到着した。


 ギルドマスターが指示を出し、ゴブリンが這い出て来る3ヶ所の地点に本隊のパーティーを配置して、残りのメンバーで周囲のゴブリンを狩っていく。


 翌日からは、3ヶ所に本隊からそれぞれ2個パーティーが担当となって、領主軍が来るまでローテーションでゴブリンが這い出てくるのを止める事になった。


 ローテーション以外のハンターは幾つかのグループに分かれ、転がったままになっていてゴブリンの死体を処理している。


 本来は、一カ所に集めて燃やすのだが、今回はその数が尋常ではないことと、すぐ近くに捨てるのに適した穴があるので、そこへ放り込む。


 死体を放り込む事が、そのまま穴底への攻撃にもなる一石二鳥の処理方法という訳である。


 途中、遭遇したゴブリンと戦闘になることもあるが、少数のゴブリンなので瞬殺されていく。


 ちなみにその場合も耳は採っていない。


 理由は、緊急クエストの報酬は査定方式だからである。


 まずクエストの報酬の総額が決まり、その活躍に応じて配分の比率が決まるというわけだ。


 ゴブリンの死体を穴に放り込みながら、穴の縁を半周ほどしたところで、領主軍の物見が到着したとの連絡を受けた。


 領主軍本隊も明日には到着するとのことなので、ハンター達の仕事は、そこまでということになる。



「ちょっといいか?」


 その日の夕食後、テントに戻ろうとした孝太郎はギルドマスターに呼び止められた。


「今回は、ご苦労だったな。それで話というのは他でもない、君のランクアップの件だ」


「ランクアップですか。登録してまだ二週間ぐらいですよ?」


「それは知っているし、駆け出しとは思えない働きだったと言うこともカーシャから聞いてもいる。それに今回の件もある」


「今回と言っても、穴を見つけて、応援が来るまで見張ってただけですが……」


「度が過ぎる謙遜は良くないな。その見張っている間にゴブリンを何体倒したね?」


「耳も採ってませんし、数を聞かれても……」


「そうだろうな。穴の周囲3ヶ所で相当な数のゴブリンを倒しているのは確認が取れている」


 孝太郎は、魔狼達が倒した数がその中に含まれている事に思い至るが、ギルドマスターがその事に気づいていないのか、それとも知っていて惚けているのかまでは窺い知ることはできない。


「それは……そうですね」


「と、言うわけで、ランクアップして貰う。ギルドとしても優秀な人材をいつまでも低ランクのままにしておく事は避けたいのでね」


 優秀な人材のランクを早く上げることによって、依頼を受ける側のモチベーションを高く保つ必要があるということだ。


「わかりました」


「詳しい話は、街に戻ってからだ」


 ランクアップ自体に損がある訳でもないが、早すぎるランクアップは新たな事件の引き金になったりするからなと、相変わらずのとんでもファンタジー理論による心配を抱えつつテントに戻る孝太郎であった。



 翌日の昼前に、予定どおり領主軍は到着した。


 昼を待たずに3ヶ所を受け持つハンターパーティーの交代が派遣された。


 ギルドマスターとその護衛のための1個パーティーだけは引継ぎのためにもう1日残る事になったが、その他のハンターは夕方を前に撤収を終えて帰路に就く。


 領主軍の調査や討伐は継続されるが、孝太郎をはじめとするハンター達の大穴とその縁の一件は完結となった。

誠に申し訳ありません。色々間違ってました。

前話の「創造の槌」の魔術師が「メルド」になっていますが、正しくは「オステア」です。

他にも修正が必要な箇所がありましたので修正します。

修正箇所は、後書きと活動報告にて連絡させていただきます。


ご指摘・誤字脱字等ありましたら、活動報告「エラッタ」のコメント欄からお知らせ頂けると幸いです。


次回から第2章です。よろしくお願いします。


2017/1/29 9:00 サブタイトル変更「完結」→「決着」

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