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第22話 開通

 応援が到着し、邪魔な2体のオーガを倒したことで、ある程度ではあるが余裕が生まれた孝太郎達は、順調に穴の縁のゴブリンを狩っていく。


 しかし、穴の中では工事が続けられており、完成までの時間はそう長くはない。


 なんとか工事の妨害が出来る地点を確保したいが、周囲のゴブリンはそれを阻止するように陣取っているので、結果殲滅しか方法はない。


 他の2ヶ所からは相変わらずゴブリンが攀じ登ってきており、工事現場からはオーガカタパルトによってゴブリンが継続的に投げ出されているので、その総数は遅々として減らない。


 半日ほどをゴブリンの殲滅に費やした頃、更に応援が到着した。


 到着したのは、「創造の槌」の戦士にして調理人メルド、魔術師にして錬金術師のオステア、それに「自由の風」のメンバーの合計8名である。


 「自由の風」は中堅のハンターパーティーであり、戦士3名、魔術師、神官、斥候という火力に期待のできるパーティーであり、斥候職はあのセンパイである。


 センパイは自分の選んだ依頼で孝太郎が巻き込まれたということで、どうにも夢見が悪く、他のメンバーを拝み倒して先行に名乗りを上げたらしい。


 ギルドの応援の本隊は、半日後に30人程度。それから3日後には領主軍300人が到着する予定だという。


 これで勝利条件がはっきりした。


 領主軍到着まで、ゴブリン共を穴の底に留めればこちらの勝ちということだ。


 逆に、領主軍300を持ってしても討伐出来ないほどのゴブリンを穴から出してしまった時点でこちら勝ち目はなくなる。



 孝太郎とオステア、それに「自由の風」のセンパイと魔術師は戦列を離れ、穴の中の状況を偵察していた。


「どうです?穴の底を一気に攻撃できるような高火力の魔法とかありませんか?」


「いや、範囲魔法などは使えない。そもそもこれだけの面積への範囲魔法が使えれば、宮廷魔術団に入れるレベルだぞ」


 そう答えるオステアに「自由の風」の魔術師もこくこくと何度も頷く。


「それにしても、すげえ数だな。耳が全部採れりゃ何年かは遊んで暮らせるぜ」


 そう嘯くのはセンパイだ。


「でしょうね。でも耳を集めるのに何ヶ月もかかりそうですけど」


「ちがいない」


 見たこともないゴブリンの大群に、少しでも笑うことで士気を上げたい心理が働く。


「となると、工事の妨害とスロープの破壊ということになります」


「そうだな。距離にもよるが一部を崩すぐらいはできるだろう」


「こちらも同様だ」


「威力が高そうなのは、ロックストライクだが、失敗した時が怖い」


「というと?」


「崩せなかった場合は、そのままスロープの材料に使われる」


「それは、避けましょう」


「火系は木造以外の構築物を壊すのには向いていないし、水系は中途半端な威力では土を固めることになりかねん」


「そうなると、エアインパクトか」


「真横からでは距離がありすぎる。かといっては正面からでは効果は薄いだろ」


「その条件ならあそこだな」


 センパイが指差す方向は、工事の終着点を挟んで反対側ながら、穴の方向に大きく張り出した場所であり、その下部の岩盤も厚く、崩落の危険も少なそうである。


 センパイは、見かけによらず優秀な斥候職であるらしい。


 魔術師2人の詠唱場所を確保して、詠唱終了まで守るのは「自由の風」が担当することとなった。


 オステアを除く「創造の槌」と孝太郎は、囮として敵の攻撃を引き付け、特に右方向からのゴブリンの殺到を阻止する役目だ。


 「ウィンディア」は「自由の風」の更に左でゴブリンの数を減らし、拠点確保を応援する。


「要は、今までと変わらず、ゴブリンを狩りまくるってこったな」


 いろいろ台無しなボクソンの台詞だが、実際そのとおりである。


 孝太郎達と「ウィンディア」がゴブリンを狩り始める。


 「自由の風」は一旦後方へ下がり、戦闘地点へと回り込む。


 ゴブリン共の注意が完全に孝太郎達へ向かうと同時に「自由の風」が行動を開始する。


 戦列が薄くなったところへ、戦士の3人が突入する。


 いきなりの横からの攻撃に対応できるゴブリンではない。


 戦列が途切れたところへ魔術師の2人が飛び込むようにして詠唱地点を確保する。


 戦士の3人は詠唱地点を囲むように位置取り、ゴブリンを魔術師に近づけない。


 オステアの放ったエアインパクトは、スロープの途中を崩す事に成功する。


 「自由の風」の魔術師の放ったエアインパクトはゴブリンを投げるオーガを穴の底へと叩き落としたが、スロープの破壊は僅かでしかない。


 周囲のゴブリンが魔術師の2人に向け殺到し始める。


「まずいな。一旦退くぞ」


 両側の戦士2人が隙間をこじ開けるように戦列を押し戻す。


 残る一人が切り払って戦列を分断し、魔術師の2人を伴ってその外側へ出ると同時に、両側の2人も戦列から離脱する。


 追い縋るゴブリンをセンパイがショートボウで射抜く。


 淀みのない連携で、危なげなくスロープを破壊することができた。


 これを何度か繰り返せば、工事は大幅に遅らせることができるはずである。


 しかし、スロープが破壊され、オーガが落とされたのを見たヒルオーガが穴の底で雄叫びを上げた。


 ヒルオーガは他のオーガよりも頭3つほど大きく、腕と脚、それに頭部から肩にかけて装甲のように石のような甲羅で覆われている。


 故に、その拳や脚による攻撃は、オーガの棍棒を凌ぐ攻撃力を持ち、その皮膚の硬さと装甲のような甲羅によって防御力も高い難敵である。


 雄叫びを上げたヒルオーガは、スロープを駆け上がりはじめる。


 巨体に似合わぬ速度で駆け上がるヒルオーガは、オステアの崩したスロープの破壊された場所を難なく飛び越える。


 「ウィンディア」のリーナとラナが、その姿に気づいて孝太郎達に知らせるが、ヒルオーガは既に最上段に迫ろうとしていた。


 知らせを受けた孝太郎が振り返った瞬間、破砕音とともにゴブリンと岩塊が宙を舞った。


「まずいっ!離れろっ!」


 孝太郎の喚起に、ハンター達は一斉に穴の縁から離れる。


 その後も連続して起こる破砕音。


 宙を舞うゴブリンと岩塊も同様である。


 破砕音はヒルオーガがその拳を壁面に向かって振るうことによってひき起こされていた。


 拳の当たった壁面は、爆散と言っても良い勢いで、その上に立つゴブリンもろとも飛び散っていく。


 オステアとスリオラがシールドを展張し、その場にいるハンター13名がそこに集まる。


「あれは、止まらないだろ?」


「ああ、止まらんな」


「あんな手で来るとは」


「通路が開くのも時間の問題だろう」


 ヒルオーガがスロープから通じる通路を完成させる事自体は全員が肯定を示す。


「その後どうするかだ」


「ヒルオーガを釣りだして、その間に通路を埋め戻す案はどうです?」


「ロックストライクである程度は埋まると思う。あとは足場系も使えるか」


「では、そちらは先程と同じ「自由の風」にお任せします。「創造の槌」と「ウィンディア」は、ヒルオーガの誘導と討伐です。フェルさんは討伐場所の選定をお願いします。釣り出しの囮は私がやります」


 孝太郎の立案に一同が頷く。


「しかし、ウッドプレートの小僧の指示で、誰も文句言わねえんだから、数万のゴブリンより、そっちの方がよっぽど目を疑うってもんだ」


 センパイが茶化すように言う。


「そもそも、我々が来るまで一人でここを支えてたんだ、ウッドで一括りにするつもりはない」


「経験の少ないウッドには、まともな作戦が立てられない事が多いってだけで、コタローがそうだとは限らんしな」


「事実、コタローの作戦は無理がなく、的確だからね」


 ハンターの先輩である面々が、センパイの冗談をを真面目に否定していく。


「そうでもありませんね。一箇所変更を要求することにしましょう。ウッドの小僧に囮は任せられないので、「自由の風」にその大役を担っていただきたいと思います」


「か、かんべんしてよ。姐さん」


 スリオラの冗談に場が和む。


 それ以上に、「創造の槌」のメンバーは、こんな状況で冗談を言うスリオラに内心驚いていた。


 そして、スリオラの発言が半分以上本気なのを見抜いたのは、「ウィンディア」のリーナと付き合いの長い「創造の槌」のフェルの二人だけだった。


(スリオラさんと勝負とは分が悪いね、ベッツ、頑張んなよ)


(わちゃー、マジじゃん。カフェルで何人の男が泣くことになるやら)


 ヒルオーガの連撃によって、スロープは完成した。


 展張されていたシールドの消去とともに、13人のハンターは散開する。


 ヒルオーガに狙いを付けさせないためだ。


 孝太郎だけが進路を変え、雄叫びを上げるヒルオーガの前に立ち塞がった。

2話で終わりませんでした m(_ _)m

次回、大穴の戦い決着     か


2017/1/29 人物名称の間違いを訂正 別動し魔法を放つ人物「メルド」→「オステア」

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