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カケラ版-1『神城綾花』

「―――――………………」


 ピッピッピッピッピッピッ……


 気づいたときにはベッドの上で呆然としていた。

 あたりを見渡す――ここはどこかの病院のようだ――


「……お兄ちゃん?」


 自分のいるベッドのそばにある椅子に、頭に包帯を巻いた兄、神城真一が座ってるを見つけた――


「……お兄ちゃん……?」


 再度呼びかけるが、返事がない――どうやら、真一は眠っているようだ――

 ベッドから降りて兄を起こそうとして、綾花は自分の腕から細い管が伸びているのに気づいた……

「……何これ? 点滴、?」

 小学3年生だからと言って知らない、なんて事はありえない。

 漫画や、ドラマでこう言う医療器具を時々見ることがある。ただ、自分がそれの世話になる事を考えたことがなかった――


「……うん……? 綾花? やっと、目を覚ましたのか?」


 真一は綾花の様子にやっと気がついたらしい。

「お兄ちゃん……」

 綾花の兄真一は、手元にあるスイッチを操作している。どうやらナースコールのようだ。

 綾花はそれを見ながら、うまく動かない体を無理やり起こす。


 コトン……


 と、体の上に乗っていた小さな箱が病院の床に落ちる――


「……? 何これ?」


 箱からは、ドクドクドクと何かが流れ出していく……

「お前が出したものだろ、その箱は……」

 真一は床に落ちた箱を拾いあげ、綾香に手渡す。

 入っているものを流してしまった箱は、綾花の手に渡ると綾花自身の中に消えていくようになくなってしまった。


「……?」


「それはやっぱり、お前のものらしいな。……他の奴らと同じ、ということだ――」

「お兄ちゃん、それってどういう意味?」

「……思い出してみろ。何があったのか」

 真一はめったに見せない真剣な表情で綾花を見る――

「何があったのか……?」

 綾花は必死で、自分がなぜこんなことになったのかを思い出そうとする――


「あ……」


 そして、ひとつのことを思い出した――




 その当時、綾花はまだ天覇の魔女の存在を知らなかった――




 だから、自分が巻き込まれた災難が、その魔女によるものだとは思っていなかった――


「――!! お兄ちゃん!! 他の子たちは!? ミリーは!? カサンドラは!? ジェノスは!?」


 魔女の襲撃によって被害を被ったのは他にも多数いたはずだ――あの魔女――ジョアンナの力にさらされて、無事でいられるとは思えない――


「……襲われた子供達の中で、今まで意識不明だったのは、お前だけだ。そのお前が目を覚ましたんだ。行方不明になっているミリーを除いて、他の子供たちは全員無事だったよ」

「え……? ミ、ミリーが……?」

 綾花は、同い年だった一人の少女を思い出す――確か、引率の教師の娘で仲の良い少女だった。

「ミリーが行方不明って、どういうことなの、お兄ちゃん!?って」

「落ち着けよ! お前は三日も意識不明だったんだぞ! もうすぐ、先生も来るだろうから、おとなしくしてろ!!」

 暴れる綾花を必死で抑えようとする真一。

 やがて病院の先生が来て、綾花を落ち着かせようとしてくれた。


「お兄さんのことを、悪く言わない方がいいわよ。意識不明だったあなたを三日間、ずっとつきっきりで見ててくれたんだから」

 フランス人の女医さんが綾花にそういう。

「……お兄ちゃんが過保護なのは、今に始まった事じゃない……」

 綾花は頬を膨らませてそういった。

 まあ、故郷日本を遠く離れて異国の地で暮らす兄妹、母親は何か大きな音楽会の演奏とかで忙しく、父親もICPO勤めでなかなか帰ってこない。

 同年代の友人は何人かいるが、それでも、寂しさからか、兄弟が仲良くなるのは当たり前だ。

「はい、これを口の中に入れてくれる?」

 女医は一通り検査を行うと、一本のガラス棒を彩花に渡す。

「……何コレ?」

「DNA鑑定をしたいから、口の中の粘膜をもらえるかしら?」

「は……?」

 DNA鑑定――漫画とかの知識でなんとなく知っている。確か、親子とか兄弟とかの関係、または本人証明を、科学的に証明する方法のはずだ。

「なんでそんな事するの!? まさか、私が家族と血のつながりの無い赤の他人とかいうの!?」

「そんなんじゃないわ。ちょっと気になることがあるから調べるだけよ」

 フランス人の女医は、笑いながらそう言った。その手元にあるカルテにはフランス語で何かが書かれていた―――――




「……妹さん、だいじょぶだった?」

 病院の屋上で、真一に問い掛ける少女がいた。

 眼下には、フランス地方都市の街並みが広がっている。

「……鳳凰寺さんか」

「……ひじりでいいわよ」

 その少女は、真一と同い年の小学6年生――鳳凰寺聖という名前で…………星占部という組織の一員だと言っていた――

「日本に、帰ることになるんでしょう? 来年からは、私と同じ中学に通えるよう手配してあるわ。 まねまねの能力者、真一君――」

「なんだそりゃ!? そんなふざけた名前の能力じゃない! 俺の能力は『Level1 Download』だ!」

「……うわ、厨二っぽい名前……」

 真一の言葉に、呆れる聖……

「でもって、綾花の能力は『Arc』だ!」

「アーク……聖櫃、ね……相手が能力者じゃない場合何の効力もない能力によくそんな名前がつけられるもね。あなたも、あなたの妹も……」

「うるせー」

 真一はそっぽを向いてしまう。

「……まあまあ、同じ能力者同士仲良くしようよ! あなたの妹にも、私の仲間が友達になってくれるわ」

 聖はそう言って真一の手をとった。

「まあ、覚醒型と血統型の違いはあるけどね」

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