AS版その3『異世界人の思惑』-5
「クロマント!!」
ベル・ホワイトとの戦いを中断し、クロマントの救出に動くカゲホウシ。
「いかさないよ!」
それを察した魅咲が、カゲホウシの前に回り込む――
「どきなさい――『スリープ・ミスト』!!」
ブワン!!
カゲホウシの前に、紫色の霧が生み出される!!
「綾花ちゃん、アークを!!」
「うん! わかった! 『アーク』!!」
瑠璃の声に、綾花が答え、アークを出現させる!!
シュウウウウウン!
綾花のアークが、カゲホウシの眠りの魔法を吸収する!
「く!!」
片膝をつくカゲホウシ――吸い取った魔力をポタポタと捨てる綾花。
「さあ、覚悟、してもらいましょうか似非天逆衆――」
「こっちはみんな元に戻たようだ!」
「これでもう、大丈夫よ!」
あちこちでそういう声が上がる。
ブラック・モノボルの呪縛から解放された生徒達がどんどん増えていく。
「もう逃げられないよ!」
前にいる魅咲、そしてカゲホウシの後から迫るベル・ホワイト……
その時……!!
キラキラキラキラ……!!
「――!?」
校庭の空が明るく輝く――
空に、いくつもの光の玉が浮いている――
「何これ? 魔法――!?」
綾花が、アークを空に向けようとする。
「やめてください、あれは私の魔法です」
「あなたは……グレン・ナジャ!?」
いつの間に現れたのか、そこにいたのは三毛猫のヌイグルミ、ワーボワールの預言者グレン・ナジャだった。
「予言が狂っている……しかし、彼らをあのまま放っておくわけにはいかないでしょう――」
光の玉が、校庭に降って来る――
パア……
倒れた生徒達に光の玉が当たり、裸だった生徒達が媛崎中学校の制服に包まれていく――
「おお、美少女戦士物でよくある、敵を倒した後に敵によって破壊された建物とかが治っていく都合のいい展開!」
瑠璃が目を輝かせていう。
「ご都合主義の展開って、やつ?」
「これなら、写真を撮ってもだいじょうぶだよね!」
呆れる魅咲にカメラを構える苺。
「校庭に裸の気絶した生徒多数……絶対今年度一番のスキャンダルになると思ってたけど、世の中うまくできている物ね」
「残った変な格好の人間は、魔法少女二人とコスプレフェザーか……」
「オ、オレのことか!?」
陽子、遼子、星羽がそう言う。
「ありがとう、グレン・ナジャ……」
ロイヤルセレナがグレン・ナジャの側に立ちお礼を言う――
「あの黒い2人は!?」
グレン・ナジャの魔法に一時見とれていた隙に、カゲホウシとクロマントがいない……?
「グレン・ナジャ様、ご苦労様でした」
「さすがですね、グレン・ナジャ様」
……いつの間にかグレン・ナジャの後ろにいるカピバラのフォウ・リンスとメガネザルのトルオ・ニュウ――
「ねえ、ヤミゴロモの正体って、オオカミのマジュ・リッツだったよね……?」
「ああ、そうだ」
「じゃあ、カゲホウシとクロマントの正体は……」
ひそひそ声で話し合い、疑惑の目をフォウ・リンスとトルオ・ニュウに向ける辰羅と瑠璃――
「……ひっとらえた方がよさそうね」
魅咲もどこからともなくロープを取り出す。
「魔法で抵抗されても、私のアークがあれば……」
綾花も、フタを閉じたままのアークをかまえる……
「う~ん……」
「ここは?」
「何が、あったの?」
「おっぱい……」
「どうしたことだ?」
「「――!!」」
気絶をしていた生徒達が、次々と目を覚ましだす――
「あたし……元に戻ってる」
「ほ、ほんとだ! 仮面じゃない!」
「俺は……たしか、黒い触手プレイを……」
「あ、あの怪物はどこへ行った?」
目を覚ました生徒達は当然のことだが混乱している――
そんな状態で、ワーボワールのヌイグルミ達を捕まえることができるはずがない――
「あなた達は、魔法少女に助けられたのです――」
グレン・ナジャがそう言う。
「「「魔法少女!?」」」
それを聞いた生徒達が驚き、キョロキョロと周りを見、やがてロイヤルセレナとベル・ホワイトを見つける。
「あ、あの……」
「みんな、元に戻ってよかったね」
たくさんの視線に、顔を赤らめるロイヤルセレナ、笑顔で答えるベル・ホワイト。
「皆さん、これから魔法少女との絆をつなげるお守りを差し上げます。欲しい方は我々ヌイグルミから受け取ってください――」
グレン・ナジャがそう言って、たくさんの小さなお守りを取り出した。
魔法少女によって助けられたと思っている生徒達は喜んでそのお守りを受け取ろうとした――大勢の生徒達がその行動を取ることによって校庭はさらに混乱していく―――――
ちなみに、本当は自分達が助けたのに手柄を魔法少女に横取りされた形になったA組の生徒達は、誰一人お守りを受け取らなかったと言う――




