AS版その3『異世界人の思惑』-4
「……!!」
ロイヤルセレナが、目を見開く。
「みんなを、助けられる……」
ベル・ホワイトもそういう。
「そういうこと、じゃ、みんなを助けるよ!」
瑠璃がそう言い、A組の生徒達が動き出す!
「あ、待って! 私も手伝う!」
「オレもな!」
遼子と星羽がそれに続く。
「あああ、私が一番多くの人を助けなきゃいけないのに!!」
「僕も、手伝うべきだろう!」
陽子と秀作も続いていく。
「ええっと、魅咲ちゃん! 取材、大丈夫!?」
「ええ、大丈夫です!」
苺は、A組の生徒達の中にいた新聞部の後輩に声をかける。
「じゃあ、取材開始――!」
バシュ!
「あ……」
その時、自分の体に戻り気絶した生徒達服が弾け消飛ぶ――彼らが身にまとっていたのは黒い茨が変化したもので、ブラック・モノボルの呪縛が解かれた今、その形を保っていられなくなったのだ。
「――!! 魅咲ちゃん、写真はダメ! ダメったら、ダメ!! 魔法少女に後でインタビューするからそれを記事にします!!」
素っ裸になった生徒を目の当たりにした苺は、大声でそういった。
「苺先輩、とりあえず皆を元に戻すのが先決だと思います」
魅咲は冷静にそう言っている。
「そう簡単に、やらせると思うか?」
クロマントが、生徒救出に動き出した人間たちの上空へと移動する。
「おい、魔法少女! お前達の敵はお前たちが何とかしろ!」
辰羅が、そう叫ぶ。
「あ、そうだな。ロイヤルセレナ、ぼーっとしてないで、あいつらを倒さなきゃ、また同じことが起こるぞ!!」
ライバルの声を聞いた隆幸がいち早く我に返り、ロイヤルセレナに声をかける。
「ああ、うん、え~と、『フライング』!!」
空飛ぶ箒の魔法を使い、上空へと舞い上がる。
「やらせないよ、クロマント!!」
「……あまりいい事態とは言えません、せっかくの大作戦をここまで無茶苦茶にされるとは――そのうっぷんを晴らす相手はあなたでいいんですね? ベル・ホワイト」
カゲホウシがいつの間にか自分の後ろにまで移動していたベル・ホワイトに向き直る。
「あなた達の野望もここまでよ! 覚悟しなさい、天逆衆――!!」
ステッキをかまえるベル・ホワイト。
「あれ? この子達、弱くない?」
ブラック・モノボルの呪縛に囚われた生徒達は約二百人ほど……これらの生徒達を助けるのはどれほど大変なことか……A組の生徒達はそう思っていた。
だが、実際にやってみるとブラック・モノボルの意識は、人間の体をうまく動かすことができているとは言い難く、集団行動もうまくいかないので、簡単にとり押さえることができた。
取り押さえて、胸元から仮面を外し、その仮面の顔と同じ顔の生徒を探し出して、顔に仮面をかぶせる。
やってみれば簡単なことだった。
間違った顔にかぶせても、その仮面の意思が他人の体に宿るわけでは無い。
かぶせてみてしばらく経って、仮面に変化がなければそれは間違っている――正しい人間の顔にかぶせた時のみ、元に戻る。
ただし、黒い茨の変化した服は元に戻すと消えてしまうのがちょっとした問題か? やがて媛崎中学校の校庭には、裸で気絶している生徒達が何十人もいると言う、異様な光景が生み出されていた――
「『サンダーアロー』!!」
シャン!!
クロマントの攻撃に耐えるロイヤルセレナ。
「隙ありだ!!」
「――!?」
ビュン! ガン!!
攻撃の隙を突いて、隆幸がクロマントに石を投げつける!
「つ~~! 卑怯者!!」
涙目で隆幸をにらむクロマント。
「戦闘中によそ見したらダメだよ! 『バーニング・ファイア』!!」
ゴオオオオオオ!!
「くっ!!」
ロイヤルセレナの攻撃魔法をまともにくらってしまうクロマント。
「みんなを大変な目に合わせて……絶対に許さないんだから――」
ロイヤルセレナの目に怒りが灯る。
辰羅や瑠璃、魅咲や綾花などA組の生徒達が来てくれたおかげで、皆助けることができそうだが、考えてみればあまりにもひどいことを天逆衆はやっているのだ。
下手をすれば、媛崎中学校の生徒達は天逆衆の兵隊としてずっと操られたままだったかもしれない――
「『ブラスト・オーブ』!!」
ドン!!
爆発力を持った光の玉がクロマントに直撃する。
由良瀬里奈が魔法少女になった時に芽生えた物――それは、なんだったのか?
自分が特別な存在になったという実感はなかなか湧いてこなかった。
魔法少女には敵がいる――それと戦わなければいけないなんて、思ってもみなかった。
一時は、その敵――天逆衆――の恐怖に負け、すべてを投げ出したいと思い、出会った勇気ある少年――小鳥隆幸と体を入れ替える、なんてまねまでしてしまった。
そして、隆幸の心の一部はまだ、ロイヤルセレナの中にある。
隆幸の心の勇気は、ロイヤルセレナが戦う力だった。臆病な瀬里奈の心では、戦う事が出来なかったからだ。
でも、戦わなければいけないとわかった。
戦わなければ、魔法少女は大切なものを失ってしまうのだ。
由良瀬里奈は、まだ恋というものを知らない。
恋愛小説や少女漫画でそういうものがあるということを知識として持っていても、自身にはまだまだ縁遠いものだと思っているからだ。
だから、彼女は今すべてが大切だと思っている。
どういう風に説明すればいいのかわからない。普段よく喋るクラスメイト、顔も知らない別のクラスの生徒、会ったことも無い先輩――
媛崎中学校と言う一つのくくりが、今、彼女にとって一番大切なものだった。
――それが、魔法少女として、由良瀬理奈が守りたいすべてだった――
「『ロイヤルセレナ・スペシャル・インパクト』!!」
ド・ド・ド・ドオン!!
ロイヤルセレナの最強、最高の攻撃魔法が炸裂する――!!
「すごい…」
ベル・ホワイトは思わず戦いの手を止めてそうつぶやいた……




