AS版その3『異世界人の思惑』-3
「僕達の兵士を元に戻す? そんなの不可能だよ」
「いくら新たな魔法少女の力を借りたとしても、不可能よ」
クロマントとカゲホウシがあざけるように言う。
「……? 新たな魔法少女?」
「いったい、誰のこと?」
その場にいた生徒達はお互いの顔を眺めあう。
「今のところ、魔法少女はロイヤルセレナとベル・ホワイトだけだと思うけど?」
星羽がカゲホウシに聞く。
(しまった~~!!)
子供っぽいところがあるクロマントが口を滑らす可能性があると注意していたが、自分が口を滑らすとは思っていなかったカゲホウシ――
黒い衣服に隠れて顔は見えないが、赤くなっているのかもしれない……
「まあいいか、それだけ人数をそろえたところで、僕らの方が兵士は多いんだ。有利なのは変わりない!!」
そう言って片手を高く上げるクロマント。
それを合図に、止まっていた生徒達が動き出す。
「クソ……とりあえず、手伝え辰羅! A組の連中も! 操られた生徒達を抑えるんだ。その間に、魔法少女達が天逆衆達を倒せば、みんな、元に戻るはずだ!!」
そう言って、剣をかまえる隆幸――
「落ち着け。あんな連中を倒したところで、ブラック・モノボルの呪縛が解けるわけじゃないさ。ブラック・モノボルの呪縛を解くには――!」
ザッ!!
A組の男子生徒数人が操られた生徒達の内、手近な所にいた男女二人を抑える。
「ハナセ! ナニヲスル!」
「キャア! エッチ!」
笑顔のままで、感情ない言葉を放つ男女二人。とりあえず、その言葉を無視して胸元の仮面に注目する――!
「ええっと、この女の子の胸の顔って、そっちの男の顔だよな?」
「そうだな、この女の子の顔もそっちの女の子の顔だ」
仮面は、目を閉じた表情ないもの。生徒の本体のほうは元の仮面がそうであった笑顔――見分けはつきにくいが、よくよく観察し顔かたちや黒子の位置で判断をつける!!
「くっ! 結構、固いな!」
苦労して抑えた二人の胸元から仮面を引きはがす!
「「ワア!」」
操られていた生徒が叫ぶ。
「よし、それを顔にかぶせろ!」
男子生徒の顔に本人の仮面が、女子生徒の顔に鬼の仮面が、それぞれ被せられる――!!
「どうだ――?」
しばらく、沈黙が訪れる……
仮面が、人間の形から笑いの形に変わる……
そして音もなく剥がれ落ちた……
「……おっぱい……もみたい……」
仮面が落ちた後、女子生徒はゆっくりとそういった。
「おっぱい……大きくしたい……」
男子生徒も、そう言って、ゆっくりと力なく崩れていく。
「気絶、してるみたいだね」
「何か変な事を言ってだけど……とりあえず、これで元に戻ることが証明されたわけだ!!」
A組の生徒達は、操られた生徒達をにらむ――
「何人くらいいるんだ? これ、全部元に戻すのは大変そうだな!!」
「やらなきゃいけないだろ。これが、俺らの使命だ!」
その足元で地面に落ちたふたつの仮面が、磁石のようにひかれあい、ひとつにくっつく――それは、やがて一つの種子となる――




