S版その4-2
『やめて、やめて!!』
体育教師の逞しい胸元に、幼い顔立ちの少女の仮面がつけられる。
逆に、体育教師の仮面は幼い一年生女子の胸元につけられてしまう――
「サア、コレデウルサイノハイナクナッタ。サア、オマエノヨクボウヲカナエテヤロウ!」
「ハイ、ワタシノヨクボウハコノヒンソウナカラダヲリッパナスポーツショウジョノニクタイマデニキタエルコトデス!」
「ヨカロウ、コノオレノヨクボウハセイトトモットフレアウコト! オマエガムキムキニナルマデワンツーマンデキタエテヤル!」
「ウレシイ! ヨロシクオネガイシマス! センセイ!!」
自分以外の肉体につけられた仮面は、動くこともしゃべることもできなくなる――しかし、意識はあるらしい――よく見ると、瞳が動いている。ほとんどの仮面が、勝手に動く自分の肉体を悲しそうに見ている。
「つりゃ!!」
蠢く黒い茨を掃除用具入れから手に入れたモップの柄で薙ぎ払いながら、隆幸達は校舎から逃げようとする。
茨の量は膨大だが、人に絡みつき襲う時にはそこに集中していくので、その隙に逃げる事が出来る――逆に言えば犠牲者を出しながら進めば、助かるという事だが……
「そんなこと、許すわけないだろ!!」
隆幸はモップの柄で黒い茨を弾き返しながら、B組の隣、C組に駆け込む!
この事態を、打破できそうな人物が、ここにいる!!
「由良!!」
「小鳥君!?」
C組も、黒い茨の侵略を受けていた。
胸元に美少女の顔をつけた男子生徒が、変な踊りを踊っていたり、胸元に男の顔つけた少女がちょっと書けないようなことをしていたり、担任教師である古高直介さえも犠牲になってしまってるようだった。
「キョウシダカラトカセイトノタメダトカイッテコクハクヲガマンシテイタヤツハイナクナッタ! コレカラオレハエークミノスズカセンセイニコクハクスル!!」
黒い服の胸元に、女子生徒の仮面をつけた古高先生が教室を出ていこうとするのを、胸に古高先生の顔をつけた女子生徒が押しとどめている。
「ジカイノテスイトモンダイヲオシエテクレルマデハナシマセン! ワタシハドンナテヲツカッテモ、ツギノテストデヒャクテンヲトラナキャイケナイノヨ」
そんな中で、由良瀬里奈と、彼女がステッキを使って使ってはったバリアの中にいる数名の生徒は無事だったようだ。
「小鳥君も無事だったのね」
瀬里奈は一旦バリアを解き、隆幸と一緒にいた生徒達をバリア中に入れる。
「ああ、この事態は、お前の……魔法少女の敵の仕業らしいからな!」
「「魔法少女!!」」
さりげなく言った隆幸の言葉に、無事だったC組の生徒達と陽子がびっくりした声を上げる。
「……あ、夏樹、無事だったんだ――」
B組から隆幸についてきていたのは、夏樹陽子だったようだ。
「あ、うん……それがね、私の欲望は一番になること。なんかそれが分かってるみたいで茨が寄ってこなかったの」
「自分の欲望に正直な奴は大丈夫なのか?」
「ところで、魔法少女って……もしかして!! ロイヤルセレナ!?」
陽子が瀬里奈に聞く。
「ええっと、そうなんだけど……」
瀬里奈は以前陽子に詰めよられたことがあり、彼女を苦手としている。
「魔法少女って……あの学級新聞の!?」
「瀬里奈ちゃんが、ロイヤルセレナなの?」
「まあ、バリアなんて張れるんだから何かあるとは思っていたけど――」
バリア中にいたC組の生徒達もそういう。
「あ――すまない、これ、秘密だったんだな。同じクラスの連中にもばれていなかったのか」
「……うん……」
「この事態じゃどうしようもないだろう」
黒彪のヌイグルミ、レオがポツリと言う。こいつもC組内では正体を隠していたらしい。
「ええい!! 魔法少女ならこの事態をどうにかできるはずだろう!? 早くロイヤルセレナに変身しろ!! 俺が、時間を稼ぐ!!」
「小鳥君!?」
隆幸が、黒い茨の集中している場所に突進する!!
「言っておく!! 俺の欲望はライバル、御陵辰羅と決着をつけることと、魔法少女を守ることだぁ!!」




