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S版その4-3

クーナ、アイシテル、ブチュウ!!」

「チカゲ、ダイスキ、チュパチュパ!」

 鴨葱千景と垣根空奈がいちゃいちゃしている。だが、千景の胸には空奈の仮面が、空奈の胸には千景の仮面がつけられている――

「「アイシアッテイルノニヒトメヲキニシテイチャイチャデキナイナンテコノカラダノアルジトハミトメラレナイヨネ」」

 二人は鋭く細めた目で見つめ合い、三日月のように笑いの形に固めた口でキスをする――本来の千景と空奈の意識は、お互いの体につけられた仮面の中でその異様な愛の営みを、何もできずに見つめているだけだった――

「あいつら、いちゃいちゃしやがって……くそ、俺も彼女が欲しい!!」

 そんな千景と空奈の焦燥を知ってか知らずかわからないが、嫉妬の炎と憎しみの瞳で睨み付けている京極疾風……黒い茨が集中してる場所にいるにも関わらず、彼は茨に絡みつかれることがなかった――




「――!?」

 黒い茨は、隆幸の体に絡みつくことはなかった――

「なんだと!? これはいったい――!?」


 ギュルン!!


 黒い茨の一部が盛り上がり、そこに一枚の仮面が現れる。

『イイネイイネ! ヨクボウニマッスグナヤツハ!!』

「――!?」

 隆幸は目を丸くしてその仮面を見る!

『ソノジブンノヨクボウヲ、タイセツニシロヨ! ショウネン!!』

 そんな言葉を残し仮面は消え、黒い茨は隆幸を無視して他の生徒に襲いかかろうとする――

「私はこの学校で一番になる女! こんなところで消えるわけにはいかないのよ!!」

 そう叫ぶ陽子! そんな彼女にも、黒い茨は絡みつかなかった――

「やっぱり……欲望に忠実な奴はこれから逃げられるんだ……」

 それがわかっても、普通の人間は欲望を抑えているものである。

「ええっと、そうだ由良……いや、瀬里奈ちゃん、俺の彼女になってくれ!!」

 中には、どさくさまぎれにそう瀬里奈に告白し、抱きついた男子生徒もいた。

「あ、ちょっと!!」

 いきなり抱きつかれて、危ういバランスで保たれていたバリアの魔法を崩してしまう――

「あ――」

「うわあああああ!! どうして!? 俺は欲望に正直なはずだぞ!!」

 崩れたバリアの間から侵入した黒い茨が、その男子生徒に絡みつく!

『オレダケデモニゲタイ! オレダケデモタスカリタイ!!』

 その男子生徒の胸に現れた仮面が、そんな事をしゃべりだす!!

「おい、それじゃ俺がまるで他人を犠牲にしても逃げ出す卑怯者みたいじゃないか!!」

『オレハ、ソウイウヤツダ!』

 仮面が光り、男子生徒と仮面の意識が入れ替わる!!

「サア、ニゲルゾ!! オレダケハ、タスカルンダ!!」

『や、やめろ!!』

 周りに、取り替える仮面がなかったからだろうか? その男子生徒の体はとっととその場から逃げ出すしてしまった。


「きゃああ!!」

「や、やめろ!!」


 隙をついて残っていた生徒に茨が襲いかかる!!


「やあああああ!!」

 欲望に正直なため、茨が寄り付かない隆幸がモップの柄を振るい、どうにか助けようとする!

「由良っ! 今のうちに、魔法少女ロイヤルセレナに変身しろ!!」

「……それは元々おいらの台詞なんだけどね」

 レオがポツリと言う――


「魔力解放・変身! 『ロイヤルセレナオーロラデビュー』!!」


 キラキラキラ、バシュ~~ン!!


 由良瀬里奈が魔法少女ロイヤルセレナに姿を変える!

「『ロイヤルセレナ・シャイニングアロー』!!」

 そして放った光の矢が黒い茨を弾き飛ばす!!

『……小鳥君、お願い!!』

 シャイニングアローが開けた道、だが、黒い棘の動きは激しく、今にも再び襲いかかってきそうだ!!

『……わかったよ、俺と協力すればいいんだな!』

 ロイヤルセレナの心の中にいる隆幸が、現実の世界にいる隆幸をしっかりと見据える!

「『ダブル・ソード』!」

 ロイヤルセレナの体の主導権を渡された隆幸の心はまずステッキを二振りの光の剣に変える!

「――俺……じゃなくて……隆幸っ! 使ってくれ!!」

「――――? お前は……俺、か!?」

 隆幸は光の剣を受け取り、ロイヤルセレナにそう問い掛ける。

「今はそんな事を気にする時じゃないだろ! いくぞ!!」

 今はもう、ロイヤルセレナと隆幸を除けば、陽子と他、数名しかいない。

「どこに逃げるつもりだ!? 安全な場所はあるのか!?」

「……とりあえず、校庭へ!」

 ロイヤルセレナと隆幸は息の合った剣さばきで黒い茨の侵略を退けながら教室を出、廊下を進み校庭を目指す!


「…………」


 少しだけ気になったのか、途中A組の教室を覗いてみる――

 が、そこは真っ暗で何の物音もしなかった――

「御陵……あいつはどうなったんだ? もう、茨に飲み込まれたのか?」

「……御陵なら多分だいじょぶだ」

「――なぜ、そう思う?」

「あいつは俺の――隆幸のライバルだ。この程度のことで倒れるような奴じゃない――」

 男と女、魔法少女と一般男子学生。その違いはあれど隆幸同士ならわかることが確かにある……

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