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第3話 幼き才能

◆ 前半:親視点


 ヒロが五歳になった。


 兄のカイトは相変わらず“神童”と呼ばれている。

 火・水・風・土の四つの属性を自在に操り、近所の子どもたちからは憧れの的だ。


「カイトくん、また火の玉見せて!」

「いいよー!」


 そんな声が庭から聞こえてくる。


 対してヒロは――というと。


「……あ、またやってる」


 庭の隅で、ヒロは空中に向かって話しかけていた。

 手を振ったり、指を動かしたり、時には笑いながらくるくる回ったり。


 俺と妻には何も見えない。

 ただ、ヒロが“誰かと遊んでいるように見える”だけだ。


「ヒロ、誰と遊んでるの?」


「んー? みんな!」


「みんな……?」


 妻と顔を見合わせる。


(想像力が豊かなんだなぁ)


 そう思うしかなかった。


 ただ、ヒロの魔法は確かに発現していた。


「ヒロー、リモコン取ってー」


「はーい」


 ヒロが手を軽く振ると、テーブルの上のリモコンがふわりと浮き、

そのままヒロの手元へ吸い寄せられた。


「おお……便利だなぁ、お前の魔法は」


「えへへ」


 空間魔法。

 物を浮かせたり、引き寄せたりする、珍しい属性。


 戦闘向きではないと言われたが、

日常生活ではとんでもなく便利だ。


 ただ――。


「ヒロ、危ないって!」


 ある日、庭に出ると、段ボール箱がふわふわと浮いていた。

 中にはヒロが入っている。


「みんなが運んでくれるの!」


「みんな……?」


 まただ。

 ヒロは“誰か”と遊んでいるつもりらしい。


 箱はゆっくりと庭を漂い、

時々ふらつきながらも、ヒロを落とすことはなかった。


 俺と妻は慌てながらも、

どこかで“この子はやっぱり普通じゃない”と感じ始めていた。


---


◆ 後半:ヒロ視点


 どうやら、お父さんやお母さんには見えてないみたいだけど、

 僕には“光の子たち”が見えている。


 庭には、いつも小さな光がふわふわしてる。

 丸かったり、細かったり、羽みたいにひらひらしてたり。

 僕はそれを“みんな”って呼んでる。


「ねぇ、今日は何して遊ぶ?」


 みんなはくるくる回って答えてくれる。

 言葉は分からないけど、気持ちはなんとなく伝わる。


「箱に乗るの? うん、いいよ!」


 僕は段ボール箱に入る。

 すると、みんなが箱を持ち上げてくれる。


 ふわり。


「わぁ……!」


 箱が浮いて、庭をゆっくり飛ぶ。

 風が気持ちいい。

 みんなと遊ぶのは楽しい。


 ときどき、みんなは僕の髪の上に乗ったり、

肩にちょこんと座ったりする。

 くすぐったいけど、なんだか嬉しい。


「ねぇねぇ、あっち行こうよ」


 僕が指をさすと、みんなはそっちへ飛んでいく。

 僕の言うことを聞いてくれるというより、

“遊びに誘ってる”って感じがする。


 お兄ちゃんのカイトは、火とか水とか風とか、いっぱい魔法が使える。

 すごいなぁって思う。

 火の玉とか、かっこいい。


「ヒロもやってみる?」

「う、うん……」


 僕は手を前に出してみる。

 でも火は出ない。

 代わりに、庭の隅にあったボールがふわっと浮いた。


「わぁ……!」


 僕は嬉しくなる。

 みんなも一緒に喜んでくれる。


 火は出ないけど、僕は僕の魔法が好きだ。


 だって、みんなと遊べるから。


「みんな、ありがとー!」


 光の子たちは、嬉しそうに跳ねる。


 お父さんやお母さんは、みんなのこと見えてないみたい。

 僕がみんなと話してると、ちょっと不思議そうな顔をする。


 みんなと遊んで、

物を浮かせて、

箱に乗って飛んで、

お兄ちゃんの魔法を見て、

またみんなと遊んで。


 そんな毎日が、僕は大好きだった。

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