最初の転生
周りから騒がしい声が聞こえてくる。
「ーーーーーー!!」
あー。うるさい。少しは静かにしてほしいもんだ。近隣住民の迷惑になるかもしれないだろうが!客観視もできないもんかね!
······。
気分が悪いな。
折角、早朝に起きて新規発売のレアカードを買おうと思っていたのに幸先が悪い。ここに来るまでに何時間かかって、どれくらいの電車を乗り継ぎしてると思ってるんだ。
······。
ところで何についてこんなに騒いでいるんだ?デモ活動があってもこんなに騒がないぞ?一体全体何が起こってるんだ?異常に暑いぞ!
·······。
そもそも何で俺は周りの声が聞こえないんだ?
「····ですか!?···丈夫ですか!?」
お、聞こえ始めたぞ。
「救急車!救急舎を読んでください!」
今度は女の人の声だな。
「キャァァァッ!!!!血が!!!!!」
血?
誰の?
あ、そうか。
俺、トラックに惹かれたんだ。
「さぁ、ここが何処かわかるかな?」
此処は何処だ?周りが白くて何も見えない。いや、どちらかというとめっちゃいい濃い霧がかかってる感じか。そんな中で聞こえた一言。
·······。
正直に行って、気分が悪いな。
声が何処から聞こえているかわからない。前から聞こえてるかもしれない、後ろかも、上かもしれない。
「君の脳内の直接話かけてるからね」
思考が読めるのか?まずい。エロゲーのことを考えていたのがバレてしまう。それだけは避けなくてはならない。
「そんなことをしても意味ないさ」
「藤野颯くん」
「再度聞くが、此処が何処かわかるかな?」
······。
「天国?」
俺は答えた。
「あながち間違っちゃいないかな」
「どちらかというと、そうだな...君の国の価値観で表すとするなら....」
少しの間があった。ここでは時間感覚も変わるのか?
「三途の川でボートに乗る直前かな」
「これから君にはボートに乗って自分の行きたい先に漕いでいってもらい形になるな」
ああ、そういうことね。
「蹋頓に聞くけど転生ってわかるかな?」
舐めるな。どれだけエロゲーやっていると思っている。
「ちなみに君が転生できる場所は一つしかないんだけどね」
三途の川云々の話は何だったんだ!
「そう怒るなよ」
「といっても、年代くらいは選べるんだぜ」
年代?思わず首を傾げた。
「そうさ。今から君が行く世界は魔法が使えるんだけど、その発展具合が年代によって大きく変わってるんだ」
例えばなんだろう。呪術とか霊媒とかか?エロゲーでもそんなぶっ飛んだ設定ないぞ。
「君の内に秘める世界はエロゲしかないのか」
「まぁいいさ。例えを出すなら、君の世界で言う芸術かな?彫刻になったり、油絵が主流になったり、デジタル絵が盛んになったりとか。そんな感じ。」
俺が少し考えている隙に。
「カードを触媒として魔法を使う年代もあるんだぜ」
俺は、見えもしない相手の顔を見るように上を向いた。
「そこしかねぇ!」
思わず声を出してしまった。
「···。さっきは敢て言わなかったんだけど現実世界に戻ることも出来るけどどうする?」
······。
そんなことより早く転生しようぜ。
「それもそうか」
「じゃあ、心の準備をしてね」
そういうと、俺の周りを囲んでいた濃い霧が青く光ってきた。体が段々熱くなって、さっきまで聞こえてたこえも遠のいて行くのがわかる。
あ、そうか。
これ。
死んだときと同じ感覚だ。