第69話
リリィとリーゼルさんと別れてサカラハ国に行くことにした。
リーゼルさんがリリィを止めたからだ。
これはサカラハ国になにかあるのをリーゼルさんが知ってるパターンだな。
海を渡りまた旅をしてようやく辿り着いたサカラハ国。
関所を渡ろうとして身分証を出すと、警備兵に怪訝な顔をされた。
「リツ•サハラ?」
慌てて奥の部屋に行き、肖像画を持って俺と見比べる。
「サハラ様!?」
「はい。リツ•サハラですけど……」
警備兵は飛び上がった。
「この国の始まり、サハラ様がいらっしゃった!」
それからは恭しく頭を下げて、良き旅をなんて言われる始末。
一体なんなんだ?
「サハラさんはサカラハ国は初めてですよね?」
「うん。全く心当たりがない」
とぼとぼ歩いて城を目指す。
すると城下町は派手に飾られていた。
なんだ?祭りでも近いのか。
「サハラ様がいらっしゃったぞー!」
一人が叫ぶと歓声が湧き上がる。
「ねぇ、ノイシュくん。このサハラ様って俺のことだよね?」
「そうですねぇ」
ノイシュくんは思考が追いつかず、半ば放心状態だ。
「さぁ、サハラ様とお仲間の方も王がお待ちです。城へお越しください」
「えっ!?えっ、あっ、はい!」
そのまま派手な馬車に乗せられてドンブラコ。
「サハラさんはこの騒動の心当たりはありますか?三カ国協議で停戦した時は活躍したと思いますが、ここまでとは……」
「俺だってこんなことになっているなんて知らないし……。人違いじゃない?」
「名前を確認されて肖像画まで見比べられたじゃないですか。でもあの肖像画、かなり古いもののような?」
「何それ怖い。昔から俺を知ってたってこと?」
そこまで話したところでサカラハ国の王城へ辿り着いた。
「ようこそ、サカラハ国へ!」
何が何だかわからないまま、案内される道を進むと、謁見の間に辿り着いた。
「ようこそ、サハラ様とイグニクスの第五王子ノイシュ様」
王が玉座からわざわざ降りてきて握手を求められた。
「我が国の伝説の方とお会いできて光栄です」
「それはどういう?」
「サカラハ国は、サハラ様のお名前からお借りして付けさせていただきました」
「……いえいえ、俺達、三カ国協議で初めて遠くからお見掛けしたくらいですよ!」
「実はそうではないのです」
サカラハの国王が首を横に振った。
「サハラ様は数千年前にもニホンからお越しになられました」
「えっ!?」
「それはどういうことでしょう?」
数千年前、この国が建国する際に今から未来のサハラ様が訪れてその叡智をお貸しくださいました。
まさかの未来の俺!?
じゃあ、俺は一度はこれから元の世界に帰っているのか!?
あまりに突然のことでびっくりしていると、ノイシュくんが再度問い掛けた。
「もう一度お尋ねします。それはどういうことでしょう?」
「言葉通りの意味です。数ヶ月前にお会いした時に我が国に伝わる肖像画とあまりに似ていて、名前まで同じでまさかとは思いましたが、時空の捩れとやらで時空間がおかしくなって数千年前の人間が現在でも再召喚されることがあるらしい。我が国ではそれがサハラ様、あなたです」
つまりこの世界の歴史的には未来の俺が数千年前に来て、また今、魔王と帳尻合わせの勇者として召喚されたものの多分時空の捩れとやらで三百年遅れたんだろう。
そういえば、道中は精霊王のセイや他のみんなもついて来てくれるってカシワギさんが言っていたのに誰も来てくれないなぁ。
なーんて考えていたけれど、そんな時、耳元で声がした。
「ちゃんと来ているぞ、リツ」
「セイ!」
声がした方を見るとセイがいた。
「セイ、とは?」
サカラハの国王はセイを見えないらしい。
「ええと、ここら辺に光の精霊王、セイがいます」
ノイシュくんが頷いてくれる。
「光の精霊王!?そのような方々ともお知り合いなのですか!?さすがはサハラ様です!」
「……あの、俺って建国に関係したとのことなんですが、そんな崇められるようなことしましたでしょうか?」
「しましたとも!過去の文献になりますがこちらに証拠が」
言いながらサカラハの王は側に仕えていた秘書官から古びた書物を受け取り、未来の俺が過去に成し遂げたという功績の数々を読み上げた。
えっ、まじでそれ俺がやったの?
今からの知識が過去に役立った的な?
……えっ、まじ?
ノイシュくんも俺の功績とやらを読み上げるサカラハ王と俺とを凝視して首を行ったり来たりしている。
「それで、我が国の恩人がこの地に何のご用でしょうか?出来うる限りお力にならせていただきます」
にこりとサカラハの王が言う。
「はあ、実はサカラハで信仰されている神とお会いしたいのですが」
「あなたですね」
「は?」
俺は『が』の口を開いたまま固まった。
「建国に尽力してくださったあなたを我が国では長年信仰しております」
にこにこ邪気のない顔をして、とんでもない顔をしている。
そのまま宴まで開かれて、俺達は途方に暮れた。




