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僕の荷造り

 僕はちょっと前まで反抗して、ここを出て行かないと頑張っていたけど……無駄な抵抗だった……。大人が決めた事は、ほぼひっくり返らない。


 お父さんとお母さんはお別れする。


 そんな事を聞かされたのは、静かにお正月を迎えて節分が過ぎた頃だった。理由は分からない。不倫とかではないようだけど……お母さんの気まぐれでわがままな所がイヤになった? お父さんの優柔不断でハッキリしない所にイライラした? 僕はあれこれ考えたけど、そんな事を考えても意味なかった。

 その頃、お父さんは転勤が決まっていて、お母さんも他のドラッグストアに異動になった。それで僕とお姉ちゃんの新学期のタイミングと合わせて引っ越しはあっという間に決まった。


 で、当たり前のようにお姉ちゃんはお父さんと、僕はお母さんと出て行く。

 元に戻るだけだ。お父さんはお姉ちゃん、お母さんは僕を連れて再婚したから。

 あ、正確に言うとお母さんは再婚じゃない。僕を未婚で産んでるから。だから僕にとってお父さんはお父さんしかいないんだよ。お姉ちゃんも同じ気持ちだった。産んでくれたお母さんがすぐに亡くなっちゃったから、この世ではお母さんはお母さんしかいないって……そう言ってたから……。なのに……。


 また二人の暮らしにもどる……4LDKから2DKの部屋でお母さんと……。元に戻るだけだ。

 じゃあ、荷造りを始めよう。


 プレステ、Switch……リビングで対戦したよね? お母さんはいつも負けて悔しがった。お父さんは僕とお姉ちゃんがケンカしながら対戦してると、いつも僕を応援してくれたっけ……。

 グローブ……お父さんとキャッチボールしたよね? はっきり言ってキャッチボールは意外とお母さんの方がうまかったりする。でも、お父さんとどうでもいい話をしながらするキャッチボールの時間、楽しかったよ。


 バスケットボール……お姉ちゃんの練習相手になってよく公園でドリブルをしたけど、全然上達しなくて……僕にバスケは無理だなぁ。後でお姉ちゃんにこのボール返してこなくちゃ。


 明日、僕とお母さんはここから車で一時間くらいの街へ引越す。お父さんとお姉ちゃんは新幹線で3時間の雪国へ行ってしまう。

 

 たったの四年だったね……。

 たったの? そんな事ないよ。二人家族だったのに急に四人家族になって……本当はお兄ちゃんが欲しかったけどお姉ちゃんでよかったよ……。

 これから先、またお母さんが誰かと結婚する時ってあるのかな? イヤだな……お父さんって呼ぶ人はそんなに何人もいらないし……。


 焼肉屋牛丸亭の割引券……回転寿司の魚二郎で貰った穴子寿司のフィギュア……机の引き出しからそんなもんばっか出て来るよ。

 キッズ携帯のマニュアル……来年5年生になったらスマホを持たせてくれるってお父さんと約束してたけど、お母さんは中学生になってからって言ってたからなぁ……。


 筆箱や下敷き、学校で使うものはランドセルに詰めて段ボールへ……。

 あ、本棚のガラスに四人で撮ったプリクラが貼ってある。去年のゴールデンウイークに出かけた時のやつだ。何だよ、四人ともめっちゃ笑ってるし。

 ベッド下の引き出しの洋服や下着は適当に段ボールに詰めた。でも奥の方から、もう着なくなったTシャツとかが出て来て……着なくなったものは捨てるように言われてたけど……あっ!

 ここにあったんだ……

 恐竜の柄のパジャマが出て来た。


 思わずじっと見てたら……お父さん恐竜とお母さん恐竜……小さな二人の子供恐竜……そうだ、恐竜の家族だったっけ。

 ああ……君たちはずっと一緒なんだね……羨ましいよ……。

 なんて呟いたりして……悲しいのにクスっと笑った。

 そして、そっと段ボールの中に入れた。

 明日は僕たち家族のお引越しだから……。

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

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