お父さんの荷造り
ある家族の「お引越し」の物語です。
全四話でとても短いので連載にするまでもありませんが、ゆっくり読んでいただけたら嬉しいです。
お父さんが会社に着ていくスーツを何着か段ボールに詰めている。
他には、普段着ていた部屋着と休みの日にどっかに出掛ける時に着て行くカジュアルな服……でもそんなにたくさんじゃない。
お父さんの部屋着は多分、他のお父さんよりも少なめだと思う。スウェットの上下は二枚くらいで季節ごとに上は長袖や半袖のTシャツになり、下は短パンになり、その短パンも二枚くらいだ。しかもかなり年季が入っている。お母さんが、もうそろそろ捨てたら? って言っていたけど、まだまだ着られるらしい。
出掛ける用のカジュアルな服も結構前に買ったもので、お姉ちゃんはダサいからいい加減に新しいのを買えば? と言うけど、僕はそれほどダサいとは感じない。だってお父さんは年齢よりも若く見えるし、背も高くてスタイルも悪くないし……。そうそう、素材がいいってやつ? そうだ、去年のお父さんの42歳の誕生日にお姉ちゃんとお小遣いを出し合ってシャツをプレゼントしたけど、勿体ないって言って全然着てくれなかったね……そろそろ着てよね。新しい家でさ。
でも、引っ越し先が雪国だからシャツよりもセーターをプレゼントすればよかったかな?
他には古い映画のDVD……若い頃に聴いていたCDとか……やっぱりそんなにたくさんじゃない。アルバムは三冊。このアルバムの中を僕は見た事がない。きっとこの中にはお父さんの若い頃から今までの思い出があるのかな……でも、最近は全部スマホで撮るから僕との思い出はスマホの中だね……。
あと、観葉植物はたくさんある。パキラ、モンステラ、ガジュマル……お父さんの影響で名前をたくさん覚えたよ。これは引越社の人が大事に運んでくれるよね?
なんて思いながらお父さんの荷造りを部屋の外から眺めていたら……
「ごめんな……」
寂しそうな横顔に、僕は何も言えずにただ首を横に振る。
だって、そんなリアクションしか起こせないんだよ。




