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来栖さんちの家庭の事情。……plus麻生さんち。  作者: 根岸佳孝


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15/15

第15話 おじいちゃんと人生の楽園。

今回で最終回です。お付き合いいただき、ありがとうございます。

 ――そんなこんなで、半年以上が経った、ある日のこと。


 私と騎士くん、そして由奈ちゃんは、みんなで一緒にあるテレビ番組を一緒に見るために、麻生家へとやってきた。


「――みんなーっ! もうすぐ始まるよっ!」

「おーっ、今行くっ!」

 ヒナちゃんの呼びかけに、その場にいるみんながリビングのテレビの前へと集合する。

 そして、みんなが画面を注目する中、そこで始まったのは――


「――人生には、楽園が必要だ。」


 そんなナレーションで始まる、主に定年後などの第二の人生を謳歌おうかしている人たちを取り上げるテレビ番組。

 今日は、おばあちゃんたちがやっている、古民家カフェが特集されるのだ。

 志摩さん、麗奈さん、ヒナちゃん、騎士くんと私、ともくんに……そして由奈ちゃん。

 すっかり「麻生家の七人きょうだい」のようになった私たちが画面をじっと見つめる。いや、由奈ちゃんはきょうだいというよりは、ともくんのお嫁さんか?

「――今日の楽園の主人公は、来栖聖羅(せいら)さん…………」

「おーっ、セイラちゃんかっわいいーっ☆」

 おばあちゃんをはじめ、カフェの仲間たちが紹介されていく。そして、その中に混じって最後に紹介されたのが――

「――今日のランチで腕を振るうのは、聖羅さんの夫の海彦さん」

「あっ、じーちゃんが出てるぞっ!」

「……海彦さん、ガチガチじゃないか」

「海ジィ、顔真っ赤―――っ!」

 テレビの前でガチガチになっているおじいちゃんを見て、心配そうな表情の志摩ちゃんと、大笑いしているヒナちゃん。 

 私や騎士くんに教えられて、すっかり料理にハマってしまったおじいちゃんは、時々おばあちゃんのカフェを手伝いに行くようになり、そこで腕を振るうようになったのだ。

 雑な炒め物しか作ることができなかったおじいちゃんの成長に、おばあちゃんは驚きつつも、目を細めて喜んでいるらしい。

 接客なんか無理っぽい感じのおじいちゃんだけど、お客さんにはその不愛想さと不器用さが、むしろ歴戦の料理人のような感じがして好評らしい。(ほんとは素人に毛が生えたレベルでしかないのだが)


 ――そんなおじいちゃんだけど、最近、もう一つ変わったことがある。


「海彦さん、すっかり忙しくなってしまったな。私たちがお願いしたことではあるんだが、もしかして刑事時代よりも働いているんじゃないか?」

「海ジィ、子どもたちに慕われて、すっごく嬉しそうだもんね。思った以上に向いてたよね、先生。マミーとシマ姉の言ったとおりだったね☆」

 そう。実はおじいちゃんは、刑事時代に鍛えた格闘技の腕を生かして、「麻生武道俱楽部」の先生として招かれることになったのだった。

 代表のヒメ先生や志摩さんをはじめ、女性講師の多い道場である麻生武道倶楽部の中で、男子に指導しやすい男性講師は貴重であり、重宝されているらしい。

 そして「元捜査一課の刑事」という肩書は、由奈ちゃんでなくても一般の人にはいろいろとロマンを掻き立てられるものがあるらしくって、特に小学生の男子たちからは「ボス」とか呼ばれて慕われているようだ。おじいちゃんも一気に孫が増えたみたいで、まんざらでもないらしい。

 そして、そういった子たちからおじいちゃんの話を聞いた、子どもたちの親御さんや家族から事件やトラブルなどをいろいろ相談されるようになり、実際にリフォーム詐欺や買取詐欺、オレオレ詐欺などの相手を追い返したり捕まえたり、時には探偵まがいの仕事をボランティアで引き受けたりと、私たちの知らないところで人知れず活躍しているらしい。

 大丈夫なのか? なんだかちょっと調子に乗ってない?


 そんなわけで、定年後、引きこもっていたおじいちゃんの生活は一変した。

 週の大半を道場の先生として過ごし、そして週末のカフェが忙しい時におばあちゃんを手伝いに行く。その合間合間に住民からの相談を受けてその解決に動く、という日々を過ごしている。

 休みなんてあってないような毎日だけど、でも、おじいちゃんは今の忙しい生活が性に合っているみたい。

 あ、ついでに言うと、今までロクに家に寄り付かなかった騎士くんが、時々家に帰ってくるようになった。……と言うか、おじいちゃんに命令されたのだ。「おじいちゃんがおばあちゃんちに行っている間は騎士くんがうちに帰ってきて、私のことを守るように」と。

 そのために騎士くんは自転車まで買ってもらったのだ。(私がいいなあってうらやましがったら私の分も買ってもらえた) 

 そして騎士くんは週末になるとえっちらおっちら自転車をこいで我が家に戻ってくる。そして、寮の先輩に教えてもらった料理をドヤ顔で私にふるまった後、月曜の早朝に我が家の食料をかっぱらって行って寮へとこっそり帰っていく。

 そんな騎士くんに、私はこのハイエナめと思いつつも、帰ってくるたびに新しい料理を教えてくれるので許すことにする。


 そんなわけで、ぎくしゃくしていた私とおじいちゃん、そして騎士くんだったけれどようやく、落ち着くところに落ち着いたみたい。これも、私たちを気にかけてくれた麻生さんちのみんなと、由奈ちゃんのおかげだ。

 血のつながらない「きょうだい」たちの思いやりが、血のつながった私たち家族のことを一つにまとめてくれたんだと思う。


 ――ありがとうみんな。これからもこんな私たちと、「きょうだい」でいてね――


「――それじゃあみんな、鑑賞会も終わったことだし、ご飯にしようか♡」

 番組が終わったところで麗奈さんがみんなに呼び掛ける。

 それを聞いた騎士くん、

「やっりぃ! 久々の麗奈さんのメシだぜっ!」

 と言って、飛び跳ねて喜ぶ。

「――あ、私も手伝います」

「それじゃあ、僕も手伝うよ」

 そう言って、キッチンに二人並んでとことこと歩いていく由奈ちゃんと、ともくん。

 ……なんだか、この二人が仲良く歩いているところを見ると、癒される。

 ホント、この二人って仲良しさんだ。

 そして、そんな二人の姿を見ながら、

「ほらぁ、騎士? アンタもちっとは手伝いなよ? アンタってば、作る方は得意になってきたみたいだけど、相変わらず準備とか片づけとかは気が利かないよね……」

 と、あきれ顔で言うヒナちゃん。

 すると、騎士くん、ソファーに寝っ転がったまま、

「だってさあ、こんなに人数がいるのにぞろぞろと台所に行ったって邪魔くさいだけじゃん? 俺はちゃんと考えた上で動かないでいるんだよ」

 そう言って生意気に屁理屈を言う。

「それに、そんなこと言ったら、シマ姉だってああやって座ったまま一歩も動いてないじゃん」

 すると志摩さんは顔を真っ赤にして恥ずかしそうに言う。

「それは……。私だって本当は手伝いたいのだが、私が手伝うと皿とか割ったりして危ないから動くなとみんなが……」

「……志摩さんって、しっかり者なのにそういうところ案外ドジっ子だよね」

「わーった。じゃあ、騎士は今は手伝わなくてもいいよ。その代わり、食べ終わった後の片付けは、全部アンタがやんなっ!」

「別にそれくらいだったらいくらでもやってやるよ。だって俺、皿洗いは得意だし」

 ドヤ顔になってそう言う騎士くんに、

「そりゃあまあ、あれだけ皿洗いでご飯食べてたら、得意にもなるわよね……」

 私があきれてそう言うと、志摩さんがそれを聞いて反応した。

「……ん? それってどういうことなんだ?」

「――あ、それはですね、志摩さん……」

 と、私が志摩さんに騎士くんのハイエナ生活の話をしようとしたところ――

「――わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ―――――‼」

 騎士くんが突然大声をあげて私の話をさえぎってきた。

「(小声で)セイっ! シマねぇに余計なこと言うんじゃねぇよっ! シマ姉に俺が皿洗いで飯を食ってるってことが知られたら、絶対食費はどうしたとか追及されるに決まってるじゃんっ! そんでもって俺が食費を何に流用したかとかがバレたらどうなると思ってるんだよっ⁉」

「……まあ、確実に根性叩き直してやるって言われて、道場に連行されて足腰が立たなくなるまで一日中修行のハードコース確定だよね」

「わかってんだったら余計なこと言うんじゃねぇよっ! って言うかセイ様っ! お願いだからシマ姉には黙っててくれよっ!」

「えーっ、どうしよっかなーっ?」

 ……珍しい。いつもマイペースな騎士くんが、めっちゃ、あたふたしている。って言うか騎士くんが私に頭を下げているなんて、ついぞ見たことがない。なんだか、ちょっぴり気持ちいい。 

「――ん? 何二人でこそこそ話してるんだ……?」

「えっ……、あっ、そのっ……」

 挙動不審な騎士くんの様子に何かを感じ取った志摩さんと、そんな志摩さんの刺すような鋭い視線に顔面蒼白になってしまう騎士くん。

 その時だった。

「――皆さーんっ! お食事の準備が、できましたよーっ!」

 由奈ちゃんがタイミング良く(悪く?)私たちのことを呼びに来た。

「ああ、今行くよ、由奈ちゃん」

 由奈ちゃんの声に、志摩さんは振り向き、そのままキッチンへと向かって行く。

「…………助かった……」

 その様子を見て、ほっとしてその場に崩れ落ちる、騎士くん。

「……どうしたんですか、騎士先輩? なんかものすごい顔、してますけれど……」

 そんな騎士くんに対し、心配そうな様子で声をかける由奈ちゃん。

 すると、そんな由奈ちゃんに、騎士くんは……。

「――ありがとう由奈ちゃんっ! ちょうどいいタイミングで呼びに来てくれてっ! いやーっ、ほんとにありがとうっ! 由奈ちゃん、君は天使だっ‼」

 そう言って由奈ちゃんの右手をがっしりつかむと、まるで選挙の候補者みたいに由奈ちゃんの右手をぶんぶんと振り回すように握手をする、騎士くん。当然、由奈ちゃんはそんな騎士くんの行為に対して困惑している。

「あっ、あのっ、どうしたんですかっ、騎士先輩っ⁉ そんなにおなかが空いていたんですかっ⁉ って言うか先輩。いい加減その手、放してほしいんですけど……」

 由奈ちゃんがそう言って困っていると、

「騎士くん……。女性の手を断りもなくいつまでもべたべた触っているのはどうかと思うんだけど……」

「――ともくんっ!」

 そこに、由奈ちゃんの騎士ややこしいであるところのともくんがなんだかものすごい形相になって騎士くんの後ろへとやってきた。

「いっ、いやっ、これはついっ……。って言うかトモ、お前、怒ってるのか……?」

 するとともくん、騎士くんの手を由奈ちゃんから引っぺがすと、その両手を後ろにねじり上げ、関節を動けないようにがっちりとホールドする。

「――いだっ、いだだっ、トモっ! ギブっ、ギブだってっ!」

「――あれーっ? 騎士くん。すっかり弱くなっちゃったんじゃないの? 前は僕のこんな技、簡単に振りほどけたのに……?」

 そう言って、笑ってない目で騎士くんににこやかに話しかけるともくん。

 ともくんって、かわいい顔して実は怒らせると結構怖いんだよね……。

「――それは俺が弱くなったんじゃなくってお前が強くなったんだってっ! て言うか、由奈ちゃんにベタベタ触ったことは謝るから放してくれよ―――っ!」

「あーあっ☆ 騎士のヤツ、トモを本気で怒らせちゃった☆ てゆーか騎士、マジでちょっと弱くなってない? 全然体にキレがないじゃんか……」

 それを聞いた私がヒナちゃんに言う。

「当然だよ、ヒナちゃん。騎士くんてば、最近はトレーニングさぼりっぱなしで寮の部屋でゲーム三昧なんだもん。弱くなって当然だよ……」

 すると、私のその言葉を聞きつけた魔王が反応した。

「…………ほう? それは聞き捨てられないな」

 私たちの話を聞いた志摩さんが、こちらへと戻ってきた。

「……おい、騎士。食事が終わったらあとで道場に来い。食後の運動に一つ、お前と手合わせしてやる。一人暮らしで鍛えられたお前の心と体の成長、実に楽しみなものだな(ニヤリ…)」

 志摩さんのその言葉を聞いた騎士くんは絶望的な表情になった。

「…………終わった……」

 

 半分以上自業自得とはいえ……。まあ、がんばれや。


 そして、その後私たちは、いつものようにキッチンに集まって、いつものように楽しく食卓を囲むのでありました。(約一名を除いて)


 みんながいる、にぎやかな食卓。――とっても、しあわせだ♡

 前書きにあるように、このお話は今回で最終回です。

 気づかれた方もいらっしゃるかもしれませんが、この話は以前に書いた『ゆな×ともっ!』のスピンオフ的な作品となっております。去年の夏に某所で書いたものの修正再掲載のような形になっています。

 本当は『ゆな×ともっ』本編の続きを書きたかったのですが、時間が取れなかったのといろいろ思うところがありまして、今回はこういった中途半端な形のスピンオフでお茶を濁すことになりました。

 はじめて読まれる方には不親切な話になってしまったことをお詫びいたします。


 さて、作中で書いたスーパーマーケット周りの描写ですが、これは自分の地元の下北沢の再開発がモチーフになっています。作中で「ピーフォール」としたピーコックのあった建物も去年にはまだ残っていましたが、今はもうなくなってしまいました。数年後には新たなビルが建つ予定ですが、果たしてその時には作中で書いた中華屋は戻ってくることはあるのでしょうか。あと、同じビルにあった三省堂も。


 それはさておき、お付き合いしてくださった方、どうもありがとうございました。次はもっともっと面白い作品を描けるようにこれからも精進していきたいと思います。

 それではまた、機会がありましたらお読みいただけると嬉しいです。


 根岸佳孝

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