ミッドナイト・シャッフル
ワールドカップ代表メンバーが発表された。実力がありながら怪我に泣く者、期待されてはいたが惜しくも選考に漏れた者と、様々である。4年に一度の世界的大イベントに、日本代表として26名のメンバーに選出されるのは、幸運の星のもとに生まれたと言ってよいだろう。
気力、体力、知力、もてるものすべてを振り絞らなければ、勝利の女神にそっぽを向かれる。強そうに振る舞う人物が強いわけではない。本当に強くならなければ、敗北が待ち受けるのみである。
深夜の談話室で、スリートップが円卓を囲む。
「いよいよだな」
決野は不動のライトウイングである。シャドウやウイングバックとは異なる。
「ウッス。四年なんかあっという間ですね」
千田はプロ二年目ながら、ゴールを量産し続けている。
「日本代表は軽く見られているようです」
世間の声と欧州メディアの評価とでは、乖離がある。
「そのほうがやりやすいぜ。変に持ち上げられてたら、悪いもんを呼び寄せちまう」
勝って当たり前のチームは、重圧とも闘わなければならない。
「また、こいつがかき回してくれますよ」
ノボルの実力を認めないことには、負け惜しみと言われてしまう段階に達している。
「左サイドだけでなく、コート全面走りますよ!」
ノボルの空間の使い方は、偏りを嫌う。
「ボルの動きを見てると、ハッとさせられるんだよな。かき混ぜることの重要性っていうのかさ」
その調子でハットトリックを達成してもらいたい。
「サッカー以外でも思うっスよ。組織の偏りから、ミルクコーヒーのとごりに至るまで」
いつも同じメンバーで固定するのも手だが、硬直してきたら替え時である。ミルクコーヒーは完全に均質になっていなくてもいいが、ミルクとコーヒーがマーブル状になっていたほうが千田は美味く感じるのである。砂糖は必ず入れる。
「畑を耕すのにも通じますね」
湖も人力でかき混ぜているところがある。琵琶湖を眺めると、詩が浮かぶ。
「お前の好きな逆立ちも、体内をかき混ぜるイメージだよな」
逆立ち健康法は即効性がある。馴れない人はいきなりやって怪我をしないように。
「アレは俺もやってるっス。普通に立ってるだけだと、悪いものが下に溜まる感じがするんスよ」
プロポーションの維持にも最適だ。
「ポジションもそれだけ激しく入れ替わったら、相手も混乱するだろうな」
味方も混乱するだろう。これはさすがにろくでもない結果になる。
「決野さんの車に乗せてもらったことがありますけど、三車線を上手に使っている印象を受けました」
「抜かしたいからって右車線ばっかりにいると、息苦しいんだよな。後続車に抜かれたとしても、真ん中や左車線も適度に使うようにしてるぜ」
高速道路をかき混ぜる決野。下手なサッカー選手は、ボールがあるところに群がろうとする。




