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【完結】花の聖女と秘密の庭 ~伯爵令息の溺愛スローライフ計画は成功しない?~  作者: ru
【第二章】聖女達の婚姻 ~王太子のセカンドラブは義務と責任から始まる~
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18.平和の図

 

 休養のような離宮での三日間が終わってからは予定が詰め込まれていた。

 リゼは今日も次から次へとあちこちに顔を出し、挨拶して回る。


 その間にダリウスの執務室で少し休憩していた。


 ダリウスとセドリック、それからいつもの数人の従者。

 知らない人の名前を覚えつつ次々と対応するプレッシャーからひと時解放されて、リゼはソファーでほっと溜息をついた。


「お疲れでございますね」


 セドリックが微笑み、わざわざ自分で紅茶を入れてリゼの前に置いた。


「ありがとうございます」

「少しでも気が安らぎますよう」


 ふわりと香りが漂う。セドリックの微笑みのように優しい香りだった。


「次は」


 ダリウスの声に、セドリックは懐中時計を見る。


「あと10分くらいしましたら来客があります。ベルロー卿とおっしゃる方ですね」


 書類を取り出してダリウスの机に置く。


「非公式に殿下にご挨拶したいという事ですので、このままこちらにお通ししようかと」

「休めないな……」

「殿下は居ていただければ結構ですよ。僕が話を聞きますので」

「ふむ」


 ちらとダリウスがリゼの方を伺ったような気がした。


「リゼは、不要ではないか?」


 その言い方にムッとした。

 確かに役には立たないだろうが、同席してまずい事でもあるのだろうか。


「殿下、その言い方は誤解されますよ」


 セドリックが場を和らげる様に笑みを含んだ声で言った。


「別室で休んでいてもいいと、言いたかったんでしょう?」

「そう言ったぞ」

「そうは言ってませんでしたよ」


 セドリックに笑顔で嗜められてダリウスは黙った。


「休むなら今だが……よいならよい。近くにいた方が都合も良いしな」


 そして不満そうな顔で付け足すように言った。



 ++



「急いでください」


 セドリックが時計を見ながらリゼ達を急かす。


 宮殿の渡り廊下だ。5分だけ、と言っていたのにベルロー卿は30分居座った。まだまだ居座りそうだったのをかなり無理にご退席願って、次の予定に向かう。


「大通りに人が集まっていますので、予定通り時間をかけて通りたいのです」


 セドリックは2人が街頭に顔を出す時間を優先している。この機会に、少しでもダリウスの人気を上げるのだという。

 そうは言っても、ヒールで走るのは無理がある。できるだけ早足で歩いていたが、横を歩くダリウスがもどかしそうにリゼの足元を見た。


「それは、……どうにもならんのだよな」


 舌打ちしそうな顔で言われ、リゼは気持ちが逆立つのを感じる。当たり前では無いか。私だってぺたんこの靴なら足は早い方だ。


「殿下、そんな事言わないでください。リゼ様申し訳ございません。私が急がせているばかりに」


 セドリックがフォローするが、ダリウスは眉間に皺を寄せる。


「お二人の仲睦まじい姿はこれからのシンボルとなりますので。……少しでも、お二人を民衆にアピールしておきたいのです」

「わかっている。俺たちは仲良くやってる。よな?」


 そのまま睨まれても何と返事をして良いやら。仲良くやっているとは言えないと思うのだが……


 と、思っていたら、ダリウスに引き寄せられた。


「な」


 そのまま軽々と抱え上げられる。


「アピールと、時間短縮になるだろう」


 ダリウスはリゼを抱えたまま、歩くスピードを上げた。

 お姫様抱っこ……ではあるが、こちらを見ないからだろうか。何でもないように軽々と持ち上げられているからだろうか。何だか物のように扱われているような気もする。

 ダリウスの頑丈な腕の中、どう言う心持ちが正しいのかわからない。

 ただ、体温の高いダリウスにくっついていると、夜を思い出してこちらまで熱くなってしまう。


「はは、殿下、意外とそういうことするんですね」

「うるさい、早く行くぞ」

「リゼ様は大丈夫ですか? なかなか絵になるのでそのまま馬車まで行ってしまおうかと思うのですが」

「え!?」


 このまま!?


「殿下に致命的に足りないのは可愛げなので」

「俺に可愛げ、いるか?」

「可愛げ、必要です。……殿下の方が、平和なのをわかってもらわないと」


 殿下の方が、と、セドリックは言う。

 もう一方はダリウスの兄、第一王子のヴァリオンだ。ダリウスに比べてスラリとしてスマートで、迫力が無い。その分身近に感じやすいとも言える。

 いつもどこかとりすましていて、リゼは少し苦手だ。


「確かにこれは平和の図だな。リゼ、協力しろ」


 ダリウスは心得たとばかりにセドリックに笑ってみせる。それからこちらにちらっと視線を寄越した。その目が少し愉快そうで、仲間に入れられたような気持ちになる。


「わかりました。見せつけて差し上げましょう」


 リゼはそう言ってダリウスの肩を掴んで身を寄せた。


「お前……意外と肝が据わっているな」


 ダリウスは驚いたようで、少し目を丸くした。


「あら、そうですか?」


 ダリウスから新しい表情を引き出せたのが何だか少し嬉しい。リゼも自然と笑顔になった。


 ダリウスは少し笑って速度を上げた。


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