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【完結】花の聖女と秘密の庭 ~伯爵令息の溺愛スローライフ計画は成功しない?~  作者: ru
【第二章】聖女達の婚姻 ~王太子のセカンドラブは義務と責任から始まる~
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11.喧嘩売りの聖女


「ごきげんようセレネ様、お久しぶりね、リゼ」


 コルネリアは以前より痩せた気がするが、相変わらず偉そうな態度だった。

 良く手入れをした白い肌。メイクで目を大きく強調している。補正下着の通りの完璧なボディライン、盛り上げた髪に胸元の開いた豪奢なドレス。


 聖女の雰囲気はカケラも無い。


「お久しぶりです、コルネリア様」

「まあ、リゼ。あなたも大変ね、エレナの尻拭いなのでしょう? あの子ちょっと不思議だったものね」


 相変わらずだ。


「ダリウス殿下ももっとお淑やかで女らしい、従順な子にすれば良いのに。エレナの次はリゼね。趣味がよろしいこと」


 ふふんと笑う。


「最近、ダリウス殿下は綺麗な側近をいつも引き連れているじゃない? 彼なんなのかしら。もしかしたらあちらが本命だったりして」

「コルネリア」


 セレネが静かに、威厳のある声を発した。


「あのね、この部屋にはエレナの親友もダリウスの母も、その側近の母も居るのね?」


 セレネの後ろに控えていたモンフォール夫人が静かに頭を下げて存在を主張した。


「全方向に、喧嘩を売らないほうがいいわよって、何回も言ってるわよね?」


 にっこりしたセレネは大変に威厳があり、リゼは確実にダリウスに血を感じた。しかしダリウスなど足元にも及ばない恐ろしさがある。


「あらごめんなさい、気づかなくて」


 そしてそれをスルーしたコルネリアを少し尊敬した。


「皆さまのお立場も考えず失礼しましたわ。そうですわね、私とは反目したくないですのもね、今日は私が控えるべきでしたわ」


 と、どこか見下したように全く反省せずに反省の弁を述べた。


「あの綺麗な側近、モンフォール家の方でしたわね。なんでもご結婚されるとか。お相手はどんな方なのかしら?ご夫人、教えてくださる?」

「男爵家のご令嬢だそうですわ。実は私もまだお会いしておりませんの」

「まあ!あなた家族に蔑ろにされているのね、お可哀想」


 どうやら全方向に喧嘩を売っていくコミュニケーションスタイルは貫くようである。

 モンフォール夫人はさらりと受け流す。


「主人は賛成のようですから反対のしようもありませんし。息子にどんな子なのか聞きましたら二時間惚気続けておりましたので、少なくとも、愛は、あるのかと」


 何げなく、愛は、を強調したのは意趣返しなのであろうか。

 セレネが口を挟んだ。


「あら、そうなの? あなた会った事ないの?」

「ええ、セレネ様。私がここ一年、長くお側を離れた事がありましたか?」

「そうね……確かに。でもその子の方からは挨拶も来ないの?」

「あらぁ、田舎者は非常識……」

「息子が人前に出したくないと。別荘に囲い込んで外に出さないようなのです」

「まあ、情熱的なのね!!」


 素敵だわーと、きゃっきゃとし始めたセレネと相対的に、口を挟み損ねたコルネリアは暗い目をしている。


「行ってきたら? あのセドリックがそこまで夢中なんて、私も気になるわ」

「セレネ様、その話はまた後に致しましょう」


 モンフォール夫人はコルネリアに気遣ったのかスッと後ろに下がった。


「今日はリゼの話を聞きたくて参りましたのよ」


 気を取り直したようにコルネリアは話し始めた。


「久しぶりに会えた若者同士で少しお話ししたいのですけど」

「まあ、おばさんはお邪魔かしら?」

「リゼも外に出てから聖女のお友達なんて居ないでしょうから、私がなってあげないと。セレネ様では話も合わない事もありますでしょう?」


 コルネリアは大胆にもセレネに出て行けという。セレネの笑顔が少し怖い。

 リゼは居たたまれなくなって言った。


「あの、セレネ様。昨日教えてくださったお庭の様子をぜひコルネリア様にも見せて差し上げたいです。コルネリア様、お庭を散策致しませんか?」

「あら陽の中を歩くなんて。日焼けしないように気をつけているの」


 コルネリアのために、外で二人になろうと言ったつもりだったのだが、打ち返される。どうしろと言うのだ。


「……日傘を差し上げますから、どうぞお庭へ」


 セレネが諦めたようにそう言って、用意するように合図した。






 コルネリアと二人庭に出る。蔓薔薇が絡む白いガゼボに案内した。


「ダリウス殿下はやっぱり見た目通りなのかしら」


 コルネリアは優雅に扇子で口元を隠して言った。

 どう言う意味なのだろうか。見た目通り、怖いかと聞かれているのだろうか?


「威厳のある方ですから気さくではありませんが、怖くはありませんよ」

「違うわよ、あの男、野獣みたいじゃない?」


 失礼な、と、リゼはムッとした。ダリウスは言葉は足りないが、根は誠実で優しい。と、最近は思っていたのだ。


「野獣、なんてそんな。確かに獅子のようと言われていますが、それは王のようなという意味で……」

「獅子も野獣じゃない。どうなの、野獣に抱かれた感想は」

「コルネリア様、それは」


 さすがに踏み込みすぎではないだろうか。


「こんな話、できる人いないでしょう? ヴァリオン様も毎晩とても情熱的だからちょっと疲れちゃって」


 意味ありげに流し目を送るコルネリアは、リゼに見せる様に胸元をめくった。そこには赤い痕がついている。リゼはなんだかわからず反応に困った。


「ふふ、わからないの? 可哀想、まだ可愛がってもらってないってことかしら」


 何か馬鹿にされている事は伝わってくる。痕がつくような事などされない。ダリウスはリゼの身体には、丁寧に優しく触れる。


 ……別に、して欲しいわけじゃないけど。


 ……それは、愛がないからなのだろうか?


「ダリウス様ってあのエレナに夢中だったんでしょう? ねえ、エレナってほんとに死んだの?」

「さあ……」


 もしエレナが相手だったら、そういう痕をつけたりしたいのだろうか。


「なあんだ。エレナがおねだりして、ダリウス様にリゼを娶ってもらったんじゃないかって、ヴァリオン様が言うから。二人仲良かったから、あり得るかもって思ってね」


 そんな馬鹿な、と思うが、ダリウスは、エレナが生きていてどこにいるのかを知っているようだった。そのうち会えると言われた。


「……そうなら、私も早くエレナに会いたいです」


 もし、もし本当にダリウスがエレナを囲っていて、私が選ばれたのはエレナのためなら、それは喜ぶ所のはずだ。私はエレナを探すために婚姻の話を受けたのだから。


 エレナが幸せならそれでいいし、そうで無いなら2人で逃げる算段をしてもいい。


 そう思って、リゼは微笑もうとしたが上手く出来なかった。


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