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【完結】花の聖女と秘密の庭 ~伯爵令息の溺愛スローライフ計画は成功しない?~  作者: ru
【第二章】聖女達の婚姻 ~王太子のセカンドラブは義務と責任から始まる~
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2.それは条件的には最適な


「真心とは、何であろう」


 翌日。リゼは教会へやってきたダリウスと向かい合った。


 聖女の顔を見ることができるのは王家の人間だけだ。なので従者も中に入る事はできない。部屋にはダリウスと、リゼと、神官が2人居るのみだ。


 これまで2回は何とも無い会話で終わっていたが、今日は難しい顔をして問われた。


「真心でございますか?」

「知っているだろうが、以前の婚約の儀でアルバローザが咲かなかった」


 婚約の儀式では、誓いの花であるアルバローザ・ブライドを、二人の真心と純潔を捧げる事で咲かせ、神に結婚を図る。

 真心と純潔といっても、3ヶ月ほど性交渉がなければ良いようだし、政略結婚でも咲く時は咲く。


 アルバローザは、二人で祈れば大体咲くのだ。ダリウスはエレナに惚れ込んでいたし、エレナも戸惑いながらも受け入れていた。なので誰も失敗するとは思ってなかった。


 それなのに、なぜか、誓いの花は咲かなかったのだ。


 エレナのアルバローザが咲かなかった事については、教会内では神が望んで王太子から取り上げたという事になっている。御伽話のようだがエレナならあり得そうな気もする。


 ダリウスは、真心とは何かと問う。


 ……なるほど、もう失敗はしたく無いと言うことか。

 それともまさかこの男は、エレナの真心が足りなかったとでも思っているのか。


「覚悟」


 リゼは呟いた。よくエレナが言ってた。


「添い遂げる覚悟だと、聞いたことがありますわ」


 ダリウスがふと目を細めた。

 そう言っていたのはエレナだ。そのくらいなら出来ているとでも思ったのか。

 リゼは見えないところで拳を握りしめる。


「しかし、私はそうは思いません」

「ほう」

「私は、……相手の想いを受け入れる覚悟、だと思います。その想いがなんであっても」


 リゼは、アルバローザが咲かなかった原因がエレナにあるとは思わない。

 だがもしも。もしもエレナの気持ちに問題があったとするなら、ダリウスを恐れていた事しか無い。


 何故あんなに見つめるのだろう、私に何を求めているのだろう、あの人本当に怖い、と随分思い悩んでいた。


 エレナの話を聞いただけだが、一方的に寄せられている好意を受け止められず、恐怖を感じているようだった。


 最後には覚悟を決めたと言ってはいたが、それは妃という立場に対しての覚悟で、ダリウスの気持ちに応える覚悟ではなかったと思う。


 でも私は大丈夫。リザは思う。


 目の前に座る王太子を怖いとは思わない。


 確かに体躯は大きく男らしく、愛想もなく尊大でぶっきらぼうでとっつきにくい男だと思うが、この程度は何とも無い。

 無遠慮にジロジロと見てくるが、地位のある男などこんなものだ。若くて見目が良い分ずっとマシだと思う。

 この男が私に求めている事があるとすれば、政治の邪魔をしない事と子を産む事くらいだろう。


 王太子が選んだのはエレナ、そして次はリゼ。

 2人の共通点は背後に政治の色がない事だ。


 エレナは教会で育った子で出自は不明。リゼは実は子爵家の令嬢だが、政治的なつながりは持たない家だ。

 エレナの後に王太子との懇談の場を設けられた聖女は皆、出身の家に政治色が無かった。


 エレナは本当に好かれているようだったが、リゼはその中でマシだったのだろう。もしかすると、エレナと仲が良かったという話を知っているのかもしれない。


 ダリウスから向けられる視線に情熱は感じられない。


 そう考えれば、この婚姻はわかりやすい。背後のつながりがない事が重要。言ってしまえば政略結婚だ。


「受け入れる、か」


 ダリウスは口元に手を当てて何やら考えていた。


「わかった」


 そう言ってため息を吐くと、真剣な目でこちらを見る。


「私は受け入れよう。それがどんな思いでも構わない。私はこの国を守る責務があり、そのために聖女を娶る義務がある。其方が私を受け入れる気があれば教えてくれ。今日はこれで失礼する」


 実質決まったような発言だった。


 突然の御指名に反応ができないリゼに構わず、王太子は立ち去った。


 確かに、「何で私なんか」と言っていたエレナの戸惑う気持ちもわかる。

 ダリウスは、自分で勝手に納得して説明もせずに結論だけ言うのだ。


 しかし、エレナの時はもっと強引に進んでいたようだった。


 最初にかけられた言葉が「お前にする。最短で準備せよ」だったらしい。エレナは「そういうものなのかしら」と呆然としていたし、リゼはそれはあまりにも傲慢ではないかと憤りを感じた。


 だが「其方が私を受け入れる気があれば教えてくれ」などと、今日はリゼの気持ちを待つような事を言った。


 少しは変わったのだろうか。それとも、エレナほど興味が無いと言う事なのか。多分後者だろう。


 それでも、リゼの答えは決まっている。


 エレナの手掛かりは、ダリウスしかないのだ。



++



 エレナの時はご指名から儀式まで3年もかかったが、リゼは3ヶ月で済んだ。


 リゼは領地を持たない貴族の出身だ。そのエリュシア子爵家は大文書館を代々管理しており、政治には一切関与せず、純粋に知識と文化の保護者として信頼されている。


 リゼはエレナと違って身元も確かで、教会に来た八つまでは貴族の令嬢として育てられていた。


 リゼはエレナと違って少女らしく、流行りにも礼儀作法にも興味があったし、エリュシア子爵家は女子にも教育を施し、賢くしっかりしていた。なのでエレナが苦労した最低限の教育は、すでに身についていた。


 実はエレナのお妃教育の講師役をしていたのはリゼだったので、やる前から内容も把握していた。


 リゼは、条件だけ見れば、最高の妃候補だった。


 そこにお互いの心が無いのも、代々の王家と聖女の婚姻に倣っていた。


 あっという間に準備は整い、婚約の儀となった。



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