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【完結】花の聖女と秘密の庭 ~伯爵令息の溺愛スローライフ計画は成功しない?~  作者: ru
【第二章】聖女達の婚姻 ~王太子のセカンドラブは義務と責任から始まる~
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1.リゼ


 バシャン、と、水が跳ねた。


 幸い分厚いベールを頭から被っていたので顔や髪は濡れなかったが、突然水を掛けられたという衝撃は気持ちの良いものでは無い。


「あら、いたの?」


 見上げると上から、空のバケツを持った先輩聖女のルイーザが見下ろしていた。

 リゼは濡れたベールを取る。ばさっと振ると、水滴が辺りに舞った。

 そしてルイーザににっこりと笑ってやった。


「暖かい季節で良かったですわね。今、私に風邪をひかせたらどうなるかしら」

「どうという事はないでしょ。風邪を引いた事にしたらいかが? お友達のように大聖女になりたくないのなら」


 明日は王太子ダリウスと懇談が予定されている。

 すでに3度目だ。1度目は顔を見に来ただけのようだった。2度目は当たり障り無い話をした。3度目は何だろう。


 王太子妃は聖女から選ばれる。リゼは今、その座に一番近いようだ。何人かに王太子は訪ねてきたが、3度目の懇談に進んだのはリゼしかいない。


 昨年、選ばれた聖女が婚約の儀で失敗した。そしてその後、神に召された……つまり、死んだ。大聖女として殉死したという事になっているが真相はわからない。


 しかし、王太子との婚約の儀がきっかけだったのは確かだろう。


 死んだ聖女、エレナはリゼの親友だった。


 エレナほど聖女らしい聖女をリゼは知らない。

 優しくて素直で純粋で、花が好きで、すこし浮世離れしていた。王太子妃の座を狙っている強かな聖女から、今のリゼのように色々と嫌がらせを受けていたが殆ど気づかず、リゼが怒っても、きょとんとしていた。


 そういえば今日みたいに水をかけられた時は、水遣りの邪魔をして悪かったわと、本心から言っていた。バケツに水を汲んで届けようとするから、「それは煽ってるからやめよう」と引き留めたのを思い出した。


 王太子に見初められて、ただただ困惑していた。何で私なんかとよく呟いていたが、リゼはそれまであまりよく思っていなかった王太子を見直したものだ。エレナを選ぶとは見る目がある。


 ダリウスは威厳があり他を圧倒するような雰囲気がある。エレナはダリウスに会う時はいつもビクビクしていた。

 でも、リゼが心配すると、「殿下は悪く無いの、優しくしようとしてくださってるし、私がこわがりなだけだから」と庇う。


 儀式の前日、大泣きするリゼに、死ぬわけじゃ無いんだしと笑ったエレナを思い出して、リゼは暗い気持ちで微笑んだ。


「そうですわね。私なんかでも大聖女になれるのならば本望だわ」


 リゼはルイーザを一瞥し、ベールを替えに部屋に戻った。


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