おまけ。キスとは
おまけです。
清純なところから一歩踏み出したところです。
こくりと頷いたエレナは目をぎゅっと閉じて顔を上げた。
何か重大な決心をしたように顔が強張っている。
何だろうこの可愛い生き物は。
怖がらせないように、引結ばれた赤い唇にそっと触れるようなキスを落とした。
触れただけで頭を引いたので、今度は逃げられないように頭の後ろに手を添えて押さえる。
そしてもう一度、唇で唇に触れる。
ふにっと柔らかい感触があって、セドリックの胸にジーンと暖かい気持ちと、ようやくここまで来たという達成感が広がる。
長かった。この屋敷で出会って、これが恋かと思ったときから10年だ。
教会から出てくる可能性は王太子との婚姻。そこから上手く搔っ攫うために手を尽くし、ようやく努力が実を結んだ。
華奢な体を抱きしめて、引き結ばれている唇を何度も啄ばんだ。
◆◆◆
エレナは真っ赤な顔で、髪を乱してハアハアと息を荒くしている。
ソファに押し倒された体制でセドリックを見上げる赤い目には、驚きと戸惑いはあるが、嫌悪は無いように見えた。
「ま、まって」
「ん?」
「わ、私が知ってるキスと違う……」
「ふうん。……エレナは誰かとした事があるの?」
低い声で言うと、ブンブンと首を横に振る。
「け、結婚式とかで見ただけで」
「あれは皆の前だから。このくらい恋人同士は普通だよ」
「ふ、普通……?」
「だから、ね? もう一回」
「え、」
押せばいける、そう感じて頬に手を添えてじっと見つめてみる。
「可愛いエレナ、どうか僕を幸せにして」
もうあと少しの距離で唇がつくくらいに近づいてから、頷いてほしくてそう促す。
エレナは少し考えてから
ちゅ
と、自分から小さなキスをした。
「!?」
「も、もう一回したから! これで終わり!」
ソファを転がり落ちるように、セドリックから抜け出そうとする。
逃がすわけがない。こんなことをして、火をつけるだけだとわからないのか。
「ひゃっ」
「なんでそんなに可愛いの……どうしたいわけ僕を……」
腰に抱き着いて捕まえる。そのまま膝に抱え上げて後ろから抱きしめた。
「もう終わり! もう無理!」
……これ以上はだめだ。もう何も考えられなくなりそうだ。そう感じてやっとの思いで自分の身をエレナから引きはがす。
エレナは拘束が緩んですぐに距離を取ってセドリックを伺っている。
「これでも、めちゃくちゃ我慢しているんだからね……」
大事にしている事を伝えなければと思いセドリックは言ったのだが、エレナはカッとさらに赤くなって、部屋から転がるように逃げて行った。
◆◆◆
ばたんと扉が閉まる。エレナはやっと逃れられたと大きく息を吐いた。
紳士だと! 紳士だと思ってたのに!!
優しいキスは最初だけだった。最初はふわふわと気持ちよかった。なるほど、想いあうというのは心地の良い事だと思ったのに。
あ、あんなに、人を食べ物みたいに……!
逃げられないようにして見下ろすやたらと甘い目、三日月形に笑んだ口元。
ーーこれでも、めちゃくちゃ我慢しているんだからね……
また、二人きりになったら……今みたいなキスを、されるのだろうか。
エレナはそっと唇を抑える。
嫌ではないのが、複雑な気分だ。
セドリックが年齢制限を気にしないキスなんてできるわけがない。
でも書きたい。
書いたら公開したい。
活動報告に続きについて書いておりますのでもしよろしければチェックしてください。
ありがとうございました!!




