46.セドリックの苦悩(自業自得)
あーーー
どこで失敗した? セドリックは頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜ部屋をウロウロしながら考える。
あれだ。上手く行ったと思って調子に乗って領にダリウスを誘ったのがいけない。
あのまま会わせなければ、そのうちエレナの気持ちが僕に向いて、ちゃんとプロポーズして、領地運営を理由にヴァル・フルールに引きこもって……とか考えていたのに。
領地で狩りをしようっていっても、別の場所にすればよかったのだ。わざわざヴァル・フルールの側にしたのは自分だ。
馬でなくて歩きにすればよかった。そうすればもっと村の近場で済んだのに。
なんで領地に彼女がいるなんて言ってしまったんだ。我慢すればダリウスに怪しまれることもなかったかもしれないのに!
怪我をしたときに、いっそとどめを……いや、それは良くない。ダリウスの事はエレナとヴァル・フルールと平和と父以外の家族の次くらいには大事に思っている。
せめてもう少しモンクスフードに近づけたら良かったか?
今考えても仕方がない事ばかりが頭をよぎる。
「ああああ!!」
とにかく今は、何とかダリウスの客室に……
そう思って扉をあけるが
「いかが致しました」
「……何でもない」
廊下に見張が立っていた。父には信用されていない。
どうしようかと思っていたら、こんこん、と、バルコニーからノックされた。
「は? ダリウス殿下?」
そこにはダリウスが憮然とした表情で佇んでいた。
慌てて招き入れる。
「誰も俺が、この家の隠し通路を熟知している事を知らんのだな」
「そうでしたね……」
「あの部屋、隠し扉があるだろう。そこから抜けてきた。そこなら見張はいない」
元気になったダリウスは屋敷中を遊び場にしていた。隠し通路も飛び移れる屋根も壁伝いに行けるバルコニーも知り尽くしている。
ダリウスはセドリックの部屋をぐるりと見回す。この部屋はかつてはダリウスがセドリックとして寝込んでいた部屋だ。
「セドリックの部屋、場所はそのままなのだな。物もあまり変わっていなくて懐かしい」
「あの、エレナは」
「俺の部屋だ。何もしてないから安心しろ」
「は?」
「意外そうな顔するなよ、権力と立場で好きな女を手篭めにするように見えるか? この俺が」
見えるか? と、言われると、見える。というか、そうしてると思っていた。
とは、言えないので、首を横に振る。
「今日は俺はここで寝る。お前はエレナの所へ行ってやれ」
しっしっと追いやるように手を振るダリウスは、拗ねているようにも少し誇らしそうにも見えた。
「あ、ありがとうございます」
「朝まであの部屋に居ないといけないんだと。朝また俺たちが入れ替われば良いだろ」
ダリウスはセドリックを憮然とした表情で睨んだ。
「……後で本当の話を聞かせろ。事と次第によっては許さんからな」




