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【完結】花の聖女と秘密の庭 ~伯爵令息の溺愛スローライフ計画は成功しない?~  作者: ru
【第一章】花の聖女と秘密の庭 ~伯爵令息の溺愛スローライフ計画は成功しない?~
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37.伝説の大聖女は今

 

 ぐるぐると考えていると、セドリックは静かな声で言った。


「……エレナ・フィオーレは、大聖女として神に召されたことになってる。君は、『エレノア・アッシュフォード』として、自由に生きていけるよ。だから、ヴァル・フルールにいてほしい」

「…? どういう事?」


 神に召されたって、……死んだという事? 処刑ではなく、大聖女?


「いや、僕も想定外だったんだ。エレナ・フィオーレは神が召し上げたためその体は花となり崩れ落ちたんだって」

「それは……経典に乗っているような、伝説の話では」

「エレナは伝説の聖女になっちゃったんだよ」

「え? なんで??」


 あまりにも突拍子もない話に困惑しているエレナに、セドリックは覚悟を決めたように言った。


「エレノアを、ダリウス殿下に会わせなきゃいけなくなってね……なので、全部話すよ」


 そこからの話は、あまりにも突飛で、エレナは怒ることも悲しむこともできず、呆然としていた。


 処刑の話はエレナを王宮から連れ出す嘘だった事。エレナが死んだことにしようとしたら、大聖女に祭り上げられた事。ダリウスがエレナを探している事。


「ど、どうしてそんなことを」

「……もしあのままだったら、良くて教会に幽閉、多分ダリウスの愛人だ。僕は、君を助けたかった」

「でも、それにしても」

「考えてみてよ。あの時処刑されると言う話が無ければ、君はどうした? 教会の言いなりになっていただろう?」

「……」


 確かに、あの時は教会で幽閉か……と、思っていた。愛人は考えてもいなかったが……


「ダリウス殿下は君が思ってるより、君に執着している。逃げ切るには死んだ事にするしかなかったんだ。……今までアルバローザが咲かなかった時、聖女がどうなったか知ってる?」

「……教会に留まったんじゃないの?」

「中にはそのまま、相手の側仕えになった人もいる。専属の加護持ちとしてとかね。つまり、それ、どう言うことかわかる?」

「……」

「つまり愛人だよ。王太子は他に聖女の正妃を迎えるし、貴族でも無いから側妃にもなれない。アルバローザが咲かなかったから、純潔か真心を疑われる。どう考えても幸せになれないだろ」


 セドリックは捲し立てるように話す。

 たしかに……その通りかもしれない。


 そもそも、あ、愛人って何するの……?


 ダリウスに組み敷かれた時の事を思い出してゾッとした。

 動かない腕や見下ろす視線の熱さ。

 想ってくれているのは分かるけど、怖かった。思い知らせてやろうと思っていたって、何をだ。


 エレナは無意識にセドリックに身を寄せた。

 セドリックは、いつも暖かくて優しい。


「それは……怖いわ」

「エレナ?」

「本当に怖かったの。……殿下は熱すぎて」


 エレナはあの眼差しと勢いと言葉を思い浮かべて言った。


「怖かった……熱すぎ?」

「熱もあったから仕方無いんだけど。強引すぎて……もう少し、優しく……」

「ま、まって」


 セドリックが焦ったようにエレナの両肩を掴んだ。


「何かされた!?」


 あ、ギースに黙っとけって言われたのに


「何もされてないわ。少し抱きつかれただけ……」


 そう言うと、ガバっとセドリックが抱きついてきた。


「セドリック!?」

「あのやろう。本当に手が早いな」


 低い声で呟く。セドリックに有るまじき口の悪さだった。


「……ほかは?」

「何もないわ、ベッドの上だったから」

「は? ベッド?」


 もう一段低くなった声に、何か墓穴を掘ったのはわかった。


「せ、セドリック?」


 こわごわと言うと、セドリックは慌てて手を離した。


「ごめん、つい」


 おずおずと、先程までのエレナに寄り添ったポジションに戻る。

 余りの勢いに驚いたが、抱きしめて慰めてくれたようだ。この前のお返しだろうか。

 心配そうにエレナをちらちらと見ている。


「ありがとう。セドリックなら、いいの」

「え?」


 それを聞いたセドリックは、真っ赤になると、片手で口もとを隠した。


「ああ、うん、そう」


 ゴニョゴニョと恥ずかしそうに呟いている。


「ということはさ、ということはだよ……」

「?」

「本気で()()()()も、大丈夫だと言う事?」

「何?」


 真剣に、エレナの目を見る。


「エレノア・アッシュフォードとして、僕の婚約者になってくれないか?」

「え?」


 エレナは突然のことに驚いて目を丸くした。


「ダリウスがエレノアに会わせろといっているんだ。ダリウスはエレノアがエレナだと気付いている。会ったら王宮に連れて帰ろうとするだろうね。でも、僕の婚約者であれば、無理にとはならないと思う」


 つまり、ダリウスの愛人にならないように、セドリックが婚約者の振りをしてくれると言うのだろうか。


「それは、私は嬉しいけど……」

「嬉しい? 本当!?」


 セドリックは飛び上がるように喜ぶと、そっとエレナの手を取った。


「大好きだよ、エレナ。絶対に幸せにする」


 そしてそっと手の甲に口付けする。

 ここまでノリノリになるなんて可愛いなと思い、エレナも乗っかった。


「ありがとう、よろしくお願いします」



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