13.セドリックは嗤う
大聖女エレナ・フィオーレの葬儀というか、神に召された祝福の儀式は、教会主導の下、ひそやかに行われた。
民衆には神に愛された大聖女が殉死したことは広く伝わったが、当然それが王太子に見初められた聖女だとは伝わっていない。
セドリックはその儀式の鐘の音を、ダリウスとともに王宮で聞いた。
ダリウスは臣下の前では祈りの姿勢をとったのみだったが、セドリックと二人になると椅子に深く沈み込み、長く黙禱していた。
おそらく心から、どこかで生きていることを願っているのだろう。
◆◆◆
大聖女として召し上げられた……事になったか。
セドリックは王宮の廊下を歩きながらひっそりと嗤った。
思ったより上手く行った。神官と駆け落ちし、野党に惨殺されたように見えるようにしたが、おそらくそれを信じた教会が保身に走ったのだろう。
あんなに愛していたエレナが自分を裏切っていたとの証拠が出れば、さすがのダリウスも諦め、下手に探さないだろうと思っていた。
遺体がないために、ダリウスは死んだことを疑っているが、もう探さないと言っていたので結果的には問題ない。
このように死んだとされれば、今生きているエレナはもう『エレノア・アッシュフォード』として認識されるだろう。
エレノア・アッシュフォードは身寄りのない男爵令嬢。人づきあいの悪い伯爵令息に見初められて、その領地の別邸で幸せに一生を終える。自然な成り行きだ。
ヴァル・フルールは、書類上は領内の村の一つに属する集落という扱いになっているが、実際はセドリックとセドリックが選んだ限られた人間しか知らない。外の情報も入らないようにしている。
エレナは、書類上はエレノア・モンフォール伯爵夫人として、何も知らずに幸せにヴァル・フルールで暮らせばいい。
エレナが聖女になるのは必然だろうと思っていた。そうなればダリウスが妃にと求めるだろうと言う事も予想ができた。
アルバローザが咲かない可能性があることを知っていたのはセドリックだけだ。なので、咲かなかったら拐おうと、手を尽くした。
セドリックが願った通り咲かなかった。花の神はセドリックにほほ笑んだのだ。
そして首尾よくエレナはセドリックの手中にある。
ああ、早く、ヴァル・フルールへ帰りたい。
ダリウスのお召しはいつ頃まで付き合えば良いだろうか。
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続きは明日投稿いたします。
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