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異世界に転生したけどファンタジーなのは俺だけらしい  作者: 三十六
フォート開拓村編

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095話 生活水準向上の為に 9

-サマリード領 フォート開拓村周辺域-


 牧場予定地の周辺からは肉食獣を追い払っておく必要が有る。この辺りは城周辺程の密度の森は無いが、狼や野犬の群れが縄張りを作っていると厄介だ。


 買い付けをして分かったが、家畜というものは思ったよりも高価なものだった。確かに医療技術や衛生環境が未発達なこの世界では当然の事で、俺の価値観や感覚が相当にズレているのだと良く理解出来る。

 そもそも牛を潰して食肉にする事が稀だ。近隣では俺の良く知る『ホルスタイン』が存在しない。牛と言えばあの白黒柄を思い浮かべるが、今回見せてもらえたのは茶色。多分『ジャージー』や『ブラウンスイス』の原種に当たる品種なのだろう。牛は乳を採るもので滅多に食べる事は無い。じゃあ雄牛はどうすんだ?って話だが、基本的に農作業の支援用で利用されている。

 現代的な感覚では牛は食用って印象が強いが、それは『肉用牛』として繁殖する専門業者が居たからだ。長い時間を経て交配し、研究された結果として出来上がった環境が大前提。現状では有り得ない。


 乳製品自体は昔から存在していてチーズやバターは珍しい食材ではない。サマリード領に居なかっただけで、王国内には酪農家が存在するらしく、トリスタンで普通に取引されている。

 徐々にだがサマリード領でも他領を見習って農業・畜産業・商業を進めていく。幸いにもフォートは酪農に適した場所だ。病気等はどうにも出来ないが、野生動物の襲撃による被害は準備することで避けられる。手間を惜しんで高価な家畜を失う様な事態には陥りたくないしな。


「もうだいぶ広い範囲を確認出来たと思うのだけど、もっと進むの?」


 狼などの縄張りは結構広く、凡そ3万~5万ヘクタール程度とも言われる。周辺地域の鹿などの草食動物の生息数に左右されるが、街一つより少し狭い程度と考えると相当な広さを予測した方が良い。


「移動しながら狩りをする動物ですからね。でもこのぐらい見ておけば大丈夫だと思います。安心は出来ませんけど」


 フォート周辺は植生が薄く、草食動物の餌になる木々が少ない。そのせいか鹿などの中型以上の生き物は姿をほとんど見かけない。当然、それらを糧とする肉食動物は生息していないと考えても良いだろう。

 いずれは柵で囲む事に為る。下見としてはこれで充分か。


「そろそろ戻りましょうか。どうやら雲行きが怪しくなってきましたしね」


 空模様が雨を知らせてきている。夜には降り出しそうだな。



-サマリード領 フォート開拓村-


 フォートに戻って建物に入る。ここは牧場の管理棟になる予定だ。


「降り出す前に戻れて良かったわ。でもこの天気じゃ戻るのは明日ね」


 王都から戻って以降、俺の外出制限が無くなった。相変わらず付き添いは必要だが、泊まりも数日なら良い事に変わったのだ。まぁ、あれだけの期間不在したので実績が出来たとも言えるか。


「雨の中で移動する方が危険ですから。とりあえずの食糧は有りますし、朝まで待てば止んでいると思いますよ」


 既に雨は降り出している。屋根に当たる音からすると雨粒が大きい。一時は強く降る感じかな。無理に戻ってもずぶ濡れになりそうだ。


 食事の用意を別段しなくとも保存食を常に携行しているので一晩程度なら何も問題は無い。城から出かける場合には不慮の事態も考慮して、最低限度の干し肉ぐらいは荷物に入れる事にしている。


「燻製肉もだいぶ美味しくなったよね。前はあんまり好きじゃなかったんだけど、最近はタニアも良く食べてるの見るよ」


 いや、君らのは『飲んでる』って意味じゃないのかね。主に酒のアテとしてんでしょ。まぁ、気に入ってるならいいか。


 元々、村には燻製所が有ったんだが、少しだけ俺が手を入れた。冬場の保存食を作るのはどこでも重要で、魚の干物や燻製肉は村人たちの生命線だ。勿論、季節に限らず常時稼働している施設ではあるのだが、その割には作り方が雑だったのが気になった。

 昔から皆がやってきた手法に少しだけだがコツみたいなものを加えた。塩漬けの仕方や乾燥のさせ方、使う木材の選択に燻す時間。作業内容は似たようなものだが、それぞれの工程に気を遣えば出来上がりは当然違ってくる。


 以前は何となくその都度使っていたのを、今では数人で一手に引き受け、専門業者のように造ってもらっている。老人でも可能な作業内容だし、全体的に質が上がったので受け入れてくれた。いずれは商売に繋がれば良いなと考えての事だ。ロコナ村には特産物と言える物が無い。少しずつでもこうした工夫で材料を揃えていかねばな。

 フォートまでの林間にはスモークチップとして優秀なホワイトオーク、ブラックウォールナットが沢山有るので、上手く活用していきたい。この木材は樽材としても使える。その内、酒の作り方も見ておきたいところだ。


「あ、アルも連れて来てたんだね。少し濡れちゃってるかな?暖炉点けるからこっちおいで」


 メリッサは手招きしつつ薪の準備に向かう。建屋の中には暖房用の薪も既に集められている。この辺りも寒いからボンデ達が気を利かせてくれたのだろう。

 エクスは軒下で外を警戒している。本格的に降ってきたな。軽く見回って帰るつもりだったので今回はメリッサと二人で馬で来ている。無理せず素直に泊まって明日の朝に出るのが良いだろうな。

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