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異世界に転生したけどファンタジーなのは俺だけらしい  作者: 三十六
フォート開拓村編

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096話 開拓村の騒動 1

-サマリード領 フォート開拓村-


「漸く雨も上がったし、これで戻れそうだね」


 一晩中降り続け、朝方になっても雨脚が弱まっただけでなかなか止まなかったが、やっと出発出来そうだ。この辺りは気候の特性も有って長雨というのは珍しい。基本的に短く降って直ぐ止むので、一旦雨が上がれば降られる心配は無い。


「それじゃ、馬の様子を見てくるわ。何も無ければさっさと出ましょ」


 メリッサは暖炉の火を消すと外へと出て行く。結構強い雨だったのに全く雨漏りしなかったな。ボンデ達の技術は大したものだと感心する。雨宿りついでに泊まっただけなので特に片付ける物も無い。火が消えたのを確認して外へと向かう。


 扉から出るとメリッサが厳しい表情で遠くを睨んでいる。何だ?


「メリッサさん、どうかしましたか?」


「柵の辺りに人影が見える。こっちに来る素振りは無いけど隠れて出て来ない」


 視線をそのままに状況だけを短く伝える。これは本気で警戒しているな。彼女が狩猟時に見せる遊びの無い雰囲気だ。


「数はどの程度でしたか?」


 俺は即座にエクスを向かわせる。別方向にも居れば囲まれる。アルも建屋裏から索敵に出した。


「確認出来たのは5~6。多分もっと居る」


 声から緊張が伝わってくる。結構な人数が居るのか。街道までは然程の距離も無い。馬も手元に有るから離脱は難しくないが、ここの施設を占拠されると困ったことになる。


「逃げるだけなら問題無くやれそうですが、後が面倒そうですね」


「村の皆が総出で作り上げたんだ。簡単に明け渡したりしないよ」


 目が座った彼女は実は結構怖い。普段の雰囲気とはガラリと変るのだ。伊達に自警団の副長を務めている訳じゃない。既に手には弓を持って準備している。


「もう少しだけ様子を見ましょう。アル達で周囲の索敵をさせていますので」


 囲まれているなら距離を詰められる前に離脱する一手だ。立て籠もるにしても相手の勢力が分からないと方針が決められない。


「分かった。急いで」


 もうすぐエクスの視界に入る。今のところアルで見回った範囲には人影は無い。包囲の心配は無さそうだ。しかし、賊なら雨が上がる前に仕掛けて来そうなものだが。たまたま今のタイミングってことなのか。


 メリッサの言った通り、柵の外側には人が隠れていた。全部で十人以上は居る。あの位置から見付けるのは凄いな。彼女のスカウトとしての技量は相当なものだ。


 よくよく観察してみると人数は居ても皆一様に痩せて元気が無い。襲撃準備って感じには見えない。疲れ切って座り込んでいる者も居るから隠れて休んでいるのが実態か。となればこいつらは賊ではないな。誰も得物らしいのは持っていないし、とりあえず警戒の必要は無さそうだ。


 反対側にもアルが到着。どうやら彼らだけの様だ。俺から見て左側にエクス、右側にアルと三方から確認する。柵の外側の連中は全部で二十名強。ん?子供が混ざっている?軽装で碌な手荷物も無い。旅をする恰好ではないな。何だこいつらは?


 とりあえず賊の襲撃じゃないのは確定したが、どう対処したものかな。今の状況が見えているのは俺だけ。隣のメリッサは臨戦態勢のままだ。現地を見てもいないのに『どうやら襲撃じゃ無さそう』とは伝えられない。むぅ・・・。


 ウゥゥ・・・ワゥワンワン!ウワォォォォン!


「ひぃぃ!」「うわぁ!」「いやぁ!」


 一斉に両側から吠えたてると驚きの余りに悲鳴が上がった。混乱して蹲っている者、泣き出した者も居る。しかし、走って逃げ出す様子が見られない。相当に消耗している事が伺える。既にそんな体力も無いのだろう。


「うん?子供の声がしたね。様子を見に行こうか。どうも思ってたのとは違うね」


 メリッサが臨戦態勢を解いた。襲撃ではないと判断したらしい。


「周囲には他に居ないみたいです。しかし、何でこんなところに人が居るんでしょう」


「直接聞くしかないね。私にも分からないよ」


 俺達は一応の警戒をしつつもアル達の元へと急ぐ。二人共武器は持ったままだ。


「私達は手向かいはしない。この犬達を下げてくれないか」


 彼らの中から一人歩み出て来た。両手を上げて抵抗の意志が無い事を示している。声からすると女か。恰好はボロボロ、髪も雑に纏めただけで全体的に薄汚れている。年長者という感じではないが、こいつが代表者と見て良いのだろう。


「貴方達は何者ですか?村の敷地に勝手に入れば警戒されるのが当たり前ですよ」


 アル達を傍に戻して警戒させる。メリッサは少し離れて俺の後ろ。射線を確保しているのは何か有れば躊躇いなく撃つ気だな。


「それは済まなかったな。だが一先ず私の話を聞いて貰えないだろうか」


 地面に両膝をつき、両手を広げて掌をこちらに向ける。何も隠し持たず、直ぐに動ける体勢でもない。ここまでする相手を無碍にも出来まい。他の連中は分からんので警戒を解く訳にはいかないがな。


「良いでしょう。私はマリーナ・サマリード。ここの領主の娘です。お話をどうぞ」


 とりあえず事情聴取だな。内容の真偽は兎も角、聞くだけは聞いてやろう。

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