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異世界に転生したけどファンタジーなのは俺だけらしい  作者: 三十六
王都武芸大会編

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62話 王都への道のり 5

-シンタック手前の森-


「どこのどなたかは存じませんが、私らはご覧の通り山賊に襲われている最中でして、宜しければご助力願えませんかね。もちろん報酬はお支払いします」


 彼がこの商隊の主か。この状況で交渉とは、なかなか胆が据わっているな。


「関わるつもりは無い。我らはこの先に通れさえすればよい」


 相応の報酬を出すとも限らないのに手伝う謂れは無い。ただ働きは御免だ。


「貴方も襲われますぞ。共に賊徒を追い払いましょう」


「面倒事に巻き込まないで頂きたいな。彼らの狙いは貴方達だけやも知れぬではないか」


 現時点ではどちらの味方もする気は無い。勝手にやり合えばいいのだ。


「おぉい、そこの黒鎧の姉ちゃん。威勢が良いが状況分かってるか?正気か?」


 山賊側から何人かの下卑た笑い声が聴こえる。小馬鹿にしている言い方だな。


「口の訊き方が為っておらぬな。我らに敵対する気か?黙って大人しく道を空けろ」


 少しイラついたので怒気を孕んだ口調になってしまった。馬鹿は度し難いな。


 不意に俺目がけて矢が飛んできた。手で軽く打ち払ったが避けねば肩口に当たったな。


「後で可愛がってやるからそこで大人しくしてな。今は相手をしてられんわ」


 また下卑た笑い声が幾つか聴こえたな。どうやら言葉では伝わらないらしい。


「今のは我らへの敵対行動と見なす。神の御許で己の愚行を悔いるが良い」


 俺は御者席から飛び降りると山賊が篭る森へと駆け込んだ。同時に忍者での襲撃を開始する。木立を飛び回り上から襲ってくる忍者への対処など彼らには出来ない。


 俺は木の陰に上手く入る様に動いて一人ずつ仕留めて行く。森の中では弓など役に立たない。槍などの長物も使いにくい。俺の様に小手に爪を付けるか、短剣で戦う方が強い。

 人数が居たところで連携出来なければ意味が無い。短時間で十人程に数を減らしたところで彼らも森では不利だと悟ったらしい。一斉に道路上へと移動して行ったが、傭兵達が見逃すはずも無く挟撃されて次々と討たれていく。最後にリーダーらしい奴が残ったが、既に息も絶え絶えで止めを待つのみといった様子だ。俺を相当強く睨んでいる。


「てめぇ、何モンだ。俺らに盾突いてタダで済むと思うなよ」


「お前がここで死ねばタダで済む。相手を良く見て喧嘩を売るべきだったな」


 捨て台詞に付き合ってやる気は無い。拾った剣を一閃して首を飛ばす。森の中では撃ち漏らしが無い様に忍者で周囲一帯を索敵して回っている。隠れて逃げ延びた奴は居ない様だな。これで山賊は全滅したはずだ。


「もう馬車を動かせるだろう。早く道を空けてくれないか」


 呆然としている傭兵達にそう言って、俺は山賊の死体から水筒を探す。折角の装備が汚れてしまったので洗い流したい。元が黒いので目立ちはしないが腰布の部分には結構な血が掛かってしまった。まぁ、こういった事態も想定してのタータンチェックだ。兜の飾り羽根も紅色だ。洗えばそれ程の違和感は無いだろう。



 鎧を軽く洗い流して馬車の御者席へ戻る。少しばかり時間を余計に食ったが、この程度なら予定通りにシンタックへと着けるはずだ。もうしばらくは俺が御者をして、適当なところでミランに交替しよう。


 目の前では商隊の者達が横転した馬車を起こしている。あの程度の損傷なら、速度は出ないが自走は可能だろう。道路が空くまでもうしばらく掛かりそうだな。

 御者席で所在なく待っていると傭兵の一人が軽く手を振ってこちらに歩いて来た。


「大した腕だな。俺はワーレン、傭兵をやってる。この商隊の護衛に就いてたもんだ。あんたの加勢がなけりゃ今回はヤバかったよ。感謝する」


「結果的にそうなったが助けたつもりはない。奴らが敵対してきたから排除した。それだけの事だ。相手の力量も察せない様では、長生きは出来なかっただろうがね」


 相手を舐めて掛かった結果が全滅だ。あの手の連中はどうせすぐ死ぬ。


「怖いねぇ、あんたが相手側に見えたら真っ先に逃げる事にするよ」


「私は敵対してきた者達しか相手にしない。だから戦うことにはならないだろう」


「ほう、それじゃ今はどこかの護衛ってところか。その馬車に居るのはお貴族様かい」


「答える必要は無い。それと私は傭兵ではない」


 少し驚いた顔をしたが、彼は人懐っこそうな笑顔で覗き込んで来た。


「へぇ、あんたの腕なら稼げそうだけどな。じゃあな、助かったよ」


 道が空いたので馬車を進める。適度に進んでミランと交替せねばな。



 しばらく進むと小さな川が有ったので、馬に水を飲ませるついでに馬車を停めた。

 アル達を一旦馬車まで戻し、マリーナの装備に素早く着替えて御者席を降りる。


 後方に回って扉を開けると心配顔のミランが飛び出してきた。


「マリーナ、怪我は無い?何か嫌な目に遭わなかった?酷い事されてないよね?」


 出て来るなり抱き着いて離れてくれない。そういやミランだけは俺と狩猟や訓練をした事が無いからな。タニアとメリッサは俺がそこそこ強いのは知っている。とは言え、俺の無事な姿を見て二人共安心した様子ではある。


 ミランが落ち着くのを待って御者を任せる。アルのモフモフ感がミランは好きな様で、鎮静剤の代わりになると言ってしばらく抱き着いていた。エクスを先行させているので問題は無い。

 先程までと同様にアルを追う形で速めに飛ばす。二度目の遭遇が無いとは思うが油断はしないでおこう。さっきの商隊があそこまでは無事に来ているのだから、道路には問題が無いはずだ。


 シンタックまで着けばタジク領内。つまり王家の領地だ。流石に盗賊が出ることも少ないだろうと思われる。脱いだ鎧の手入れをしながら、マイネル司教が王都の発展具合を褒めていたのを思い出した。どの程度のものか、早く見てみたいところだな。

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