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異世界に転生したけどファンタジーなのは俺だけらしい  作者: 三十六
探求編

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44話 技術水準向上の試み 3

-サマリード領 製材所-


 今日は製材所で水車が組み上がったとの連絡を受けて実物を見に来ている。


 予想以上に早く出来上がったな。直径は4mをやや超えるぐらいか。この水車が動くようになれば製粉作業と簡易的な水道が使えるようになる。村での生活ではかなり役に立つことだろう。


 村の住民には具体的な説明をしていない。トーラスにだけは概要を掻い摘んで話してある。特に反対もせずに工事の許可は出してくれたので、興味が有るのかは分からない。


 これは村の船着き場の脇に建設中の水車小屋に使われる。ドラン達が水車用の土台と小屋の基礎工事を進めており、あちらが完成次第、運んで組み上げる段取りとなっている。


 水車の横には俺が追加で頼んだ筧が沢山並んでいる。これが後で水道として構成されるものになる。利便性がどの程度上がるかはやってみてから判断するしかない。


 木工師達には今は歯車を手掛けてもらっているところだ。いずれ量産することになるのであれば俺が作っては意味が無い。クランク機構については理解してもらえたので、今後は彼等の応用力に期待しよう。

 

「話には聞いていたし、他の町に在るのは知っていたが、俺達には作る機会が無かった。今回やってみて構造は理解した。次からはもっと早く出来上がるはずだ」


 ラムタークはどこかで見たことが有った様だ。まぁ、この領地に無かっただけで時代的には珍しくない物だ。確かに用途を知らなければ作る動機にはならんか。概ねの設計図も俺が作って渡したわけだし。効果が分かったらすぐ次を作ることになるとは思うがね。


 水車は揚水機として使われる物でもあるから、農業や畜産業を手掛けるなら必須の技術になる。いずれは上下水道の整備や、発電技術の土台にも利用することを考慮すると発展の鍵となる基幹技術とも言える。普及することで大きく変化するだろう。


「川に近い地勢なので、あと幾つかは欲しいところです。引き続きお願いします」


「承知した。優先的に仕上げる様に皆に伝えておく」


 他にも手掛けているはずだからこちらの対応ばかりする訳にもいくまい。彼等が新しい技術を習得してくれるのが一番の目的なのだから、急かす必要は無い。


「クレーンの進捗はいかがでしょうか。設置の際に間に合いますか?」


「だいぶ進んではいるようだ。ボンデも頑張ってはいるがもうしばらくは掛かるな」


 完成は難しいか。水車の設置はこの大きさでは相当な力仕事になる。クレーンが間に合うことが望ましいが、無理なら別の方法を考えておかねばならんな。

 前回使った懸架装置でも出来ないことは無いが、あれを使う場合は別に高めの土台を作る必要が出て来るのでその分の手間と時間が掛かる。後でボンデ達の進捗具合を確認しておこう。



-ロコナ村 水車小屋予定地-


 水車小屋も建設途中だ。現状6割程度といった状況らしい。簡易図面は渡してあるが、基本的に改変は任せている。水車は製材所でほぼ出来上がっているので、小屋側の建設待ちである。

 今日は建設現場の実情を確認するため、タニア達と一緒に村まで来た。


「で、これが完成したら何が出来るんだい?いろいろと楽になるとは聞いているが」


 俺達の前ではドラン達が土台工事をしている最中だ。水車の土台は既に完成している。


「詳しくは言っていませんでしたね。中の仕組みにも寄りますとしか言い辛いです」


「マリーナが考えてる使い方はどんなのよ?」


 タニアもメリッサも村での収穫作業はやったことがあるはずだ。


 そもそも自警団の者はほとんどが村出身者で、収穫時期には手伝いに戻る。収穫後の作業が一段落したら戻ってきて、警備や狩猟に従事する。そういう不文律が出来上がっているのだ。それだけ手間の掛かる内容であるのは間違い無いが、非効率が過ぎる。


 俺がやりたい事を進めるには人手が必要だ。そのためには効率化して人手が要らない状態を作らねばならない。加えて俺の言う事を聞いておけば得が有ると認識させることが肝心だ。そうでなければ重要な働き手を借り出すのは難しくなる。今手掛けている一連の効率化は俺が進める事業の土台でもあるのだ。


「そうですね。収穫後の作業だと脱穀とか籾取り、粉挽き等はかなり楽になります」


「ほう、楽になると言うがどの程度の話なんだ?」


「どの程度と言っても・・・全部手作業であれば100倍ぐらいは早く済みますね」


「100倍って・・・想像出来ないけど要は早く済むよって見込みの話よね?」


 メリッサは半分冗談というか、大げさに言われていると受け取ったようだな。


「具体的に言うと、脱穀なら20人で1週間掛かるのが4人で3日で終わります」


 実際はもっと早いだろうが、概ね100倍ぐらいになる計算だ。作業自体も楽な内容に変わるので苦労の度合いは相当減ることになる。


「お嬢の話が本当に実現出来るのであれば、随分と助かるが。何とも言えないな」


「うん、私も。疑う訳じゃないけど、そうなる理屈が分からないからなんだろうね」


 今までの経験で端から疑うことは無いが、そのまま信じるのも難しいと。この二人がそう思うってことは他の者は与太話としか受け取らないということだな。

 こればかりは実際にやって見せるしかないのだろう。


「力仕事の大半は楽になりますよ。信じるかどうかはお任せします」


 特に効果が著しいのは単純作業だな。皮工みたいな大きな圧力が必要な分野もそうか。


 維持管理のし易さを考慮すれば複雑な仕組みは避ける方が良いだろう。

 水車の数が必要になるが粉挽小屋・脱穀小屋として用途別に建てるべきかもな。



-ロコナ村 中央広場-


 村の広場の一角に大きな木製の木桶が設置されている。長さ3m幅3m深さ40cmといったところ。注文通りの良い出来だ、流石だな。腰から膝の高さで土台に支えられ、周囲には簡単な造りの椅子が幾つか置かれている。


 村の住人は訝しげに眺めているが、これは俺が依頼して作成させた水桶だ。設置が済んで、今は筧の配置をしている。勾配の具合を合わせる作業で若干手間取っているところだ。


 この水桶が何かというと洗い場だ。毎回川辺でしていた作業を村の広場で出来る様にするため、水道を作っている。今回の水車には木桝を付けて揚水機能を加えてある。水車で揚げた水を筧で水桶まで流す仕組みとなる。水を溜めたり流したりは水桶に付けた水門の開閉で調節可能だ。流しっぱなしでも溢れた水は筧を伝って川へと合流する。

 どうせ水車を作るなら水道もやってみようと今回準備したわけだ。

 

「メリッサさん、もう一度上から水を流して下さい」


 角度が急過ぎると水が脇に流れ出てしまう。傾斜角度と曲がる角度に注意しつつ延長していく。

 朝から始めたのに、何とか形になったのは陽がだいぶ傾いてからだった。ほぼ設計通りに仕上がったので、大きな変更は無かったのが良かった。

 

「お疲れ様でした。これが上手く機能すればかなりの効果が有るはずです」


「洗い場をここに持ってくるとはね。便利になるけど、すぐ壊されそう」


「そんなに脆くは作っていませんけど、用途外で使えば確かに壊れますね」


「うん、子供はここに入って遊ぶんじゃないかな。その程度は十分予想出来るよね」


「それをどうにかするのが村長さんの役目でしょうね。壊れたら後は知りませんよ」


「マリーナは直してあげないの?」


「そこはボンデさん達の出番になるでしょう。維持管理は彼等の仕事ですからね」


 インフラ的な物は作成時だけでなく維持管理も十分な技術が要るものだ。新たに造るよりは直しながら使うことが前提になる。


 一旦便利な環境に慣れたら以前の状態には戻れないものだ。始めは目新しいだけだが、使えなくなると非常に不便に感じる。基幹技術であればその感覚はかなりのものになる。少し前はこうだったなどと言う言い訳が通用しない。便利さを体験して受け入れてしまうと余程の事が無い限り後戻りは出来ないのだ。


 特に共用インフラにはルールやモラル的なものが利用者側に求められる。決まっていなければ共同体の首長が作れば良い。それも役割の一つだろう。


 俺に出来るのは最初にひな型を示す事だけだ。それだって簡単な事ではないがね。後は使っている者達から出て来る不満点や改良点を鑑みて、より良い物として発展させればいい。ボンデ達には十分な向上心が既に在るので対処出来るだろうと思っている。

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