45話 武芸大会へ向けて 1
-リベスタン城塞 領主の部屋 ゼベット-
「ふむ、興味が無いと言ったか」
ハミル様の私室に呼ばれるのは久しぶりの事だ。今は先日のご指示について、ご報告を申し上げているところだ。内容はマリーナ様に大会について聞くこと。ご自身の娘であるのに何故直接お尋ねにならないのか。困ったお方だ。
「はい、武芸は本筋ではないと仰られました」
マリーナ様は非常に優れた方だ。ご自身の有り様を明確に自覚されている。
「しかしゼベット、お前の見立てでは十分上位に食い込めるとのことだったが?」
「既に私と同等か、ある面では私を凌ぎます。充分にお強いのは確かです」
ハミル様は12歳そこそこの娘に何を求めておられるのか。
「それほどに武芸に優れるのであれば、より大きな舞台で試したいと思うだろうよ」
「ハミル様、お嬢様にとって武芸とは嗜みを超えるものではないのです」
強いからといって皆がそこに重点を置くわけではない。それに彼女の場合は結果として強くなっただけなのだ。初めから武芸者志望ではない。才能は非凡だが武芸そのものに興味が有る訳ではない。
「もったいない事だな。しかし、本人にその気が無いのに無理強いも出来んな」
大方、マリーナ様の強さに肖って少しでも自領の名を上げたいのだろうがな。
その様な気概の無さが領民から慕われていない原因の一つであると、この方にはご理解いただけないのであろうな。残念なことだ。
-リベスタン城塞 マリーナの部屋-
ゼベットとの稽古も今は大して得るものが無い。そのため頻度を落として、月1回程度にしている。理由は武芸はもう十分ということで、特に不審がられる事は無かった。
メリッサに弓術稽古を頼んでいたが、既に一緒に森の狩猟で腕の上達を図っているので稽古としては終了している。もっぱら体術のみ、自習で研鑽しているのが現状だ。
そんな状態なのでゼベットから中央の武芸大会に出るかと聞かれる事には非常に違和感を覚えた。12歳から資格が有るらしいが、俺が武芸にそこまで興味を持っていないのは彼に理解されていると思っていたからだ。
もちろん、適当な理由で断っておいた。出ろと言われても出ないがね。
わざわざ多くの目線に曝される状況に自分から行くとか有り得んわ。
しかも、仮に1勝でもすれば最年少の女の子という事実だけで注目の的になる。この部分は負けても変わらんかもな。どちらにしても怪しすぎるのは間違いない。
中央都市に行くこと自体に興味は有るが、現段階ではその必要が無い。
今後は年齢が上がるに連れて、余計な外との関わりが増えて来るかも知れない。
リベスタン城塞に篭っている分には大丈夫だと思うが、注意は払っておこう。




