表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転生したけどファンタジーなのは俺だけらしい  作者: 三十六
探求編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/457

40話 生活水準向上の為に 2

-リベスタン城塞 マリーナの部屋-


 サマリード領にはカシムーン領ほどの農場が見られない。

 基本的に自給自足の生活であり、森が近いこともあって狩猟で何とか賄えてしまう。川から魚が獲れ、森から木の実や果物が獲れ、兎や猪も自警団の連中が狩ってくる。自分たちが食べる穀物が作れていれば特に困らないというわけだ。


 ナスルマ教が清貧を謳っているということもあり、足りていれば十分という考え方に大半が疑問を持たずに生活している。もっとも、これはほとんどの住民が村の外を知らないが故の認識でしかない。

 今後も彼らが貧しく穏やかであれば領主の治世は楽だ。だが領民がそんな状況を望むだろうか?事実、一部の人間は他の町の状況を知っている。比較し、間違いなく不満に感じているはずだ。


 どんな人でも衣食住の水準は上げたいと思うはず。過度な贅沢は別の話だが、快適な水準を求めることは何も悪いことじゃない。

 他は知らんが俺は快適で居たい。それに、自分の周りの人達には快適に暮らして欲しいと思うのだ。少なくとも、すぐ南に行ったところの町と同程度の生活はしてもらいたい。


 そうでない場合、皆に劣等感からの卑屈さが染みついてしまう。これは無意識に活力を奪っていくので領主なら絶対に避けなければならない状況だ。特に子供に顕著に悪影響が出る。彼らの感受性は大人達の空気を感じ取り、自然と同じ色に染まっていく。


 この悪循環を止め、変えるのは個人には荷が勝ちすぎる。そのための領主だ。

 変化に伴う諸問題を解決するのは間違いなく面倒事で、正直旨味は少ないかも知れない。苦労の割に成功するとも限らない。そんな中で進んで何かしようとは考えまい。失敗の不安が勝てば現状維持を続けるのは当然の選択とも言える。


 俺はハミルが悪いとは思わない。自分に突出した才能とか自信が有れば別だろうが、更に領民に負担を強いた結果が何も得られず終わったら?その恐怖を超えて賭けに出られなかったら現状維持しか選択肢が無い。これも悪くならないための選択と言えるのだ。


 俺はこの世界では例外だ。どうするのが正解か知っているのだから。解答を片手に試験をしているようなものだ。

 俺は自分の快適さのために我慢はしたくない。だから生活環境の改善は出来るだけ実現しておきたい。多少便利になったところで大した影響は無いのかも知れないが、やって見せることで皆の意識が刺激出来れば良いのだ。


 俺一人で出来ることはたかが知れている。でも今以上に便利で快適な生活があることは見せてやれる。どこまで手掛けられるかは分からんが、出来るだけのことはしてみようと思っている。幾つかでも実になれば充分な成果だと言えるだろう。


 それで皆に欲求が生まれ、生活水準向上を求める空気が生まれれば十分。後は俺が居なくても勝手に発展していく。彼等の欲が後は引っ張ってくれる。

 そこまで来れば、後は俺が居る必要は無い。彼ら自身で豊かになれるはずだ。



-自警団詰所 会議室-


 何にせよ、多様な作物を作るには畑を広げる必要が有る。

 畑を増やすには開墾しなければならない。その為には人手が要る。

 勿論、開墾した後もその畑を管理する誰かが居なければならない。


 ということで、タニアに相談しているところだ。

 自警団はそもそも村で余った労働力の受け皿でもある。人手を捻出出来るところは領内ではここしか無い。


「開拓ねぇ。確かに暇を持て余し気味の連中は多いけど、気が乗らないねぇ」


 タニアの反応は芳しくない。まぁ、当然だろう。


「実際は労役じゃないか。それは領主の仕事でマリーナのすることじゃないね」


 そう考えるのが自然だな。しかし、今の領主がやるわけがない。このままではサマリード領に住まう者が豊かになれる道筋は生まれないだろう。


「確かに初期投資は必要になりますが、所謂労役ではありませんよ」


 俺の言葉に彼女は怪訝そうな顔をしている。ここからは彼等には無い考えかもな。

 

「開拓した畑は自警団で使います。城にも村にも渡しません」


 俺の考えは自警団に企業としての顔を持たせようということだ。

 

 領内の警備を請け負いつつ、独自の財布を確保すべく別の事もやる。半官半民の組織というわけだ。

 実際、そのうちに出来上がる温泉施設も領主にくれてやる気など無い。いずれは自警団で管理運営する施設となる目論見で進めているのだ。

 そもそも領内に自警団と対抗出来る組織が存在しないので、横槍が入る心配も無い。


「考えたことも無かったけど、大丈夫なのかい?勝手に私らがやってさ」


 利益の数%も支払う仕組みにすれば問題になるまい。他の町にも商会ぐらいある。

 領主からすれば代わりに領地経営をしてくれているのと変わらないからな。収益率が低くなるが主導しなかった奴が悪い。


「領地開発を放棄している方が悪いのです。私達で好きにやらせてもらいましょう」


 雇用の確保も重要な課題になるからな。いずれは必要な事だ。


「とりあえず皆にも聞いてみるよ。でもあまり期待はしないでおくれ」


 今一つ理解し切っていない顔だな。最初から人が集まるとは思っていない。俺だけでも始めてみるつもりだしな。進捗は遅くなるが不可能ではない。


 俺も後半年ほどで12歳になる。ゆっくりと見ていられるような余裕は無いのだ。ただでさえ手間も時間も掛かる。躊躇っているよりは、手を付けてしまった方が踏ん切りが付くというもの。始めてしまえば何とでもなるものだ、多分な。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
え?流石に現代人なのにあり得ないと思ったが資本主義のままの感覚で貴族社会の法や道徳をガン無視してるの???
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ