30話 技術水準向上の試み 1
-自警団詰所 食堂-
似たような物が有ってもそうなる理屈を知らないと工夫出来ないものらしい。
「何だいこれは?井戸にあるつるべに似ているけど、違うようだね」
タニアは俺が書いた図面を見て首を傾げている。まぁ、予想通りの反応かな。
俺が書いているのはクレーンだ。動滑車と定滑車を組み合わせて枠で動作を制限する。使うロープや支える構造物の強度に依るが簡単な造りでも2~4倍の力を発揮させることが出来る。
動滑車の動きを制御するのは少し工夫が必要だが、人が持てる重さが限界重量と考えれば負荷や摩擦もそれほど問題になるまい。擦り合う個所に薄く金属板を張るだけでも効果は有るだろう。
「私も良く分からないなぁ。でもこれが使えると便利になるんでしょ?きっと」
メリッサはさっき作ったポテトチップスが気に入ったようで、ずっと食べている。
このまま一人で食べ尽くしそうな勢いだな。少しは自重しろ。
少し待っているとボンデが食堂に入ってきた。
「何かまた作るって聞いてきたんですが。あ、これ俺も食べていいです?」
苦笑いのタニアを尻目に二人で食い始めた。『どうぞどうぞ』って作ったのお前じゃないよな、メリッサ?まぁ、いいけどさ。
「今回の物はいろいろと応用が利くので、慣れたら数を作ることになると思います」
俺は机上に図面を広げて見せた。ボンデは俺の横に来てじっくりと見ている。
「これはどこに設置するつもりかな?何かを釣り上げる仕組みに見えるけど」
流石だな。すぐにどんな目的の物か分かるらしい。頼もしい限りだ。
「その通りです。桟橋に作ろうと考えています」
今見せているのは固定式の巻上げ型。港湾で良く見るタワークレーンを模した物だ。
木製なので大きさは5m程度になるだろう。
ちなみに大型のクレーンはかなり昔から存在する。そもそもクレーンが無ければ城郭など作れるはずが無い。問題はその理屈と仕組みを理解している者が少ないということに尽きる。
「応用が利くってことだけど、どんな感じにしようと考えてる?」
「そうですね。小型化して荷車に備え付ける様になれば便利かと思っています」
要は小型木製の積載型クレーンを作るつもりだ。現代でもトラックに積載型クレーンを付けた車両(所謂ユニック)は沢山使われている。需要は有るだろう。
ボンデは満面の笑みで俺を見ている。少し興奮気味かな?
「いいねぇ、最高だ。是非協力させてもらおう。面白くなってきたなぁ」




