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異世界に転生したけどファンタジーなのは俺だけらしい  作者: 三十六
探求編

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29話 商業都市の大商人

-自警団詰所 応接室-


 前回会ったアモットが来ているとのことで自警団に来ている。予告通り、別の商人を連れて来たようだ。前回同様にダンが護衛らしい。

 応接室に入ると中には身なりの良い初めて見る男が居る。こいつが例の目利きだろう。


「ご無沙汰しております、アモットさん。こちらが前回仰っていた方ですか?」


「はい、マリーナ様にお伝えしておいた通り、詳しい者をお連れしました」


「トリスタンで服飾店を構えております、モルダーです。よろしく」


「初めまして、マリーナと申します。よろしくお願いいたします」


 なるほど、地味だが仕立ての良い服を着ている。高そうな生地だな。

 俺は手早く前回見せた箱を展開し、取り易いように包みを開けた。


「では早速拝見致します」


 手袋を付け、専用のモノクルで細部までじっくりと観察している。

 観察が済むと窓辺に立って陽に翳している。どうやら専門家なのは確かなようだ。ネックレスとイヤリングの両方を丹念に調べ、作業が終わると丁寧に元の位置に収めた。


 手袋を外し、手を顎に当てて考え込んでいる。査定を始めた様だ。

 モルダーの真剣さに俺もアモットも一言も喋れない。身動ぎもせずにしばらく待った。

 

 しばらくしてモルダーが口を開いた。


「こちらを手掛けたのはどちらの職人でしょうか?私は聞いたことがありません」


 質問の意図が掴みかねるな。何が聞きたい?


「申し訳ありません。ご質問の意図が分かりかねます」


「サマリード領にこれほどの腕を持つ職人が居るとの話を聞いたことが無いのです」


 今も居ないぞ、作ったの俺だしな。それがどうした?


「腕の良い彫金師は少ない。狭い業界なので両手の指に収まる数しかいません」


 そういうものか。まぁ需要もそう多くなさそうだからな。


「どの彫金師にも作風があるものですが、これにはそれが見えない」


 そうか、確かに芸術品でもあるしな。人真似になっていなくて良かった。


「これを作った方を紹介していただけませんか?もちろん紹介料はお支払いします」


 何故そうなる。アモットが非常に困った顔をしている。おい、目を逸らすな。


「前回お断り申し上げた通りです。私からは何もお答え致しかねます」


 冷静に、穏やかな口調で断ると、モルダーは何とも口惜しそうな表情だ。


「そうですか・・・中には表に出ることを嫌う方がおられることも承知しております。では今回は、そうですね・・・金貨500枚でいかがでしょうか」


 何だと?アモットが目を剥いて驚いている。予想外の展開になってきたな。



「是非とも、次回も私にお声掛けをお願いします」


 モルダーは何度目になるか分からん同じ台詞を言って去って行った。来月には準備が出来るそうなので、こちらからトリスタンに赴くことになる。


 良く事情を聴いたらあの値付けは納得出来るものではある。彼が望んでいたのは専属の販売契約だ。ただでさえ少ない優良彫金師、その作品を自分の店で独占販売出来れば彼等としては相当な宣伝効果だろう。まだ作品が少ないとなれば更に希少価値が有る。


 マハルの大店には専属契約を結んでブランド化に成功したところもあるそうだ。現代でいうシャネルやブルガリと同じ様な仕組みだな。あれだけ執着するのも頷ける。

 まぁ、気が向いたらまた作ってやろうかな。

 

 アモットとは彼が帰る前に別の話をした。カラムには馬市場が有るとのことで、2頭程頼んだのだ。

 人気が高いのはハクニー等の中間種。乗って良し、牽かせて良しの万能型。次は個人が乗る専用の軽種。アラブ馬なんかがそうだ。

 俺が欲しいのはペルシュロン等の重種だ。農耕馬もこのカテゴリだ。道産子なんかが該当する。

 速度はそれ程でもないが大きめの馬車を牽いたり重馬鎧を着せたりするには大型の重種が適している。稀に軍用にも用いられるようだ。


 次に来る時に何頭か連れて来ると約束してくれた。用途を教えたら馬用装具も幾つか持って来てくれるらしい。即金で支払えないと言ったら後払いで構わないとのこと。確かに大金が入ってくるのは知ってるからなぁ。領主の娘なら逃げられる心配も無いか。商機判断としては正解だな。帰り際にダンがいい顔で笑ってたな。あいつ絶対いい奴だわ。



-リベスタン城塞 車庫-


 ようやく改良馬車の素材が揃いつつある。木材はボンデ経由でもらえるようになったのでだいぶ予定が早まった。どうもマルターク本人が協力してくれているらしい。

 理由は分からんが助かるのは間違いない。対価として支払える物が無いのが辛い。


 そして俺が何をしているかというと、車庫の中でひたすら中綿の座布団を格子縫いしているところだ。結構やったので手際は良くなった。何度もしたい作業ではないが。


 土台に載せて革で覆ってみるが全く安定しない。試行錯誤の結果、マット部分を別に作って載せることで解決した。薄い木板を底にし、畳み込んだ座布団を革で覆ってしまう。ズレない様に浅く枠を作って置けば十分固定出来る。

 背もたれは単純にマットを薄めにして壁面に張り付けるだけだ。ベンチ状にして乗ってみたが弾力は思ったよりも有る。そのまま寝ても大丈夫そうだ。本人の重さ次第では感じが違うかも知れん。


 部品が出来上がる度に不具合が出て、修正しての繰り返し。素人仕事なんだし、こんなもんだろう。やっていく中で案外と解決策も思い付くものだ。

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