25.5話 ユメナのコイ
「パパとママはね、ほんとうは兄妹なの」
それは、昏い昏い記憶の底に焦げついた言葉だった。
「ママには親友がいたの。すごく好きだった、幼馴染の女の子。その子のためならなんでもできるって思ってた。その子がイジめられてるときは助けに行ったし、怒られてるときはかばいに行ったわ。その子もママのことがすごく好きで、いつもふたりでいたのよ」
楽しそうに話すママ。
だけど次の言葉は、低く沈んでいた。
「でも、その子はママのお兄ちゃんのことを好きになった。お兄ちゃんもその子のことを受け入れた。ふたりは中学の頃から付き合いだして、大学生になってもずっと愛し合ってたの。ママはふたりがそれでいいなら、かまわないと思ってた。ママもお兄ちゃんのことが大好きだったけど、それを言うのはとても怖いことだったから、ずっと黙ってたのよ。
だけどある日、親友のその子が事故で死んだのよ。ママの目の前で、車に轢かれて死んじゃったの。すぐに病院に搬送されたけど、息を引き取ったわ。ママはどうしようもなかった。ただ見てるだけだった。大好きなその子のために、なにもできない――そう思って、立ち尽くしてた。
だけど、ふとその子の遺体を見てたら思ったの。
体を交換すればいいんだって。
そのときはもう、ママも大学生だったから、自分の体がなんか変だってことくらいわかってた。でもその体の異変の正体までは知らなかったのよ。だけどそのときになってようやく、ママは気付いたの。
ママはね、そのとき自分の首を取って、彼女の首をもらったのよ。背格好がすごく似てたから誰にも気付かれなかったわ。抜け殻になったその子の体とママの首は、ふらふらとどこかに歩いて行った。そのあと別の車に轢かれて死んだわ。まるで証拠を残さないかのように、トラックに轢かれてぐちゃぐちゃになって死んだ。
それから、ママはその子のふりをして生きた。奇跡の復活を遂げたかのようにふるまってね、その子のフリをしてたわ。……もちろん、とっくに死んでたその子の意識は、どこにもないけれど。
ママは死んだその子を利用して、お兄ちゃん――パパに近づいた。
パパはママを抱いて、ようやく気付いたわ。もちろん初めは気味悪がって拒絶された。
だけど何回も何回も説得して……ようやくママのことを認めてくれたの。
そして打ち明けてくれた。
パパも、昔からママのことが好きだったって。
あの子と付き合ったのは、そんな自分を否定するためで、ママのことを妹としてちゃんと見るためだったって。
……そうしてね、パパとママは夫婦になったの。兄妹だけど、夫婦になった。
だから夢、あなたが恥じることはないのよ。
お兄ちゃんが好きだという気持ちは……血がつながったひとしか愛せないのは、ママたち家族全員が同じなのよ。ママとパパがそうだったように、夢もひかりも、もちろんお兄ちゃんだってね。
だから夢、負けちゃダメよ。
あなたはなんでもできるすごい子なんだから、あんなできそこないの妹に負けちゃダメ。
お兄ちゃんに好きになってもらうためにがんばりなさい。
ママとパパは…………夢の恋を、応援するからね」
ママとパパが応援してくれている。
なら、お兄ちゃんを好きでも変じゃない。
ひーちゃんはそんなの変だって言うけど、間違ってるのはひーちゃんのほうだ。
だから、だから……………………
「お兄ちゃん……夢菜のこと、好き?」




