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ポメラニアンは種族です

 僕はポカンと、その動かなくなった巨体を眺めた。

 黒焦げにならなかったのは、硬い外殻のおかげだろうか。少し白っぽくなっている気はするけど。

 殻の隙間から蒸気が上がっているので、中はかなり高熱だと分かる。

 ダンゴムシの丸蒸し。

 ムシだけに。

「いや!いやいやいや!」

 僕は頭を横にふった。ダメ、ダメだ。こんな所で前世の親父ギャグなんて!

 ポメラニアンはワンワン鳴きながら、自分の獲物を確認するようにダンゴムシの周りを回っていた。うんうん、強いねー。こんなにかわいいのに。

 心臓がバクバクしている。あんなバカでかいダンゴムシが突進してくるとか、恐怖でしかない。

 僕は立ち上がると、服についた草や土を払った。あー、本当にやだ。虫嫌い。あの沢山ある脚とかさ、ゾッとするよね。絶対見ないけど。

 さっさと立ち去ろうとポメラニアンの方を見ると………え?何でダンゴムシ虫に飛び掛かってるの?止めなさい!ばっちいから!

「え?ちょっとポメってば!」

 ポメラニアンは外殻の端を咥えて、引き剥がした。それを僕の方にズルズルと引き摺ってくる。

 いや、持ってこられても困るから!籠に仕舞わないよ、そんな物!

「ポメ!置いて!ダメだよ!」

 僕の声にポメラニアンは足を止め、小首を傾げる。虫なんポイしなさい!

 理解したのか、ポメラニアンはダンゴムシの外殻から口を離した。

「そうそう。もう行こう、ポメ。ダンゴムシは放っておこうよ」

 時間が経てば魔窟の一部となるだろう。その前に他の魔物に喰い尽くされるかもしれないけど。

「―――って、ポメッ!」

 ポメラニアンはまたダンゴムシの元に戻った。

 止める間も無く、むき出しになった白い身に齧り付く。

「ぎゃーっ!何すんの、ポメ!」

 僕の口から情けない悲鳴が上がる。振り向いたポメラニアンの口にはダンゴムシの身が………ぎゃあっ!ポメ、エンガチョッ!

 ポメラニアンは白い身を咥えたまま僕の方に来ようとした。僕は慌てて後ろに下がり………何かに蹴つまずいて尻餅をついた。

「いたっ!ポメ、こっちに来ないで!それもペッして!………あれ?」

 蹴つまずいた物に手が触れた。見ると………宝箱だった。

「宝箱!?えっ!主なの、あれ!?」

 ダンゴムシのフリして、もしかして王蟲ですか。一夜で国を滅ぼすという。目は赤くないけど。

 それより宝箱だ、宝箱。ダンゴムシの宝箱と思うと微妙な気分になるけど、やはりワクワクする。

 僕は宝箱に手をかけて蓋を開けた。

「………ん?ルーペ?」

 中に入っていたのは、前世ではお馴染みの、取っ手のついた拡大鏡だった。

 凄い。こんな透明で厚いガラスなんて、今世では見たことない。拡大鏡はあるけど、レンズは水晶で出来ていて、文字が大きくはなるが、ぼやけて見える。

「目の悪い人に高値で売れそう。………あれ?」

 ルーペ、別名虫眼鏡。

 ムシメガネ?ムシだと?

 僕はポメラニアンの背後の小山を見やった。

 ダンゴムシ。

「―――嘘だ!」

 嘘、ウソウソ!絶対違う!

 今世の拡大鏡、ムシと関係ない名前だし!魔窟がそんな前世がらみのダジャレかましてくる訳ないし!絶対嘘!偶然!

「くぅん」

 くぐもった声がした。ポメラニアンが目の前に来ていた。白い物体を咥えて。

「うわっ!ポメ、そんな物持ってこないで!」

 びっくりして、思わずルーペを振り回した。やめてよして触らないで!

 ………あれ?僕はハタと腕を止めた。なんか今、絡まった髪の毛みたいなのが見えたぞ?

 僕は改めてルーペをかざした。やはり小さなゴミのような黒い塊が見える。

 ルーペを外す。白いポメラニアンと白い身。

 再度ルーペをかざす。黒いもじゃもじゃとした塊。

 あ、これ文字だ。文字が白い身の上に表示されている。

 しかし残念!僕は文字読めないんだ。孤児出身だからね。

 ルーペを下ろそうとすると、黒いもじゃもじゃがモゾモゾ蠢きだした。

「―――はぁっ?嘘!」

 文字が分かる。え、日本語になった!?何で!?どういう原理!?

『魔生物、節足動物、オオダンゴムシ科

  外殻は防刃・防火。身は可食。殺菌・保湿効果あり』

 何ということでしょう。

 巨大ダンゴムシの情報が表示された。

「………鑑定」

 このアルティを持つ人は希少だ。アルトマスも滅多に出ない。宝物としては、見つかったという話を僕は聞いたことがない。

 確実にレアだ。多分超がつく。

「わん!」

 ポメラニアンが僕の目の前で白い身をボトリと落とした。

 仕舞って?と言わんばかりに、口元は笑顔だ。

 僕は無言でそれを拾うと、籠に入れた。

 ポメラニアンはその様子を見届けると、ダンゴムシの元に戻り、次の塊を剥ぎ取りにかかる。

 結局、ダンゴムシを全て収納した。

 籠にダンゴムシが丸ごと入っているかと思うと発狂しそうになるので、敢えて心を無にする。

「………ポメ、そろそろ行こうか」

「わん!」

 やり切った顔のポメラニアンが僕の足元に座り、見上げて一吠えした。

 そう言えば………僕は鑑定ルーペを取り出し、ポメラニアンを見てみる。

『魔生物、ポメラニアン類ポメラニアン科。

 固有名、ポメ』

 え?ポメラニアンって犬科じゃないの?ポメラニアン類って何?

 あと、ポメってポメラニアンを縮めただけだったんだけど、それが名前でいいの?まぁ、ポメがいいならいいけど。

 固有種ポメラニアン、今世に爆誕。

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