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生け簀の国のジン   転生したら幼馴染にボス耐性があったんだが  作者: 長月未至


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2/2

土の味

森の中で見つけた開けた場所に小綺麗な絨毯を敷いて、熊と俺とかわいらしい少女が仲良くお食事。実にメルヘンで、冗談じみてる。

熊公も美味そうに食う。すっかり飼いならされたやがって、口を開く度に見える生え揃った牙––生肉を余裕で噛み砕けそうなぐらいご立派––が綺麗に盛られた茹で肉にかぶりついている。おまけに果物まで用意されてるからな。至れり尽くせりだ。


「さあ、お食べ。」


俺の前に並べられたのは湯がいた葉と肉を皮で包んだやつ。デザート汁物付きでこっちも上等だな。


「相変わらずうまいな。」

「ええ、当然の務めだもの」


上品にただ口角を上げて笑う。作るのも主人の義務の内なのか。飯の前にこいつがちゃかちゃか用意してる時に手伝うかと言ったら断られる。妙な話だ。おまけにこいつだけは食べない。なぜかは知らないが。










 





「お前も遊んであげる。来なさい」


こいつの方がチビだからこっちを見上げているけれども、むしろ目下に見られてるような気にさせられる。それを誤魔化すように鉈を振り上げる。お綺麗な顔目掛けて、思いっきり枝2,3本断ち切れるぐらいに。


「遠慮がなくていいわ。」


見た目に騙されちゃいけない。なぜなら


「ぐっ」


当たった手応えが人じゃない。熊と相撲取れるだけはある。


「戦士たるもの、見かけに気を取られてはならないのだから。」

「はいよ。」


誰がてめえみたいな化け物に遠慮するか。


「例えかわいらしい女の子でも」

「自分d」


チャンバラ代わりにおててに握られたひ弱な木の枝が


「あなたの首を刈り取れるのだから。」

「うぐ」


首に当てられる。まじで見えない、対応できない、何もできない。これがホンモノだったらあっさり殺されたわけだ。


「ぐりぐりやめろ。」

「されたらこんなものではないのよ。」

「ホントにあったたみたいに言うな。」

「うふふ、ほら次。」


こいつと年中付き合ってるのだから、似たようなレベルのはずなのに、どうしてこんな差が生まれるのか。上昇曲線が違いすぎる。才能、ジョブ、いや1ヶ月ぐらいどっかいってるかそこか。じゃあめちゃくちゃレベル上げすればなんとかなるのか。つーかこいつを倒せるやつがいるのか。どうやって?こいつより強いやつってなんだ。もう熊よりゴツいやつなのか。


「ぐえ」

「集中しなさい。」


軽く張り倒されてる。

くそ、砂が口に入った。








「これは?」


こいつがこう言った時はステータス補正を弱めてる。補正はMPを消費してやってるらしい。


「いくぜ。」

「ええ。」


間合いを詰めて、ぶん殴ると


「ふふ」


可愛らしく笑って腕を上げ  受け止めないで


「う」


痛みが手に走ったら、鉈が地面に。はたき落とされたのか。


「次。」


(でんじは でんじは でんじは)


「いいわ。」


こうなると多少効く。右手が力なく垂れる。それでも片手だけしか及ばないのがなんとも。


「容赦しないのはお前の良いところね。」

「そんな余裕はないからな。」

「あってもそうするのではなくて。」

「どうかな。」


さっきと同じように間合いを詰めていく。もちろん右側からいく。


「んふふ。」


あいつは両利きだから左手でも支障がない。それでもワンテンポは遅れる。目と反射の良さはダンチだ。てなわけで


フェイントを入れてやる。上段から打ちかけ


「えっ」


間近に覗きこむように、笑った顔が


「ぐわ」


地面に落とされる。


「上々ね。」


懐に潜りこまれて、裾引っ掴まれた挙句地面に落とされた。背中が痛い。


「お前、どうしたら倒せんの?」


マジでステータスが違いすぎる。素早さが違すぎて何もさせてもらえない。どう倒せばいいのか、人間にエンジンと鉄板を装備させた奴に。


「そのうち、できるわ。」

「親が子供に言うみたいだな。」

「差はそれほど、ではなくて?」

「分からん。つーか起こしてくれ。」

「もう少し見下ろしていたいわ。」

「なんでだよ。」


楽しそうに態々しゃがんで、見下ろしてくる。


「格上と戦う時は?」

「お前に任せる。」

「正しい、まずは生き残ること。」

「来なかったら?」

「耐えて、技かけて、倒す。」


持久戦、無茶だな。相手が許してくれるか? 他に手がないのが絶望的。飛び道具、必殺技が早急に求められる。


「格下は?」

「余裕。ほぼ通るからな」

「よろしい。」


レベル上げがしたいが、格上か雑魚しかいないのをどうすればいい?






















急に開けた土地が現れる。森の中にポツンと家々が集まっていて、おっさんおばさんは向こうの畑にいて


「……」「……」「……」「……」「……」「……」


残ったちびっこども––かけっこか相撲でもしていたのか土だらけ––こっちをいや、この女を黙って見つめている。

いつも通りに悠然と見返しているのだろう。


「……」


でも俺に向けてくる顔は






















ぶっちゃけドラクエみたいな部屋だ。ベッドに、本棚に机に椅子。香を焚いているのは女らしいかもな。辺りを漂う匂いが鼻を擽る。なんの香りなのかよく分からないが、高そうなやつだ。


「座って。」


ベッドの縁で座っているこいつの横にかける。


「今日はこれ、読んで。」

「あいよ。」


読み書きの練習というていで、手紙を読み上げさせられる。普通こういうのって村の爺さんとかに教わるもんじゃないのか


「親愛なるリイシェ、返書受け取りました。要点は押さえられています。、ただ、ああと」

「禿頭王よ、そこは。」

「へいへい。」


こいつもまだまだ勉強中ということなのか。よく読むのは、歴史の講釈垂れてるやつだな。あとマナーとか教訓話とか。


「禿頭王の名が含むのは」


このままこいつの小間使いとして生きて行くのか。























揺らめく火が照らすのは、親父にお袋に兄貴の面。パンと野菜汁をむっつり食う。黙っているのは男らしいからか、いやそうではなくて


「今日も……あの方と居たのか?」


親父が口を重そうに開いて、そう言う。


「そうだよ。なにかやることでも、あるのか?」

「いや、大丈夫だ。作業は間に合っているんだ。」


俺がいないことはほぼ前提になっている。


「ずいぶんといいご身分だな。」


兄貴がガン飛ばしてきやがる。


「はん、嫉妬かよ。」

「うるせえ、お前なんて」

「やめろ。」


とりあえずお互い黙る。これでしばらく突っかかれないですむ。
















ベッドで寝転ぶと、いつも通り転がされた身体が

節々痛む。



この世界はゲームに違いない。魔力だのなんだのがあるんだから。リアルじゃない。じゃあどんな筋書きなのか、あの女が中ボスだろう。中盤の捻った展開の末に倒されるんだ。きっとプレイヤーが奴の小綺麗な面をぶっ飛ばして、土の味を教えてやるんだ。






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