002 時の鍵を握る者
ロウィンは「はじまりの町」のギルドに足を踏み入れた。建物の中は賑やかな声で満ち、異世界ならではの活気が感じられる。壁の掲示板を眺めていると、すぐに受付の女性リリィが声をかけてきた。
「こんにちは。何かお探しですか?」
ロウィンは軽く頷き、掲示板を指して尋ねた。
「この掲示板に載っている依頼を見ていたのですが…」
リリィは優しく微笑みながら言った。
「それなら、少しお話ししてもいいですか? 実はこの町で最近、ちょっとした騒動があったんです」
興味を持ったロウィンが問い返す。
「どんなことですか?」
リリィは少し間を置いて話し始めた。
「町のイベント中、勇者パーティーが大きな問題を起こしたんです。最初は町の英雄として歓迎されていましたが、裏で悪事を働いていたんですよ」
「まさか、勇者たちが?」
驚くロウィンにリリィは続ける。
「ギルドの資金を横領し、商人から不正に金品を奪うなど、町の人々を騙していたんです。結局その悪事が明るみに出て、町の広場で大騒ぎになりました」
ロウィンは目を見開いた。
「勇者パーティーがそんなことを……」
リリィは頷きながら答えた。
「元勇者パーティーの一員で、ニャン娘のサラさんがずっとひどい扱いを受けていたんですが、彼女がレイナさんと共に悪事を暴露したんです」
「サラさんとレイナさんが……?」
「はい。サラさんはものすごく強くて、町の広場で勇者たちを問い詰め、レイナさんがサポートしました。結果、勇者たちはボコボコにされて町から追放されたんですよ」
「それって……想像できないな」
ロウィンは思わず笑いをこらえた。
リリィは少し楽しそうに続けた。
「サラさんは戦い方がまさにニャン娘そのもので、勇者たちは一方的にやられ、町の人々は驚きのあまり言葉を失いました」
その話を聞き、ロウィンは吹き出しそうになった。勇者パーティーが悪事を働き、ニャン娘にボコボコにされるなんて、異世界でも信じられない出来事だ。
「それで、サラさんたちは今、町の英雄だというわけですね」
「その通りです。サラさんとレイナさんは今、町の人々にとって希望の象徴です。特に、魔王アスタロス討伐の候補とも言われているんですよ」
ロウィンは胸の奥に奇妙な感覚を覚えた。何か大きな出来事が近づいている予感がしたのだ。
「魔王アスタロス討伐……」
その時、胸の中で強く何かが響いた。時間の流れが一瞬だけ遅くなるような、不思議な感覚。
「もしかして……」
心の中で呟く。
「自分には、まだ知らない力があるのかもしれない」
静かに深呼吸し、時間の流れが少しずつ変わり始めるのを感じた。力がゆっくりだが確かに目覚めている気配が、全身に広がっていった。
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