表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
1/923

001 「村人A」の卒業――記憶のリセットと、勇者の潜在能力(ギフト)の解放

 ご訪問をしていただき、ありがとうございます。

挿絵(By みてみん)

<シルヴァーナ>



 勇者養成アカデミー〈ソウルヴァース学園〉。

 そこには輝かしい才能が集う一方で、残酷なカーストが存在していた。

 最底辺――嘲笑ちょうしょうを込めて「村人Aコース」と呼ばれる教室で、ロウィンは己の無力さをみ締めていた。


 周囲の生徒たちがまばゆいばかりの魔力を放ち、難関試練を軽々と突破していく中、ロウィンだけが一度として成功をつかめない。


「期待するだけ無駄だ」


「背景がお似合いだよ」


 浴びせられる罵声ばせいはナイフのように心をえぐり、やがて誰からも視線を向けられなくなった。

 彼の世界から「希望」という言葉が消えかけていた。


 うつむき、ロウィンは熱を失った声で呟く。


「俺はただの足かせだ」


 幾度も繰り返された挫折ざせつの記憶が、濁流となって脳内を埋め尽くす。

『俺は勇者になれない』――自分自身でかけた呪いが、魂をむしばんでいた。


 その時、背後からりんとした、けれど柔らかな声が響いた。


「また一人で悩んでいるの?」


  振り返れば、そこにいたのは幼なじみのシルヴァーナだった。

  透き通るような白い肌に、鋭くも美しい耳を持つダークエルフ。

  彼女は「スペシャル勇者コース」の筆頭エリートでありながら、なぜか落ちこぼれのロウィンを常に気にかけていた。


「シルヴァーナ……。君には関係ないだろう。俺は……」


「関係あるわ。私が、あなたの可能性を信じているもの」


 シルヴァーナは優しく歩み寄り、ロウィンの目を真っ直ぐに見つめた。


「本当に、自分に才能がないと思っているの? それはただ、あなたが『そう決めつけている』だけじゃないかしら」


 ロウィンは目を伏せ、自嘲じちょう気味に笑う。


「俺の居場所はここ、村人Aの席なんだ。それ以上にはなれない」


 重い沈黙が流れる。

 だが、シルヴァーナは諦めなかった。


 彼女はそっとロウィンの肩に手を置き、その温もりを伝えるようにささやいた。


「あなたはまだ、自分の中に眠る『真実』に気づいていないだけ。……これを見て」


 彼女がポケットから取り出したのは、ほのかな光を放つ不思議な球体だった。

 勇者養成RPG『吾輩は異世界から来たニャン娘なり!』――彼女はそう呼んだ。


「これを使えば、あなたの魂を縛る『おり』が壊れるかもしれない」


 戸惑いながらも、ロウィンは恐る恐るその球体に手を伸ばした。


 触れた瞬間、視界が白く染まり、やがて目の前に広がる景色は、見覚えのないものへと変貌へんぼうしていた。


「え――っ!?」


 気づけば、学園の陰気な空気は消え去っていた。

 目の前には雲を突くような巨大な城壁がそびえ、勇者たちが闊歩し、魔物が跋扈ばっこする未知の荒野が果てしなく広がっていた。



『――ようこそ、ロウィン』



 視界に半透明のメニュー画面が浮上する。

 そこには彼の名、脆弱ぜいじゃくなステータス、そして手持ちの道具が表示されていた。


 やがて、画面の中央に、運命を問う選択肢がゆっくりと形を成す。



【記憶を消去し、勇者としての潜在能力を解放しますか?】

 ※過去の経験、積み上げた感情はすべて失われます。新たな冒険の対価として、リセットを実行しますか?



 心の中で激しい葛藤かっとうが渦巻いた。

 これまでの苦しみも、悲しみも、すべて消えてしまうのか。だが、それを振り払ったのは、最後に見たシルヴァーナの微笑みだった。


『あなたには、まだ気づいていない力がある。……だから、自分を信じて』


 その言葉が、震える背中を力強く押した。

 ロウィンは、もう二度と「村人A」としてうつむきたくないと願った。


「……やってやる」


 指先が、承諾のボタンを叩く。

 瞬間、世界は再び純白の光に包まれた。


 次に目を開けた時、そこには新しい風が吹いていた。

 過去の重荷を脱ぎ捨て、生まれ変わった「自分」が立っている。


 ロウィンは、確かな足取りで未知なる冒険の道へと踏み出した。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
この先の展開が楽しみです
異世界でゲーム?ちょっとよく分からん
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ