第四話:自称女子高生と暴走族
ぶうぅぅぅ、ぶうぅぅぅ。
「んー。誰だよ、こんな朝から。」
晴輝は電話のバイブ音で深い眠りから目を覚ました。覚ましたと言ってもまだ半目で、電話の相手も確認せずに電話に出た。
「・・もしもし?」
『あ!やっと出やがったな晴。その声は今起きたろ。さぁ、今は何時でしょーか?』
電話の相手は伊織だった。相変わらずテンションが高い。
「なんだよ。今日からゴールデンウィークだろ。せっかくの睡眠を邪魔するなよな」
『いや、今日から勉強合宿だろ。まさか、合宿自体忘れてたのかよ』
「え?あ、今日だっけ。完璧に忘れてたわ。今何時・・」
いつも使っている時計の短針は12を指していた。その瞬間に焦燥感が一気に高まる。伊織からの不在着信が10通以上来ていて、大幅に自分が寝坊したことに気づいた。
「え、俺どうしよ。何も準備してないし、もう授業始まってるよな」
『今は昼休みだな。先生は遅れてでもいいから来いって言ってたぞ。合宿費も払ってるし、そこまで怒ってなかったから。ゆっくりでいいから来いよ。暇だからよ』
にひひと笑う伊織に、勉強合宿なのに暇とはなんだと言おうと思ったが、起こしてくれた伊織に感謝してるため言わないでおいた。
合宿所は少し遠いが車で1時間ほどで着く。
生徒は揃ってバスでは行かず、各自で電車なり親に送迎してもらうなりで自由な方法で行って良い。
「わかった、夜には行くよ。荷物は送ってるし、ツーリングがてらバイクで行くよ」
晴輝は1週間前に衣類などの荷物を合宿所に送ったことをすっかり忘れていた。
『了解。気をつけてなー』と言い、通話は切れた。
伊織との電話を終え、晴輝は「はぁ」とため息をついた。
盛大に寝坊してしまった。昨日、遅くまでゲームしていたせいもあるが、いつも起こしてくれる母たちが今日から祖父の家に行っているためでもあった。そろそろ自立しないとなと強く思った。
「先生も怒ってないって言ってたし、ゆっくりしてから行くか」
19時前になり、晴輝はバイクに跨り合宿所に向かおうとした。その時、伊織からメールが入った。
『まだ家出てないのか?なら合宿所の最寄駅にコンビニがあるからそこで炭酸のジュース買ってきてほしい。起こしてあげたから、お願いしまーす』
面倒だと思ったが感謝はしてる。『はいはい』とメールを送り返した。
1時間と少し、バイクを走らせて最寄り駅のコンビニに寄った。
コンビニの自動ドアを通る前に、少し遠いところからある声が聞こえた。
「だから、嫌だって言ってるじゃないですか!」
(ん?なんだ?)
声は明らかに女の人の声だった。声がした方に目を向けると、白Tシャツにジーパンを履いた柄の悪そうな男たち、世間では『ヤリラフィー』と称されるような2人が女の子を囲んでいた。
「可愛いから俺らと遊ぼうよ。君、大学生?」と一人の男が言い寄った。
おそらくナンパだ。この辺はそんなに栄えているわけではなく、どちらかと言うと田舎だ。
こんなとこにもあんな奴いるんだな。
「私、高校生です!先生に言いますよ!」
言い寄られている女の子がそう言った。それを聞いた晴輝はある感情に襲われた。
高校生ということは、俺と同い年か年下。大学生ならほとんど大人だが、高校生となるとまだ子供だ。何とかしないと。でも、どう助けよう。
数秒悩んでいたが、自然に助けられる方法を思いついた。
(そうだ、これなら)
晴輝はバイクにキーを差した。エンジンをかけてからフルフェイスのヘルメットを被り、コンビニにしては広い駐車場をいつもより数倍唸るような轟音を出しながらぐるぐると回り始めた。
「うわ、あれ族じゃん。だるそうだし帰ろうぜ」
「クソが。じゃあな!可愛い高校生ちゃん、また会おーな!」
バイクの轟音は男二人組を自称女子高生から引き離すことができた。男たちは少しこちら側を睨みながら駅の方向に消えていった。
自称女子高生は怯えながらこちらを見ていた。当然である。夜に歳上の男二人組に囲まれ、次は暴走族男である。
すぐにここを離れようと晴輝はバイクを止めに行こうと駐車場を出ようとした。
(あ、伊織の飲み物)
伊織に頼まれていた飲み物を買うのを忘れていた。流石に手ぶらのまま行くのは怒られそう。
一度悩んだが、この田舎に他のコンビニや自動販売機がある確証がなかったため、再びバイクを止めて、伊織と自分の分の飲み物を買った。
やっと合宿所に迎える。
そういえば、あの女の子は・・と自動ドアを出た所で、さっき女の子がいた場所に目を向ける。
「あれ、いない。まあ、そら帰るか」
「先ほどはありがとうございました。本当に助かりました」
急に横から女性に感謝を述べられた。戸惑いながらも声がした方に目を向ける。その女性は頭を下げていた。
(あぁ、さっきの人か)
その人の服装は大きめのパーカーにショートパンツで白のスニーカーを履いていた。見た感じは大人びていて、スタイルも良い。あの男たちが大学生に間違うのも仕方ない。
風呂上がりだろうか、長いストレートの髪からはシャンプーのいい香りがした。
「いえ、俺はなにm・・」
そこで晴輝は言葉に詰まった。頭を下げていた子は徐々に頭を上げ、ついには目が合った。
自称、いや、正真正銘、その子は女子高生であるとすぐに気づいた。
「え、うそ・・」
「岡村・・?」
(いや、なんでだよ…)




