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学校一の美少女は学校一嫌いな奴だった  作者: 夏斗輝明
第一章:『3年1組』
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第五話:陽キャと陰キャ

 

 ナンパされている女の子を暴走族に扮して助けた一ノ瀬晴輝。その女の子に助けた礼を言われるが、その子は最も関わらないであろう晴輝の天敵のような存在の岡村玲奈だった・・


「え、うそ・・」

「岡村・・?」


つい名前を口にしてしまった。晴輝に頭を下げていたのは岡村玲奈だった。お互いに驚きを隠せずにいる。


(まず、なんでここにいるんだよ。てか、ナンパされてたのお前かよ。まあ、されてもおかしくない顔はしてるけど)


「あんた、なんでここにいるの⁉︎てか、このバイクあんたのなの⁉︎てか、あんた不良なの⁉︎」

「いやいや、そんな一気に答えられないし、ちょっと落ち着いて」


焦って早口になっている岡村を宥めるようにして落ち着かせる。

「あ、うん。そうだね」と自分の焦り様を理解したのか、岡村はスゥーと深呼吸した。

店の前で説明するのも他の客の邪魔になるため、バイクがあるところまで移動した。


「で、なんで?」


少し怒ったかのような口調で聞いてくる岡村にゆっくりと説明する。


「俺は合宿に参加してたんだけど、寝坊して自分のバイクできたんだ。」


「で?」とまた疑問系で聞き返してくる、岡村に少し苛立ちを覚えるも続ける。

「で、男に絡まれてる人を見かけたから、それで」


「あんた、やり方間違えてない?普通、助けるなら『やめろ』とか直接言わない?」

「俺にそんな勇気はないよ。あのやり方ならヘルメットで顔見えないし、十分威嚇できるし」


「助ける勇気はあるのに?」と岡村はケラケラ笑いだした。

正直、笑えるポイントは分からなかったが、少しこちらを馬鹿にしたような笑い方だったが、その笑顔を見るとさっきの苛立ちもいつの間にかなくなっていた。


(こいつ、こんな顔して笑うんだな)


1年生のあの時のような冷たい目とのギャップがある笑顔に少し見惚れてしまった。


「なに?人の顔じっと見て」


そう言われ、数秒ではあるが岡村の顔を見ていたことに気づき、慌てて顔を背ける。


「いや、別に。じゃあ俺、バイク止めてから合宿所に行くから岡村も気をつけて帰れよ」

恥ずかしさと早く合宿所に行きたいと思い、バイクにキーを刺した。


「じゃあ、私もバイク置きに行く」

「え、なんで」

「いや、なんでって。分かるでしょ普通。そうだ、私もバイク乗っけてよ」


何を言ってるんだこの子は。まず、俺のようなタイプとこんなに話さないだろ。何でそんなにグイグイ来れるんだ。一人で帰れるだろ。


晴輝は戸惑いながら答えた。


「二人乗りはヘルメットが一つしかないからダメ。歩いてついてくるならいいよ」

「なーんだ。歩きか。じゃあ、早く止めてきて。私、ここにいるから」


なんてわがままな奴なんだと思いつつ、「はいはい」と諦めたように返事をして、駅前にある駐輪所にバイクを停めに行った。



 バイクに施錠をして、10分ほどでコンビニに戻ってきた。俺がいない間にまたナンパされないか少し心配ではあったが、岡村は駐車場の縁石に腰を下ろしていた。

 動画でも見ているのだろうか、スマホを横向きにして見ていた。


「はい、戻ってきましたよ」と少し気だるそうに言ってみる。


「おけー、じゃあ行こ。てかあんた、合宿所までの道、知らないんじゃない?」

「知らないけど、スマホで道調べるから大丈夫。あ、そのコンビニの荷物、貸して」

「じゃあ、よろしくー」


岡村は袋を渡し、晴輝の後ろについて行くように歩き始めた。



 2人は何も話さないまま縦に並び、10分ほど歩いていた。時折、岡村の方を確認しながらある程度歩くスピードを合わせていた。

 無言の時間に耐えかねたのか、岡村が話しかけてきた。


「あんた、一ノ瀬って名前だよね」


急に何だよと思った。それよりこいつ、一年の時のこと完全に忘れてやがる。少しあの時のことを言ってやろうかと思ったが、今更感もあるため、やめておいた。


「そうだよ」

「席隣だけど、話したことなかったね。ずっと喋らないから陰キャなのかなって思ってた。けど、陰キャであのバイクはないよね」


(陰キャって・・)


「何だよそれ。まあ、岡村と比べたら陰キャかもな。そういえば、何で一人でコンビニいたんだ?あそこまで結構距離あるのに」


思っていたより口数の多い岡村に対して、今ならまだ話せると思い、疑問に思っていたことを率直に聞いた。


「昼間の授業でペンのインクがなくなったから。あと、みんなのジュースもついでに」


そう言われ、先ほど岡村から預かった袋に目を落とす。袋の中には3色ボールペンと500mlの紅茶が3本入っていた。


「そうなんだ。でも、もう一人で出歩くなよな。岡村みたいなやつはまたナンパされるだろうし」


「・・え。」

なぜかワンテンポ遅れて返事が帰ってきた。こちらを驚いたような顔で見てくる。


「えってなに?」

「・・別に」


(なんだ?)


なぜかは分からないが岡村は急に喋らなくなった。先ほどの沈黙の時間に逆戻りしてしまった。さっきと違うのは岡村が自分の隣を歩いていることである。



 沈黙の時間が再び5分ほど経った頃、合宿所に到着した。宿泊施設とは言ってもホテルではなく、旅館のようなところである。想像していたところとは少し違っていたが、早くお風呂に入って1日目の勉強内容とかを伊織に聞かないと明日からの授業で遅れをとってしまう。


「じゃあ俺は先生に遅れたこと謝らないといけないからここで」


「あ、うん。じゃあね」とすぐに玲奈は買い物袋を受け取り、晴輝に背を向けて女子部屋の方に歩いて行った。

 

 入口を入ったところで晴輝はチェックインの手続きをし、そこにいた担任に遅刻したことを少し怒られた。今日使った授業の資料をもらい、1組の男子が寝泊まりする大部屋へと向かう。



 今日は久々に女子と話した気がする。しかも学年屈指の美女と。暴走族が俺と知ってからは感謝の言葉はなかったけど、岡村に対して抱いていた人物像は自分の中で少し上書きされた。


 今日はいいものを見れた気がした。


「あいつ、ずっと笑ってればいいのに」


晴輝は小さく笑い、呟いた。


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