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幸福のフェリス  作者: 海野 咲凛木
第一章 プロト村 幼少期編
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第9話 「出会い」


「………あれ…?」


目が覚めると、私は自宅の寝室にいた。

何が起きたのか分からない。それに何も覚えていない…


「フェリス?」


声をかけてきてくれたのは、母だった。


「お、お母さん...私…何が…」

頭が混乱して上手く言葉を伝えられない。


「大丈夫、貴方は気絶しただけだから。」

「気絶…?」


どうやら、あのドラゴンが襲いかかってきた直後に私は恐怖でその場に倒れてしまったらしい。そして母が自宅まで運んでくれて今に至ると。


窓の外を見ると、日がもう沈み始めている。長い時間、気絶していたようだった。


「ごめんなさい...」

「大丈夫よ、今日はもうゆっくり休みなさい。」 

そう言うと、母はまた身支度を始めている。 

「お母さんあの子の所に戻るから、夕飯は作ってあるから食べてね。」

「わ、私も行く……あっ……!」


慌てて立とうとしたが足がもつれて上手く立つことが出来なかった。

「それだと満足に仕事はできないでしょ。」 

「でも……!!」

「今日はもう大丈夫だから」


「……はい...」


「事前に詳しく話していなかったお母さんが悪かったわ。ごめんなさい。」


「お母さんは何も…私がいけなかった...」

「フェリス、あの子は人の感情を読み取る事が出来るって言ったけれど、それは命あるものはほとんど出来るのよ。」


「え?」


「自分に恐怖心を抱かれていたら、そんな相手に上手く接することなんて出来ないわ。」


あの母の瞳だ。

優しくて、儚くて、とても綺麗な瞳が私に教えてくれている。


「徐々に慣れていきましょう。」

「うん…」


母を見送り、1人布団の中で涙を流した。

恐怖によるものではなく、あのドラゴンへの申し訳なさから来るものだと思う。


母の言う通りだ。

ケガワウシのお世話をしてる時は、恐怖心なんて微塵も感じてない。

だからウシ達も懐いてくれていたんだ。


そもそも怖い思いをしているのは、ずっと檻に閉じ込められているあのドラゴンの方じゃないか。


ずっと一人で、急に知らない人間がやってきて、不安に決まっている。


色々考えていたら、すっかり夜になってしまっていた。

母の作ってくれた夕飯を済ませて、浴場へ向かっていると、いつもの声が聞こえてきた。


「フェリス!なんだよお前気絶したんだって?」

「イリアン…」

聞き慣れた声のおかげで少し気持ちも落ち着いた。


「まぁしょうがないって。あのドラゴンなんだしよ」

「…なんでここにいるの?」

「なんでって、今から風呂入るからだ」

「イリアンのえっち」

「なんでだよ」


その時だった。


雪の降る夜空。月の光に被って何か落ちてきてるのが見えた。

「なにあれ?」

「ん?どれ?」


その影は力無く羽ばたいているが、少しずつ降下してきている。

「ほらあそこ!」

「ん~鳥じゃないか?」


鳥だとしても、上昇もせず落ちてきているのは明らかにおかしい。

次第に山の影に隠れて姿が見えなくなってしまった。

「落ちたのかもしれない!行こう!」

「はぁ?!こんな暗いのにどうやって見つけるっていうんだよ!」

「でも…ほっとけない!」

「ん~…そうだ、こいつらに灯りになってもらおう!」


そう言うと彼は魔方陣を展開し、少しして彼の周りに小さな灯りが漂い始めた。

「これって…」

その正体は無数に舞う雷電甲虫。どんどん増えていき、松明と同様の明るさになっていた。

「これなら見える!」

「へへーん、やっぱ俺って天才だ…」

「早く行こう!」


「な、おい待て先に行くな!!」


暗闇に包まれた雪山に雷電甲虫達がその光で道を作ってくれている。まるでナビゲーションをしているようだ。


「すごいねこの子達!」

「へへーん!俺が指示すればこんなの朝飯前よ!」


イリアンが魔法陣を通して、道を作るように指示を出しているが、肝心の場所までは分からない。

雷電甲虫を辺りに散らして広い範囲の捜索を試みる。


「あ…」


少しして、木々が不自然になぎ倒されている場所に出た。

強い衝撃を受けたのか、幹がボロボロだ。


「おい、フェリス…これって…」


イリアンが何か見つけたらしい。


近くに行ってみると、木の表面に刻まれた大きな爪痕のようなもの。


「鳥…ではないよな…」


明らかに鳥よりも凶暴な生物であろう痕跡だった。


しかもよく見ると、痕跡のある幹から何かが血を流して這いずったのか、血痕が暗闇の先まで続いている。しかもまだ新しい。


間違いない。この先に何かがいる。


「……行こう」

「嘘だろ…危ないって…」

「それでもだよ」


甲虫の放つ灯りを頼りに、恐る恐る歩みを進めていく。

すると、突然甲虫達が辺りに散り散りに飛んでいってしまった。

「ちょっとイリアン、虫たちが…」

「いや俺は何も…」


まるでこの先に飛んでいくのを本能的に拒んでいるかのようで、それは私達もだった。


「あ…」

「まじかよ…」


月明かりに照らされ、目が慣れてきて視界に入ってきたのは、


流血とともに、その場にうずくまっていた黒い鱗のドラゴンだった。


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