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幸福のフェリス  作者: 海野 咲凛木
第三章 王都アライア・へウン編

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第55話 「マテリアⅤ」


「そうか、また失敗したのか」




暗く、冷たいその声が私の耳に静かに襲いかかってくる。


「申し訳…ありません…」


「マテリア、おまえがしくじるということは…分かっているな」


「お願いします…次は必ず……」


教皇様は私の懇願など無視して地下の階段を降りていった…その手にナイフを持って…



「次は必ず成功させます…だから……」





"もう、殺さないで…"









「あっ…!?」


目が覚めると、馬車の中にいた。


「起きたか」


前にフォルテさんが座ってこちらを見つめている。


日は沈みかけ、王都への帰路の途中だった。


「あの…ユニケルスは…」


「失敗した。」


そんな…また私のせいで…命が奪われる…


「早く戻って捕獲しないと…!」


まだ日が昇っている間に森に戻れば、まだ見つかるかもしれない…


「よせ、今日はもう終わりだ」


扉に手を掛けた時、その大きな手が私を優しく静止させた。


「……止めないでください…じゃないと…」




「事情は知っている」




嘘偽りの無い、真っ直ぐな目だった。








「俺に任せろ。必ず助ける。」








私が今一番、欲しかった言葉をその目で伝えてくれる。


「俺が教皇と掛け合う。だから、おまえはもう休むんだ。」


その言葉が、私の中の何かを解放した。


「グスッ…あれ…」


涙が溢れてくる感覚。


止めようとしても、抵抗するように流れてくる。


「マテリア、一人で辛かったな」


頭を優しく撫でられた。


もう、感情に言うことを聞かせることは出来なかった。


「ごめんなさい...私のせいで勝手に連れてこられて…私のせいで……ごめんなさい...!」


フォルテさんは、ただ泣きじゃくる私を静かに見つめ、溢れ出る感情を王都に着くまで受け止め続けてくれた。






ーー王都教会にてーー


その日、教会の自室に戻ると広間からフォルテさんと教皇様が言い争っているのが聞こえた。


多分、遠征に同行する事を話しているのだろう。その様子を影から伺おうと自室を出た。


「してフォルテよ、話というのは何かな?」


「今後の捕獲遠征には私も同行させていただきたい。」


やっぱりその話だ…


「何故に?」


「今までの遠征もそうだが、貴方はマテリアを酷使しすぎだ。まだ11歳の女の子に背負わせるような任務ではない。」


「あの娘の魔法を有効活用しておるだけだ。今回は久しぶりの失敗ではあったがのう。」


懐からナイフを取り出し、その刃先を照らして眺めている。


「その失敗したことの責任を重く取らせすぎだ。話は聞いたが、それはマテリアを脅し半ば強制的にさせている。」


「まぁ良いだろう。お前も同行するというならば遠征成功率も格段に上がる。」


「それでは、次の遠征時には声をかけてくれ」



「あっ…」


フォルテさんが教会を後にしようと歩いていくのが見えた。



伝えなきゃ…

きちんと感謝を…


「あのっ…!」


教会の入口前で声をかけると、フォルテさんは振り向いて視線を向けてきた。


「おぉマテリア、次の遠征からは正式に俺も同行する事になったから、宜しくな!」


その大きく笑う顔を見れると、気持ちが和らいでくる。

安心感と、その頼もしさが重圧を取り除いてくれる。


「本当に、ありがとうございました」


深々と頭を下げて今できる精一杯の感謝を伝えた。


「マテリア…おまえ本当に11歳なのか…?」

「え?」

「11歳はもっと落ち着きが無くて、好きな物とかにがっつり食いつくような無邪気の塊だと思っているが…」


好きなものにがっつり…


「じ、じゃあ…フォルテさんは恋人っていますか?」


………………ん?


急に何を聞いているんだ、私は…


「ご、ごめんなさい…!私急に変なことを…」


「恋人はいないぞ。」

「そ、そうなんですか…」


なんでホッとしたんだろう…


「…どんな人が、好みですか?」


どうして、私はこの人のことをこんなにも知りたいと思ってるのだろう…



「好みか、俺は……」



この人のようになりたい。

この人の隣にいて、同じように他者を助けられるような力が欲しい。



フォルテさんが私にしてくれたように…







ーーーー現在ーーーー



「これは……!?」


教会の地下牢が燃え上がっている。

真っ赤に燃え盛る炎が拡がり始め、閉じ込められている獣達も少しでも遠ざかろうと牢の壁に身体を押し付けていた。


すぐさま剣を抜き、魔力を込めて炎を斬る。

斬られた炎は収縮し始めていくが、違和感を感じた。


「この炎…魔法で産み出されている…!」


自然発火したものではない。

魔力により造り出された炎だった。


何者がが意図的に獣達を殺そうとしている…


どれだけ収縮させても燃え盛る炎の拡がりを抑える事ができない。

入ってきた階段からも発火してもう戻れなくなっている。


逃げ道は…


私はもう炎を斬ることをやめた。


ガキィンッ!!!


獣達を閉じ込める地下牢の錠を破壊し、その獣達へ刃を向けた。


「ごめんね…」

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