表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸福のフェリス  作者: 海野 咲凛木
第二章 プロト村 青年編
20/39

第20話 「いつも食べてるのは」


身支度を終えて大衆浴場へ向かっていると、どこか村の様子がいつもと変わっていた。

変わっていたというか、雰囲気が忙しないというか…


特に村の男達の間でなにやら噂話を広げていた。


まぁそれは良いとして、早くお風呂に入りたい。


「え…」


浴場が見えてくると同時に、女風呂の入り口前に村の男達が集まっているのが見えた。冷ややかな目で横を通り過ぎ、衣服を脱いで浴場へ向かうが少し不安になってきた。


「なんか、いるのかな…」


恐る恐る浴場を見てみると、湯けむりの中に一人湯に浸かる人影が見えた。


黒髪を束ね、細身のスラッとした体型の人だ。

この村の人では無さそうだが、もしかして…


「あの…?」

「きゃっ!?」


声をかけると、驚いて見覚えのある顔がこちらに振り向いた。

「あ、もしかしてフェリスさん?」

「やっぱりアスカさんだ。無事に村に着いたんですね。良かった。」

「おかげさまで。先程は本当にありがとうございました。」

「いえ、お隣良いですか?」

「あ、どうぞどうぞ。というか、私は外部の人間だから気を遣わなくても…」


湯が跳ねないよう、ゆっくりと身体を降ろし、疲れを癒す一声を出す。


「ふぁぁぁ…温かい…」

「ふふっ、気持ちが良いですね」

微笑む彼女の顔を改めて見ると、とても整っている。

目がくっきりとしていて鼻筋もきれい。

ここまで整っている人は初めて見たかも。

ついまじまじと見てしまいそうで、隣にいると少し緊張してしまう。


「フェリスさんって、いくつなんですか?」

「15です」

「えぇっ?!15っ?!」

ウソでしょと言わんばかりに私に視線を向けてきた。

特に胸元辺りを見られているような…


「私より、3つも下だったんですね…」

そして、自身の胸に視線を向け、分かりやすく落ち込んでいる。


「何を食べたらそんな身体に…」

「え?」


「あ、いや…いつも食べたりしてるものあるんですか?」

急に真剣な眼差しでこちらを見つめてきた。

「えっと…あ、ケガワウシのミルクとか毎朝飲んでます…」

「くぅぅぅぅ…やっぱりそうなんだぁ…」


「どうかしたんですか?」

「私達、ここ『アラシア大陸』から西に海を越えた『セレニス大陸』の漁村出身なんですが…」


『セレニス大陸』…

この世界における五大陸の一つと聞いたことはある…


「そこ、基本的に魚介類しか食事に出ないんです…だからこんな骨みたいな身体で…」

「いや、アスカさんとても綺麗です!細くて羨ましい…」

「いやいやフェリスさんの方こそ!15でその身体付きだなんて将来が楽しみ…あ、ごめんなさい」


「ところで、その『海』って何ですか…?」


「え?海、知らないの?」


「私、この村から外に出たことは無くて…出てもラズリに乗って麗峰の周りを翔ぶだけで...」 

「海っていうのは、大量の塩水で出来た湖…かな?」

「塩水の湖…」

塩なんてとても貴重だ…でも話を聞いていると1日中使っても使いきれない量だとか…

アスカさんと話していると、まだまだ知らないこの世界の事が聞けてとても楽しい。


「ねぇ、良かったら敬語はやめてお互い呼び捨てで呼ぼうよ。私の事はアスカって呼んでほしい!」

「じ、じゃあ私はフェリスで…///」


「うん!宜しくフェリス!」

「よろしく…ア、アスカ…!///」


初めて、年齢の近い同性とここまで打ち解けて話す事ができた。


こんなにも同性との会話が楽しいものだったなんて…


今までは呪われた一族の末裔ってだけで嫌われ、イリアン以外とは基本的に話せなかった。


「ねぇフェリスはイリアンの事が好きなの?」

「え?いや、分かんない…アスカは?」

「私?」

「ほら、一緒に旅していたライトさんとグロウノーツさん」

「あぁ~…あはは、あの二人は同じ村出身の幼なじみだからなぁ…」

少し表情に迷いを見せてはいるが、アスカはそれを感じさせないよう誤魔化していた。


「幼なじみか…」

私にとってもイリアンは幼なじみ…


でも彼は私にとって…


「綺麗だね、その耳飾り」

「これ?これはお母さんから貰ったものなの」

「へぇ~…なんだろう、それから何か力を感じるような…」

「力?」

「その瑠璃の宝石ってどこで?」

「分からない。物心着いたときからお母さんはこれを着けてて、5年前に片方をもらったけど、理由は分からないけど肌身離さず付けてるようにって…」

「ふぅん、そっか…」

「どうかしたの?」

「ううん、なんでもない!のぼせそうだしそろそろ上がるね!」

「あ、じゃあ私もそろそろ…」


湯から出てきたアスカは足も長く、同性の私でも思わず惹き付けられるような体型だった。

衣服を着て浴場を出ると、男達がまだ入り口前に立っていた。


ようやく理解した。

皆、アスカを一目見ようと集まっていたんだ。


一緒に歩いていくと、男達から小さく歓声が聞こえてくる。


「私達はしばらくこの村に滞在する予定なんだ。だからまたね、フェリス」


「うん、またね」


微笑みながら小さく手を振ってくれたアスカ。

思わず私も微笑んで返した。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ