第112話 「イリアンⅡ」
俺はフェリスの為ならなんでも出来ると思う。
あいつは強がっているけど泣き虫だ。でも昔から涙を見せようとはしない。
それでも陰で泣いているのを知っているから、俺は…
「ほら来たよ、呪いの子…」
「この村に災いを持ってこられちゃ困るよ」
大人達の言葉の意味を理解し始めた頃、この村にはとある親子を標的に噂を流していた事を知った。
じいちゃんの畜舎に来ていた蒼い髪の親子だ。
「また来てるじゃん……」
最初は少し気味が悪かった。
毎日ここに来ては黙ってケガワウシの世話をしているからだ。
あんな汚い糞を文句も言わずに片付けて、片付けが終わると母親の方はどこかへ行くけど、気味の悪いこいつはずっとケガワウシに向かって話しかけている。
「おいおまえ」
俺の声に驚いたのか、ビクッと肩を震わせてその場で動かなくなっていた。
「無視すんな、おまえだよ」
「……」
「だから、無視すんなって!!」
動かないこの女の肩を強引に引き寄せた時、その瞳を初めて見た。
「……!?///」
怯えるその瞳に頬を赤くしている自分の姿が写っていた。
まるで蒼い鏡のような透き通った瞳…子どもながら、なんて綺麗なんだろうと思った。
「ご、ごめんなさい…」
「い、いや…えっと…俺、イリアン!おまえは?」
「え?」
「名前だよ!なーまーえ!」
「わ、私…フェリス…」
「フェリス…」
初めて彼女の事を知ることができて、少し嬉しい気持ちがあった。
「あの……」
黙ったままの俺を見ていて不安になっていた。
「き、綺麗な目だな!///」
「え…?///」
「じ、じゃあな!///」
それだけ言うと、恥ずかしくなって思わずその場から逃げ出してしまった。
その日から毎日来るフェリスと少しずつだが会話をするようになり、彼女の事をもっと知ることができた。
好きな食べ物や嫌いな食べ物…
別に何でも良かった。
ただ話してるのがいつしか楽しくなっていたから。
それでも、気になっていた事がある。
今も目の前でそうしているが、思いきって聞いてみよう。
「フェリス、なんでいつも獣に向かって話しかけているんだよ」
「え?」
「何言ってるかわかるのか?」
「ううん、わかんない」
「はぁ?」
「ただ、私から一方的に話しかけてるだけだよ」
「楽しいかそれ?」
「楽しいっていうか…ただ知りたいだけかな」
「やっぱわかんねぇな…」
理解は出来ないが、話しかけるフェリスはとても楽しそうだった。
それなら、まぁいいか。




