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北木の苦悩

営業支援部に総務部長の北木がやってきた。


「おい、ヒロカズ、このあとちょっといいか?」

神妙な顔でなんだ、なんだ?


「どうした?」

「ちょっと場所かえないか?」

北木は二人きりの場所で話がしたいようだ。


「よーし!今日は雪が降ってるし、帰れる奴は、さっさと帰れ~!定時退社!定時退社!オレも今日は帰るからな!」


部下たちにそう宣言してオレたちはとりあえず会社を出る。


そとはしんしんと雪が降り続いている。

「年末に雪が積もるなんて、今までにないくらい珍しいな」

吐く息もまっ白になる。

「ああ。」

それでも北木は上の空のようだ。

…まさか仕事を辞めるとか?

北木も派閥争いに巻き込まれたか。

おおかた羽柴上海支社長あたりの差し金か。

それとも丹羽や柴田がまた介入してきたのか。


どちらにしても深刻な悩みなのだろう。

顔に生気が感じられない。



いつもの居酒屋藤太郎へと入り、カウンターではなく、後ろのテーブル席へと腰かける。

生ビールに口をつけながら北木に尋ねる。

「どうした。いったい、何があった」

気もそぞろ。浮かない顔をしている北木は、いつも気丈な総務部長らしくない。


「そのな、マジで悩んでるから、まじめに考えてくれよ」

「あ、ああ。もちろん」


「あのな…」


ごくり。


「女の子をクリスマスイブに連れてったら喜ぶ場所はどこだろう!?」

「へ?」

「プレゼントは何をあげたらいいの!?」


「仕事の話じゃないんかーい!!」

「仕事の話なんていってねーだろ。さ、教えてくれよヒロカズ!親友だろ!」


「‥シゲ、聞く相手間違えてねーか?」

オレにわかるわけねーだろ!(;´д`)


彼女がようやくできたとはいえ、自ら能動的に動いた訳じゃないし。未だに自分のイブの計画すらたっていないのに。


「‥確かに。冷静に考えたら相談するだけムダな相手だったような気がしてきた」

冷静に傷つくけどな!


「それこそ、サトミとかに聞きゃいいんじゃね?」

サトミとはオレ達の後輩の浦野聡美のことだ。


「アホ!聞けるわけねーだろ!」

「へ?なんで?」

「お前なー!どこまで他人(ひと)のこと見てないんだよ!」


男に興味なんかあるか


「オレが誘いたいのはサトミちゃんだよ!」


へ?

「お前、まさか!今さらサトミに惚れたのか!」

「今さらで悪いか!」

オレたち同期がサトミと知り合ってかれこれ10年。いつもともに連れだってきた仲間だ。


「もういい。お前に聞いたオレがバカだったよ」

今さら気づいたのかよ。

「ああ、バカとしか言いようがないな。で、どうするんだ?」


「二海さんを呼んでくれ」

え?

「自分が役に立たないなら、自らの彼女を呼ぶ、それが男の責任ってもんだろう!」

意味わからん。その無茶な理屈。

しかし、オレより由樹のほうが役に立つことは、火を見るより明らかだ。

「…わかった。おおかたまだ会社のあたりにいるだろう、奢るなら呼んでみるよ」

「もちろんだ!」


「…男に二言はないな?」


「なに言ってんだ!」








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