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師走の空には雪が舞う

この回での時間軸は


12月9日(土)~12月11日(月)


です。



みのりさんはじめ、由樹の家族との面会は、さんざん待たされたうえ、からみ酒を受けた末に、食事をごちそうになり、新規顧客の獲得という、よくわからない展開で終わった。


「一体なんだったんだろう…。君のお母さんは、最初は会いたくないから、結婚を認めたくないから、奥からでてこないのだと思ってた。

けど…」

一連の展開についていけてないオレは、帰りの電車内で、オレは由樹に訊ねた。


「私は、和弘さんの心づかいが母をうごかしたのだと思います」

オレが心づかい?

「母は和弘さんがいらしてから『このまま娘にも先を越される』『女としては終わるのかな』と拗ねてたんです。」

知らなかった。


たしかに、みのりさんはオレとそう年も変わらない。女ざかりだしね。

どうりで姿を現してくれなかったわけね…。


「なんで気が変わったの?」

ガタタン、ガタタンと電車は体を軋ませリズミカルに音を刻む

。

「和弘さんのお土産ですよ」

え?そうなの?

「有名店で並ばないと買えないお店で季節の旬の果物をあしらったケーキを買ってきてくれました。そして、グリーンローズの花言葉は『あなたは希望を持ち得る』です。


とても素敵なグリーンローズのプリザーブドフラワーは、若々しい美しさが長持ちしますよね。何歳になっても希望を失わない行き方を母は見いだしてくれたのかもしれません」


「そんでもって、いきなり出てきて酒を注がれたのか~」

そして、結婚をしないのかって言ったり、まだ早すぎるって言ったり、忙しいなあ。


「母なりの照れ隠しなんですよ、なんか子どもみたい。すみません」

いやいや、由樹が謝ることじゃないし、なんか可愛いお義母さんじゃないか。


オレだったら娘が自分と同じくらいの歳の男をつれてくれば、問答無用でぶんなぐってるさ。んでもってぎったんぎったんにして、ドラム缶につめてコンクリート流し込んで…あ、いかんいかん!あやうく妄想で犯罪者になるとこだった。


そう考えると、感情が揺れ動きながらもオレとちゃんとコミュニケーションとろうとしたみのりさんはすごいと思うな。



ガタンガタタンと電車は走る。


車窓からは星は見えない。雲が月すらも覆い隠している。


ふと車窓に白い綿ぼこりのようなものがちらついていることに気づいた。


「おっ、雪?もうそんな季節かあ…」

「今年の雪は早いらしいですしね」


「もうじき、クリスマスだな」

「はじめてのふたりでのクリスマスです」

由樹はちょっとはにかんだように言う。


「今年はイブが日曜日だ。土日と泊まりがけでどっかいこうか」

「え、いいんですか?!」


「ああ。もちろん。その代わり明日は仕事。

山内工業の社長と、ニカイフードの専務とゴルフだわ。せっかくの日曜日なのにごめんね」


「い、いいえ!私のことはお気になさらず!」

といいつつも少し寂しそうだ。



≪間もなく丸早~。まるはやです~。降り口は左側1番乗り場に到着します≫

車内のアナウンスが流れる。

オレの降りる駅だ。


「じゃあ、また、明日。気をつけて帰るんだよ」


由樹は服をぎゅっと握ったまま離さない。


「…私も降りたいです… 私、和弘さんと一緒にいたい」


「明日は早いんだよ。ごめん。今日は帰りな」

「でも…」


「ごめん…今日は帰りな」



≪丸早~、まるはやです。≫


電車は駅に停車し、オレは由樹への後ろ髪を断つように電車を降りた。

「…明日、済んだら連絡するから、そしたら夕飯を一緒に食べよう」

そう告げるのを待ち構えたように電車の扉は閉まり、笛の音を合図に動き出した。

みのりさんの期待に対してこたえる、という訳ではないが、オレたちはまじめにつきあっているわけで。

結婚するまで、ダラダラとした馴れ合いの半同棲じゃなくって、けじめをつけた生活しなきゃ。と改めて思ったのだった。



…

…

…

月曜日のオフィスは年末の仕事納めと冬休みにむけて忙しさを極めている。

年末締め決算の企業も多く、オフィスにはカウンターに小さな雪だるまの飾りが飾られているのが唯一の季節感だ。


「う~さむさむさむ!冬だねえ。雪まで降ってきたよ」

外回りから瀬尾が帰ってきた。あいわらずわかりきった一人言を大声でしゃべってる。

「まじで社用車のラジオもクリスマスソング、街中赤と緑色だらけ。まじでこの師走の忙しいときにイブなんて、みーんな爆発しろっつうの!」

でたテロ予告。



「ほら係長、わかってくれますよね!どうすか、オレとクリスマスイブをご一緒に!」

「瀬尾くん、煩いよ。…仕事しな」

でた、浦野聡美の冷たい目線攻撃。


「じゃ、じゃあさ、由樹ちゃんどう??オレと大人のイブを過ごしてみない?」

あ、こいつ、そういや知らなかったんだ。

じゃあ、ってなんだよ!じゃあ、ってさ!


フロアのみんながオレに目線を送る。いやいや、そんな目でみるなや。

「あ、す、すみません。私、予定があります!」

「えー!由樹ちゃんまでフラれた!」

までとはなんだ、までとは!

第一、ふつー本気で誘うなら二人きりのときに誘うやろ。みんなの前で誘うなや。


「…部長、顔怖いっすよ…」

近堂がオレに書類を運んできて、耳うちした。知らない間に部下に殺意を抱いてしまっていたよ!

よかったな瀬尾。後輩に命救われたんだぜ。


「あ~オレのイブはどうなっちゃうの~」

知らねえよ。

爆発するんじゃなかったのかよ。

オレの殺意をしらず相変わらずベラベラと喋り続けている。


≪キーンコーン カーンコーン≫

学校のチャイムのような、終業時間を知らせる音が鳴る。


ガチャッ

ふと部屋の入り口のドアが開く。

「おい、ヒロカズ」

北木総務部長のおでましだ。

「このあとちょっといいか?」

神妙な顔で、何事かあったのだろうか。


「よーし!今日は雪が降ってるし、帰れる奴は、さっさと帰れ~!定時退社!定時退社!」

オレは部局全体を見回して言う。


「「はーい」」


と一同から返事がおこり、みんないそいそと退社の準備をはじめる。


「瀬尾、お前はちゃんと今日の仕事まとめてから帰れよ!」

「うげっ」

真っ先に帰ろうとした瀬尾に釘をさした。



窓の外は、だんだん粒の大きな雪がしんしんと降り始めてきた。こりゃほんとにつもるかもなあ。





いつもお読みくださり、ありがとうございます。

もうすぐ年越しなのに、更新をサボっていたので、クリスマスまでも時代が追い付いていません。( ノД`)…

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