二海由樹―母は手強いよ
長い間ご無沙汰し申し訳ありませんでした。
もしお読みくだされば幸甚です。
二海由樹の視点ではじまります。
「え?まさかの図星!?アンタ、ロリコンオヤジの愛人になってるの!?」
「あ、愛人じゃないもん!!」
ロリコンは否定できないけど…!
「じゃあ、相手は独身なの?」
「そうだよ!」
「どんな人なの?」
「お名前は蒲生和弘さん。職場の上司。部長さん。38歳。カッコよくて、とっても優しい…「ちょっと待って!」」
「38って!私と3歳しか違わないじゃん!そのトシまで独身な男って、性格曲がってるか、女癖悪いか、ハゲなのか、よっぽどの不細工か、どれかよ!」
お母さんはいきなり独断と偏見に基づいたアラフォー独身論をぶちかました。
「そんなことないもん!性格曲がってもないし、女癖悪くもないし、不細工でもないよ!とっても優しいの!」
ハゲ…っていうほど、薄くないし!
「で、あんたたち付き合ってるの?」
「う、うん」
「いつから?」
「先月から」
「わかったわ。連れてらっしゃい!」
「え?」
「お母さんが見極めたげる!そのつもりで、電話したんじゃないの?」
…違うって、言ったらすねるし、会わせたくないって言ったら、理由があるんでしょ!って、またロリコンだの変態だのと騒いで拗れるだろうなあ。
「…う、うん。いつ?」
「明日」
「明日は…急だなあ…」
「善は急げよ!!お母さんが夕飯つくっといてあげるから!食べに来なさい!」
「わかった!聞いてみるね」
私は母の電話を切った。
昔から強引なとこ、あるんだよなあ。困ったなあ。
めっちゃ張り切ってるよ。どうしよう。
「お、お母さん、どうだった?」
お風呂あがり、頭をごしごしと拭きながら和弘さんが聞いてきた。顔の表情が固い。ひきつってる。どうやら緊張しているよう。
「連れてきなさいって……あした…」
「へ?」
「明日、連れてきなさいって言われました…」
言われちゃいました!
「えええー!!!!」
「すみません!」
「い、いや、善は急げだよ。こっちが望んだことだし。ちょっと、急ぎすぎな気もするけどね、ははは」
「明日の夕方なのですが、予定とか大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。予定は…ね」
こうして私は、お母さんに“お母さんと”3才差のカレシを紹介することになった。
その日は仲良くイチャイチャ過ごす予定だったけど、急遽予定を変更し、私たちは母の性格、家庭の歴史、母の攻略と妹達の調略のため傾向と対策を二人で反復しながら予習をしたのだった。
さながら、試験前に一夜漬けをする学生のようだなあ。
うううっ、大丈夫かなあ…。




