流れ星!見ませんか!
「「今日はお疲れ様!!」」
長い一日が終わろうとしている。
オレは
「じゃ、また、来週な、みんなオヤスミ~!」
と手を振り、みんなと別れる。
おおう、早くしないと電車がなくなるぜ。田舎をなめんなよ。
11時台の電車は2本。日付かわったら、5分で終電がでちゃうんだよ。
う~さむっ。
オレはコートの襟をたてて、身をすくめる。
ドン!と右肩に誰かがあたってきた。
「あ、」とオレが声をあげると同時に、
「が‥和弘さん!」
二海由樹がオレの右腕に抱きついてきた。
「二海さん?どうしたの?」
なんだ、どうした、若い女性に腕に抱きつかれた経験なんて今までにないぞ。
今はクールでツンデレになっちゃった妹が小学校低学年の頃にじゃれて腕にまきついてきた経験はあったけど…。これは「この人痴漢です!」とか「この人ひったくりです!」とか「アンタの顔が猥褻物よ!」なんて言われて捕まえられる場合なんかも想定できる…
って、いかんいかん余りにも唐突な初体験が襲ってきて思考が明後日の方向にぶっとんでた。二海がそんな女性ではないことくらい、オレにもわかるさ。
彼女は黙ったまま、オレの腕に巻きついたままだ。
「二海さん、どうしたの?」
もう一度尋ねてみる。
「い、いえ、その…がも‥じゃなかった、和弘さん、今日はなんの日か知ってますか?」
「い、いいや?」
さっきからファーストネームで呼ばれているのが気になってそれどころではないよ。由樹ちゃんよ
「今日はおうし座流星群が流れる日なんです。ほら、あのオリオン座の右ななめ上あたりに」
「そ、そうなの?」
そんなこと言うために?
「あの!」
彼女はまだオレの右腕につよく巻きついて、いっこうに離す気配もない。
「以前、そのまた…和弘さんの、お家におじゃましてもいい、っておっしゃってましたよね?」
「あ、ああ。」
話の展開についていけていないぞ、なんだ、なんだ。
「流れ星!ひとりで見るよりふたりで見たほうが楽しいですよね?」
「ん?うん…まあそうかな」
「私と一緒に…流れ星!見ていただけませんか!?」
決意を述べるように大きな声で、ちょ、声でかいし!顔真っ赤だよ!?
「その、二海さんがうちに来て、一緒にふたご座流星群?「おうし座です」ごめん、その、流れ星をみる?ってこと?」
「はい、ダメですか?」
いや、ダメとかじゃなくて、なにその強引な流れ!
えーと、
「酔ってる?」
「酔ってる…けど、酔ってません!」
どっちだよ!…と心の中でツッコミを入れるが、さきほどからの二海由樹のまっすぐに見つめる瞳を見ながら言うだけの甲斐性はない。
ふう、
と大きなため息が出た。
「…わかったよ。うちの家で飲みなおそうか。その代わり、片付けをするから玄関でちょっと待ってもらうよ!」
「はい!!ありがとうございます!」
満面の笑みで返事を返される。
こんな笑顔を返されたら、世の中の独り身のオトコたちは九分九厘コロッと落とされちゃうよ。
あれ?オレも落とされた?
オレたちは終電2本前の電車にのって、二駅の我が家へと急ぐのだった。
あ、ビールはあるけど、ツマミがないや。まあ駅前にある唯一のコンビニで買えばいいか。
ちなみに電車に乗った後もオレの右腕は解放されることはないのであった‥。
文中の日付は11月10日(金)です。
おうし座流星群が見れるのは今日、12日です。
勘違いしてませんし、曜日もズレてません!わかって書いてますので、気になさらないでください。(^_^;)




